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真夜中に呟く夢の貝殻

途方もなくなく夜に溶けてゆく
波の音が何処からかする山に棲む私
祭り太鼓の音までする山に棲む私
「夏はまだか夏はまだか」
歳を取った私の最後の言葉
不意に切なくなるから恋は嫌なんです
郷愁はポケットから堕ちた寂びたナイフ
旅人は冬の風をコートに隠して
そっとアイスキャンデーを其処に突っ込んだ
隣の家の塀に置かれた林檎には
地獄行きと書いてありました
原罪でしょうか
お葬式のあった家の前は息を止めて歩く習わし
死んだ人が取り憑くからね
友達同士でそうやって秘密の約束を交わした夏
何故か鳥居や灯篭が家の庭にある家
大体塀で囲まれていて上の部分しか見えないのだけれど
気になって仕方ないので首を伸ばして庭を覗き込むと
線香の香りがぷんと鼻をよぎった

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