夜叉葉君彦の診療録①-3
喜条が目を覚ますと、夜叉葉が寝ていた布団はもぬけの殻だった。
井戸の場所も教えていないのに、どこへ行ったのだろう。喜条は不思議に思い寝室を出た。
台所では、ユリ子が家事をしている。
「おはようございます、あなた」
「あぁ、夜叉葉先生はどこへ」
外では、かこーんかこーんと音が鳴っている。薪割りの音だ。
「先生、朝から薪を割ってくださってるんですよ」
「なんだってぇ、今から大仕事だっていうのに」
「ゆっくりなさってと申し上げたんですけど、お聞きにならないんですよ」
喜条は、