相撲ラブ

荒見山の分厚い胸を借りながら、ふと俺は考えていた。もし俺が筆頭の位置から小結、関脇、大関、ましてや横綱になった時。俺より8も年上の荒見山はきっと幕下へ落ちているだろう。

荒見山と目が合う。俺は右下手を探ろうと手を伸ばしたが、荒見山が手首を掴んで止めた。(相変わらず悪戯好きだな)そう目が語りかけてくる。(悪い力士には可愛がりをしないと…)俺は荒見山の四つ相撲に巻き込まれる。

あぁ、俺は突き押しの方が好きなのに、荒見山は知っていて四つ相撲をいつもねだってくる。俺はその度に流されるように受け入れている。乱暴に扱うように見せて、肝心な所ではかばい手を出す優しい取り口にやられてしまった。

「あっ…」

思わず声が漏れる。荒見山の両上手。俺の上体が起こされて、じり、と俵までゆっくり押し込まれる。こういう時、荒見山はいつもことさらゆっくりと、がぶるのだ。まるで楽しむように。敗着しているのに土俵の上に立ち荒見山を全身で感じるこの時間が、好きだった。

土俵際、少し粘って崩れる。案の定二人で倒れ込むと、荒見山はかばい手を出した。「大丈夫か?」と聞かれ、俺は少しだけ笑った。

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