ジャズ相撲

ボブの山の鮮烈な立合は正にアーシーだ。張り手で浮かした体に潜り込むように左下手、右手でサックスを保持しセッションを開始した。

私は張り手もさることながらその高く安定した吹き出しに狼狽えてしまった。(出遅れたっ!)そう思ったときには遅すぎる。

土俵際、私のドラムセットは単調でまるきりメトロノームのように4ビートを打っている。行事は机にこぼれたケチャップを見るような目で私を見ていた。仮にもジャズ之内の関取が見せるセッションではない。(ああ、このまま土俵を割ってセッションを終わらせたい…)弱気が私を襲う。

「ドゥビドゥバ!」

その時、土俵の外からはっきりとソウルを感じるスキャットが私の耳に届いた。その瞬間、私の手首は4ビートをスウィングさせ、体は土俵際で美しく1回転した。

「ソウル海~~」

行事が私の名を呼ぶまで、心はスウィングの向こうにあった。

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