オタクは3次元に恋をしてもいいのか

※2019年11月27日のブログ記事より。

「最近3次元にもハマってるんだよね……」

オタク友達からよく聞くセリフである。
罪悪感のある顔で、 まるで言い訳をするかのように、おそるおそる切り出される。

全然悪いことではない。
そもそもオタクというのは、「誰か/何かを好きになる」ことに長けている人種なのだ。3次元を好きになっても、何らおかしいことはない。

ただ一言だけ申したい。
君たちは結構、個性的だ。

~3次元に恋する女たち~

2.5次元ミュージカルの女

とりあえずオーソドックスなところから始めよう。2.5次元ミュージカルにハマっているオタクだ。私の友人でも何人かいる。
というか、何人もいる。
だいたいみんな1回は通る。

「2.5次元」という言い回しは無敵だ。
四捨五入をすると「3次元」になる。グッと3次元感が増す。
例えば相対的に声優などは「2.3次元」くらいな印象になり、何故か負けた感じになる。

好きな作品の2.5次元ミュージカルを見に行って、好きなミュージカル俳優ができて、そこから他の作品の舞台も観に行くようになり……と、絵に書いたように沼にハマっていくケースが多い。高い競争率を勝ち抜いて手に入れたチケットの枚数で、その後の沼の深さが決まるようだ。

(マジの)ミュージカルの女

2.5次元を飛び越えて、劇団四季や、はたまた海外の本場のミュージカルが好きになってしまった友人がいる。
元々まったく英語が喋れなかったのに、突然ワーホリに行ったりして英語を勉強し始め、最近はミュージカル情報を英語のSNSで集めているという。
今年は遂に、ニューヨークに1週間の旅行に行ってきていた。
愛の力は偉大だ。

ただあまりにもミュージカルにハマりすぎて、マッチングアプリでミュージカル俳優を探しまくり、そうこうしているうちにミュージカル俳優を“目指していた”という人にまで辿り着いて、数回デートに行った感想が「見るだけで良かった」だった。何ヵ所かツッコミどころがあるが、とりあえず大切なことには気付けたようで良かった。
例え3次元が好きになっても、リアルな恋が得意になったわけではないのである。

海外ドラマの女

同じく海外つながりでいくと、海外ドラマにハマっている友人もいる。
彼女も、本人出演のイベントに参加するために渡米した。もちろん飛行機代とホテル代だけで数十万円かかっているのだが、いろいろな言い訳をしながら「旅費は実質無料」と言っていた。
楽しそうで何よりだが、時々口座の残高を確認することだけは勧めておいた。

戦隊モノの女

戦隊モノを好きになった友人も少なくない。
特に、神谷浩史が出演するなどしてオタク界でも話題になっていたキュウレンジャー以降、大勢が吸い込まれていっているように思う。

戦隊モノのいいところは、イケメンとハイタッチができることらしい。しかも子供も参加するイベントだからか、チケット代も3,000円などとお求め易いお値段だという。渡米と比較すると、お財布への優しさが心に染みる。
もちろん周囲は家族連ればかりだが、「私だって心は園児」という名言を言い放っていた。

宝塚の女

※腐要素が含まれるため、ご注意ください。

最も個性的なのが宝塚にお熱なオタクである。
彼女は元々生粋の腐女子だった。もう腐女子はやめたのかと思って詳細を尋ねてみると、宝塚の男役と男役で妄想をしているらしい。「結構メジャー」だと話していた。

ちなみに私がお笑いにハマり始めたときに、「知らないんですか!?お笑いコンビ間のBL妄想は結構メジャーですよ」と新しい世界へ導いてくれたのも彼女だった。
彼女は大学の後輩だが、私は彼女のことを心の中で“先輩”と呼んでいる。

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結論から言うと、オタクだって3次元に恋をしていい。
というか、たぶん恋せずにはいられない。
だって、オタクなんだから。
君たちは、 「誰か/何かを好きになる」スペシャリストなのだ。
恋することからは永遠に逃れられない。

ただし、愛すべき君たちに3つだけ伝えておきたいことがある。

①例え3次元に恋をしても、リアルな恋が得意になったわけではない

3次元に恋した瞬間に「人生を1歩進んだ」と感じてしまうかもしれないが、好きになる対象が2次元から3次元に切り替わっただけであり、一方的に恋している状態には変わらないので、相手の感情を読み取ったり巧みに操ったりするようなリアルな恋ができるようになったわけではない。

②例え3次元に恋をしても、課金は課金である

例えソシャゲから足を洗ってJPEGに課金をしなくなったとしても、課金対象が2次元から3次元に切り替わっただけであり、好きなもののために身を削って課金をしている時点で課金は課金であり、というか「実質無料」という言葉を使っている時点で、君のそれは課金である。

③例え3次元に恋をしても、一般人になれたわけではない

例えリアルイベントに参加して、家族連れとかキラキラした女の子とかに囲まれて大衆向け文化の中に馴染んでいるつもりでも、君のファッションや言語からはそこはかとなく周囲と異なるオーラが放たれているし、実は「キャーッ」って声を上げるタイミングにも周囲とは絶妙なズレがある。

そもそもさ、「最近3次元にもハマってるんだよね……」ってさ。
「声優好きのあなたを置いていっちゃってごめんね、私は先に行くわ」みたいな感じ出しちゃってさ。
声優だって3次元だからね!立体的だからね!確かに、どことなく「2.3次元」くらいなイメージがあるし、四捨五入すると2次元になってしまいそうな感じもするけど、でも違うからね!3次元だからね!しかも私だって最近芸人という歴とした3次元文化も学び始めたんだからね!ちくしょう!

たぶん私も、個性的なオタクだと周りからは思われているんだろうな~。
そんなことを考えながら、 今日も無邪気にオタク活動に勤しむ。


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