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しーちゃんとまっくろくろすけ



トトロに出てくるまっくろくろすけのマスコットがあーちゃんの家にあります。
いつもはお人形遊びをするしーちゃんが、今日は、おもちゃ箱の隅にあるまっくろくろすけを取り出しました。
しーちゃんはまっくろくろすけを両手いっぱいに持ち、あーちゃんの目の前に投げてから逃げて行きました。ずいぶん前に、あーちゃんとまっくろくろすけで遊んだのを思い出したようです。

あーちゃんは、まっくろくろすけの半分をエプロンの両ポケットに入れ、半分を背中のクッションの下に隠しました。

「しーちゃん、まっくろくろすけがいなくなったよ」

あーちゃんがそう言うと、しーちゃんはパッと顔をほころばせて近づいてきました。

まっくろくろすけ、どこにいっちゃったの?」

「さっきまでここにいたのにね・・・どこにいったのかしら?しーちゃん、いっしょに見つけてくれない?」

「いいよ」
しーちゃんは嬉しそうに言いました。

「そんなに遠くには行っていないと思うんだけど。もしかしたら、ポケットの中とかにいるかも・・?」

しーちゃんは、あーちゃんのエプロンの左ポケット中に手を突っ込みました。

「あっ、いたよ!」

そして、右ポケットにも手を突っ込むと「またいたよ」と嬉しそうに言いました。

見つけたのが半分ほどだったので、しーちゃんは、残りのまっくろくろすけがかくれそうなところを探しました。

「いないなぁ・・・。まっくろくろすけでておいで~!でてこないと、めだまをほじくるぞ~!」と言いながら、しーちゃんが範囲を広げながら探しています。
なかなか見つけられないだろうと思ったあーちゃんは「なんだか、お尻の方がムズムズするなぁ」とヒントを言いました。

すると、しーちゃんは直ぐにやってきて、座っているあーちゃんのお尻あたりに手を入れてみました。

「あっ、いた!いた!やったー!ぜんぶみつけた!」

「見つかって良かったわね、しーちゃん」

あーちゃんは、まっくろくろすけをエプロンのポケットに入れました。
でも、実際に入れたのは、ひとつだけで、しーちゃんには全部を入れたと見せかけ、気づかれないように、またもやまっくろくろすけをあちこちに隠しました。

「あら?しーちゃん、大変!今ポケットにしまったはずのまっくろくろすけがいないよ!また逃げ出したみたい!」

「ええー‼」

噓でしょ!と言わんばかりの顔をしたしーちゃんは、あーちゃんのところに来るなりエプロンのポケットに手を突っ込みました。
そして、おや?という顔をしました。

しーちゃんは、見つけたまっくろくろすけを手のひらに乗せて
「あーちゃん、ひとつだけあったよ」と言いました。

「あらあら、おいていかれちゃったみたいね」

「そっか。きみはおいていかれちゃったのか・・・」
しーちゃんは、おいてきぼりにされた、そのまっくろくろすけに同情したのか、人差し指で頭を撫でてあげました。

「しーちゃん、かくれたみんなを探さなくちゃね!」

「うん!あーちゃんもいっしょにさがそーよ」

「よし、さがそー、さがそー」

こうして暫くは、あーちゃんがまっくろくろすけをいろいろな場所に隠し、しーちゃんが見つけるということを何度か繰り返しました。

暫くすると、しーちゃんが言い出しました。

「今度はしーちゃんのポケットに入れるね!」

「ん?・・・」

しーちゃんがまっくろくろすけをズボンのポケットに入れて座り、時々ポケットをポンポンと叩いて、まっくろくろすけがいるのを確認しながら逃げるのを待っています。

「まだいるかな?」ポンポン。

「いなくなったかな?」ポンポン。


しーちゃん、まっくろくろすけはひとりでに動かないよー!

「どうしよう・・・」

あーちゃんは困りました。
しーちゃんは、ほんとうにまっくろくろすけが移動すると思っているのです。
なんとピュアな4歳児のでしょう!
このピュアな気持ちは絶対に守らなければならないと思ったあーちゃんは、確認すると見せかけてまっくろくろすけを取り出すことにしました。

「しーちゃん、まっくろくろすけはまだいるかな?」と言いながら確認するふりをして、しーちゃんのズボンのポケットに手を入れ、2~3個ずつ3回に分けて取り出しました。これくらいなら、しーちゃんがポケットをポンポンと叩いてもまっくろくろすけは確認できます。
3回目には「しーちゃん、大変!まっくろくろすけがいなくなっているよ!」とあーちゃんは大げさに演技して見せました。

「ほんとだ‼いなくなってる‼」

なんとかごまかせたものの、もう一回やるといった時には、さすがに「まっくろくろすけは疲れたから眠いらしいよ。休ませてあげようね」とあーちゃんは言いました。

瓶の中で休んだまっくろくろすけは、翌日の朝、またいなくなっていました。












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