映画レビュー EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE

こんにちは。
こちら、note、初めての記事です。
物心ついた頃からずーっと映画が好きです。

見終わった後のじんわりとした感動が心を満たす感じ。「じんわりとした」、では弱いかも? 頭をなぐられたようなぐわんぐわんと全身にめぐる高揚感。「あー、この作品を世に送り出してくれた人に感謝!」という気持ちでエンドクレジットを迎える時。

時には映画が表す示唆に感激する。時には多幸感に満ち溢れる。時には消化不良で自分が感じたことを他の人と答え合わせしたい!と思う。どんなときでも見終わった後の興奮を忘れ去ってしまうのは勿体無い、あの一瞬を大切にしたい!という思いが高じてこのブログを始めました。
今日はそんな思いのきっかけとなった作品、「エブリシング・エブリウェア・オールアットワンス」について。

不幸なゆえに攻撃的であることについて


潰れかけのコインランドリーを経営するエヴリンはとにかく人生にイラついている。冴えない夫、家父長的な父、ゲイの娘の家族を持つが、その誰とも心を通わせられず、一方で国税局の監査対応に追われており、楽しい出来事が一切ない日常が冒頭で描かれる。客観的にみている私たちには、常に口角が下がり目が吊り上がっている、とにかく攻撃的な女性に見える(特に夫に対して厳しい泣)。物語が進んでいくにつれ、彼女は父親から認められず自分に自信を持てていないことがわかってくる。
そんな女性が、なぜか!マルチバースで世界を救う戦いに巻き込まれ…!?
1人のおばたん(失礼)が世界を救う過程で、自分自身のあらゆる可能性を知って自己肯定感を得る→他者への愛、と、愛情の輪が広がっていくストーリーが超感動的。ラストスパートにかけて怒涛の感動ラッシュで涙無しでは見れず…。すっっごいデトックス映画でしたね。


アメコミ以外でマルチバースが使いこなせる訳がないと思ってた

マルチバースといえばmarvelに代表されるアメコミ映画のイメージがあります。過去の出来事がないことになっていたり、過去のキャラクターがリバイバル出演したり、正になんでも可能にしちゃう、すごい可能性が広がる設定ですよね。マルチバースのおかげでアメコミ映画は今の大人気地位を得ているのだと思っています。
ただ、一方このマルチバース、行きすぎるとご都合主義的に使われたり、一部のマニアしか全貌が把握できない(特にマーベルはディズニープラス加入者しか見れないドラマなども全て見ないと新作についていけないことになってる)複雑性を帯びてしまう、など、アメコミファンを置いてけぼりにする設定だとも思います。

話を戻して、この映画に関して言えば、根底にあるメッセージがしっかりしている。良い意味でマルチバースがコスメティック設定に徹しています。その結果非常に騒がしくサイケデリックで奇想天外な物語となっている訳ですが、アメコミ映画で使われているマルチバースとは違った使われ方であり、そしてなんにでもなりえるすごい設定のマルチバースを2時間でうまくまとめたことに、驚嘆しました。

キャラクター推しではなくて、映画推しなわたしにとっては、アメコミマルチバースよりこちらのマルチバースの方がワクワクドキドキしたのです。

「奇をてらう」と「挑戦的であること」は紙一重

外から見た評判(映画賞を総なめしていること、レビューサイトの評価が賛否分かれていること)と、自分の目で観た感想として思うのは、この映画は間違いなく「面白い」ということ(ファニーではなくinterestingの意味で)。
サイケデリックなSFストーリー、ギャグもかなり下品方向に攻めてる感じ(ちょっと目を覆いたくなるようなギャグもあったな)… まぁ万人受けではないでしょう。とにかく派手な演出の裏側にはシンプルでとても優しい愛に溢れるメッセージが隠されており、「2001年宇宙の旅」や「花様年華」のオマージュなどFun要素も散りばめられてる。
良い映画の方程式から外れるかもしれないけど、これはこれで新しい風を感じる作品だと思う。

そしてメインキャストがほぼアジア系の作品がアカデミー賞作品賞をとったことはとても大きな意味を持つことだと思う。ポリコレ忖度だと思う風潮もあるけど、ポリコレ上等です。私は中国であれ他のアジア圏であれ、元気な作品がこれから脚光を浴びて、フェアな評価がされる映画界がいいなと思う。

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