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嘘にまみれる毎日

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毎日一つ嘘をつきます。誰も傷つけない嘘を。
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2018年10月の記事一覧

【嘘】父の眼鏡

父は毎日寝る前に、眼鏡を新聞紙で包んでいた。
ある日、そのことを聞いてみると「こうやって世の中を見通すんだ」と教えてくれた。

長年使い続けている眼鏡はボロボロだった。
毎晩の知見が詰まってると信じ、新しくする事がなかったからだ。

【嘘】ハイテク

友達に教わったことを確かめる為に、腕時計を外して空に投げた。
時計は空中で針を激しく回転させ、ヘリコプターのように飛んでいってしまった。

友達は「羽ばたいて飛んでいく」って言ってたのになあ。
俺のはハイテクだから。

【嘘】曲面

北海道までやってきた。やっと馬に乗る機会を得た。
その逞しい背中を撫でると、その曲面にデジャブを感じた。この曲面は、俺の毎日の悩みの形だ。

馬に乗る。
悩みに乗る。

馬はとても穏やかだった。

【嘘】爪

足の爪を切る。切った爪がどこかに消えた。後で踏んだら痛いので、一生懸命探すも見つからず。
諦めて眠ると、月の夢を見た。
三日月。

【嘘】本とバス

バス停に本が積んであった。皆はその後ろに並んでいる。

やってきたバスに本が次々と乗りこむ。本だけで席が埋まり、人々は皆、立つことになった。
乗りながら本を読むと酔ってしまうからか、本はぐったりしている。

次は図書館前。ぽーん。次、止まります。

【嘘】熱い

熱いお風呂に潜り、目を閉じ息を止め膝を抱え、限界まで我慢する。
苦しくなったので顔を上げ、お風呂の水面から出そうとするも、出ない。
いつのまにか深く深くへ潜り、そして、気が付いたら汗びっちょりの布団の中だった。

熱はひいた。

【嘘】サダメ

入会した覚えの無い「サダメ会」という組織から強制的に退会させられた。
言い分は「運命に逆らったから」とのこと。俺の未来は、もう誰にもわからないらしい。

でも入会している人の運命から己の未来を算出出来ないだろうか、と試みたところ、再び入会出来た。

そういう運命だった。

【嘘】龍

大きな大きな海流が、数多の生命を巻きこみ、空に飛びだした。
渦を巻き、地球から巨大な角が生えたように見える。

地球から離れ、それは一匹の龍となり、宇宙を泳ぎ始めた。

やがて一つの星にたどり着いた龍は、乾いた星で海となる。

生命は再び、星に輝きを与える事になるだろう。

【嘘】駄菓子大好き

コロコロ。
コロコロ。
口の中で夕日を転がす。
シュワシュワと刺激的な味わい。
喉もスースーする。

最後はジュッと無くなる。

あ、月だ。
美味しそう。

【嘘】スイカ

宇宙で見た星は全部スイカだった。
念願の宇宙飛行士になれたのに、毎日毎日スイカ割り。

明日もまた、割れたスイカの種流星群が見えるよ。

【嘘】遠くへ

ある日窓を開けたら、外から紙飛行機が入ってきた。紙を広げると、一つの文章が書かれていた。

「もっと遠くにいきたい」

その日から、考え始めた。
ロケットって、どうやったら飛ばせるのかな。

【嘘】久しぶりに雨の子に会った

ビニール傘について考えていた。

いつも盗まれたり無くしたりして、いつの間にかどこかにいってしまう。
その後は、どうなっているんだろう。
誰かに使われ、壊れ、捨てられているのだろうか。

「無くした傘は全部、雨雲の中に集まるんだよ。」

雨の子が教えてくれた。

【嘘】音楽の音楽

DNAのヌクレオチド一つ一つに、塩基に対応する音色を決めると、個人個人のメロディーが出来上がる。

人類は皆、殆ど同じ曲。

【嘘】ピンと張って斜め下に

そこに広がる時間をテーブルクロス引きのように一気に引っ張ってください。
置かれた空間は、勢いについてこれず取り残され、その『時』に固定されます。
今は存在しないその空間は過去として残り続けるので、認識として消える事はありません。

これが、『思い出』です。