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なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか? 第3章 その4

芸名はどうやって決めるの?

月丘夢路、淡島千景、新珠三千代、八千草薫、有馬稲子、越路吹雪、鳳蘭、麻美れい、大地真央、黒木瞳、天海祐希、真矢みき、壇れい……。
100年の歴史を誇る宝塚歌劇団では、毎年、音楽学校に約4〜50人の合格者が出るのですからその卒業生は何千人となります。
宝塚にふさわしい華やかな芸名はどのように決めるのでしょうか。

一枚の紙に希望の芸名

「芸名は、自分で考えて自分でつける」
これが答えです。
本科生になり初舞台がぐっと現実的になってきたころに、音楽学校から1枚の紙を受け取ります。
その紙に、第一から第五候補くらいまでの芸名を書いて提出します。
そのころには男役か娘役なのかはほぼ決まっているわけですから、希望に胸を膨らませてワクワクしながら考えるわけです。

私の場合、なぜ桐生になったのか。
これはかなり安易です。
芸名を一生懸命に考えていたころ、テレビでは高校野球の中継をしていました。
その年勝ち進んでいたのが桐生高校。
芸名を考えている私の耳にテレビから「桐生高校ヒットヒット」と聞こえてきました。
ふと、きりゅうって綺麗な響きだなと思いました。
そうだ! 桐生って芸名にしよう。

なんて単純! 母に「ねえ桐の木ってまっすぐに伸びるんだよね?」と確かめたことを思い出します。
「まっすぐに伸びる桐の木をお手本に芸名をつけました」。
なーんて気取ったことをいっていた私ではありますが、実は決めてから理由をつけたというのが正直なところです。
もう時効ですね。
ただ、第一候補に「桐生」とは書きましたが、その下の名前です。
私は、月組のトップスター内重のぼるさんの大ファンでした。
小学校5年生の9月に見た月組公演で、その内重さんの強烈なインパクトでいっぺんにファンになってしまったのです。
それ以来、行く道の到達点は内重さんでした。
私も男役としてデビューするのですから、芸名を決めるときも憧れの内重さんが頭の中を占めていました。
どうしてものぼるしか思いつかず、大スターの芸名をいただいた形になりました。
あとの第二、第三候補の名前は何を書いたのか記憶に残っていません。
燃え尽きた感じでしょうか。
この第一候補の名前が何とか通ってほしい。そう祈っていました。

そうして返却された用紙には「桐生のぼる」が認められたということが書いてあったのです! 
そのときの興奮は今も忘れることはありません。舞台にさっそうと登場し、スポットライトを浴びて一人で階段の真ん中を下りていく自分の姿を想像して、胸が高鳴っていました。
私の場合、桐生という芸名が今までになかったことがすぐに認められた要因でした。

幻の芸名 六甲みどり

実はもう一つ、私には芸名に関するエピソードがあります。
芸名を考えるとき、四柱推命の先生に相談を持ちかけました。
そのときは「こんな感じの名前はよそうね」とか「この字を使ったほうがいいよ」というアドバイスを受けるつもりだったのですが、先生が真剣に考えて、「この名前をつけたらトップスターになれるよ!」とつけてもらった芸名がありました。
『六甲みどり』です。
神戸生まれ神戸育ちの私にちなんだ名前でした。

すごくわかりやすい! 
……しかし……。
そのときは自分のイメージとは随分違う感じがして、せっかく考えてもらった芸名でしたが幻となってしまいました。
トップスターの道がここまで険しいとは思っていなかった当時の私です。
今考えると、一度聞いたら忘れないすんなりと耳に入ってくるこの名前をつけていたら、もしかしたらトップスターになっていたのかもしれません。
先生ごめんなさい。

似通った芸名があった場合はどうするの

プロ野球でも背番号が欠番になっていることがありますが、宝塚の芸名はそれに近いかもしれません。
名前がとても似通っていたりした場合は、直接その先輩にごあいさつをして了承を得ることがあります。
事実「桐生とつけたいのですがよろしいでしょうか?」とお電話をもらった下級生がいます。
もちろん下の名前が違うのですから「構いませんよ、どうぞお使いください」という返事をしました。

そのほか姉妹で劇団に入った場合は同じ名字をつけるとか、母親や親戚が元ジェンヌで名前の一部を受け継ぐ人などいろいろです。
ただ私は退団後は結婚しましたので、再び芸名を使うことは考えたこともありませんでした。
しかし現在のように仕事で再び芸名を使うことになって、やはりもう少し女性らしい名前にしておけばよかったのかもと思うこともあります。

「なぜ、下級生は廊下を直角に歩くのか?」桐生のぼる著書より 

                      つづく・・・・

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