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「それって真実?」人の"見え方"に切り込む「流浪の月」

凪良ゆうさんの「流浪の月」。2020年の本屋大賞を受賞し、映画化もされた名作だ。「小児性愛好者による幼女誘拐事件」の被害者とされる少女の視点で、物語は展開していく。

印象に残ったのは、人の視点への切り込み方。
「事実と真実は違う」
強烈なメッセージに、え?どういうこと??と、ページをめくる手が止まらない。

昔から、わたしの言葉は伝わらない。
思いやりという余計なフィルターを通されて、ただ笑っただけで『無理しているのではないか』、ただうつむいただけで『過去のトラウマがあるのではないか』という取扱注意のシールを貼られる。

「流浪の月」

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この「取扱注意のシール」という表現にグサッときた。何を隠そう、身に覚えがあるからだ。それも大切な大切な親友に。気付かされたのは、今年のお正月、6年ぶりに会って語ったときのこと。

ひと通り近況を報告しあった後、2件目の店で夕飯を食べながら、思い出話しに花を咲かせた。

数々のネタ話を振り返り、順番にクラスメイトをいじめていた小4時の担任の悪行が話題になった。その担任の悪行の中でも私が忘れられず、許せなかったのが、親友が書いた文集の下書きをみんなの前でビリビリに破いたこと。「あれは酷かったよなぁ」と怒りを込めて話すと、親友からは思いがけない言葉が返ってきた。

「〇〇ちゃん(私)は怒ってくれるけど、実はあれなぁ、全然ショックちゃうかってん。むしろ、おもろいことしはるなぁ、この人って感じで」

耳を疑った。
親友によると、「確かにやり方は乱暴やし、破られたことはむかついた。でも、あの下書き、ほんま適当に書いたから、担任の言うことにも一理ある」と思ったらしい。

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人は少なからず、自分の経験や視点という名の物差しで物事を判断する。しかし、その判断が真実とは限らない。都合よく作り上げられた真実もあるのだ。

恋愛感情を超越した男女の結びつき、そこに隠された「当事者のみぞ知る真実」をぜひ確認してほしい。




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