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怪我をするのもいいものだ。

情けなくもバスケの試合に出て数十秒で負傷退場してから、不幸を呪い、励まされ、検査の結果を待つ数日はすごく長く感じられた。

ただ、気づいたことがたくさんあった。それがなによりも楽しいものだった。

身体はすごい

まず、人の身体は、膝をすごく使うことだ。
膝を痛めて、動かしにくくなった結果、全身の動きもかかるストレスも、通常とはまるで違うのだ。こういう風に体重がかかっていたのか。こういう曲がり方で歩いていたのか。階段を登るにはこんな動作が必要なのか。

足を引きずりながら、感動していた。部分がうまくいかないと、全体はうまくいかないと。全体をうまく生かそうと思うと、部分が相互に機能し合わないといけない。
当たり前に思えるこの原理が自分の身体を持って感じられたのが、なんとおもしろいことか!
身体はすごい。


ビールがうまい

心配な日々を過ごし、検査の結果、靭帯には影響はなかった。
ぼくは久しぶりに、社会人になってほとんど初めて、ひとりの食事でビールを頼んだ。

もう、ほんと、くーーー! 最高に美味かった。

ビールはうまい。しみじみと泡の甘さと黄金の苦味を噛み締めた。


普通の日が嬉しい

歩けること、すっとコピーを取りに行ったり、話しかけたり、会議室に移動したり、ランチを買いに行ったり、寄り道してご飯食べたりお酒を飲んだり。気軽に映画を見たり、電車に乗って遠出したり。それができることが、ぼくにとって大切であったと気がついた。
失って初めてその価値に気がつくなんてありきたりな話だけど、その価値は、私のものというか、私が大切に思っているものだったことに気がついたことは大きい。



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