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Six Impossible Things

Joshua Jay がコロナ禍前にニューヨークで240回以上に渡り行ったマジックショーの映像です。

2022年にvanishingincから映像が販売されていましたが、この度スクリプトマヌーヴァから日本語字幕版が販売されました。

ショーの説明ではイマーシブという言葉が使われており、通常のマジックショーよりも没入的な体験ができるように考えられたショーのようです。
なお、1回あたり20人限定、再訪不可の条件付です。
(最近東京にもイマーシブ体験ができる施設がオープンしましたが、興味はありつつも体験できていないので、イマーシブ体験についてはなんとなくのイメージしか持てておりません。)

私は以前vanishingincで買っていて、すでにショーと解説(一部)も見ていたのですが、細部のセリフまで逃すことなく日本語で見れるということでレンタルしてみました。レンタルというのは珍しい気がしますが、ワンコインで2日間見放題なので、気軽に見ることができます。
来月には日本語の解説映像も販売されるようなので、レンタルを検討されている方は来月まで待つのもいいかもしれません。

さて、ショーの感想ということで演目に触れないわけにはいかないので、演目ごとに感想を書いていきますが、ショーをこれから見ようとしている方はここで読むのを止めてショーを見てください。楽しみが半減してしまいますから。

すでに英語版では何度か見ており、大まかには解説も見た上での感想となりますので、初見の感想とは異なるかもしれません。

では、早速演目ごとに簡単に感想を述べていきます。

1.MURDER
こちらからフルパフォーマンスが見ることができます。
現象としてはconfabulationですが、殺人事件という演出と非常にマッチしている演技です。言うまでもなく、観客が感じる不可能度合いは高いと思いますし、何人もの観客を巻き込み、自然に笑いが起きながら演技が進むので、見終わった後に不思議以外の感情も引き出され、本当にいい演技だなと思います。
confabulationは脈絡のない演出の演技もよく見る気がするのですが、現象と演出の組み合わせ方を改めて考えさせられました。

2.ALICE
このショーのタイトルは不思議の国のアリスのセリフの一部からの引用のようですが、この演技ではアリスにちなみ本や紅茶、懐中時計などが使われています。現象としてはブックテストですが、選ばれた単語の開示の仕方が面白く、観客の驚きの声も一段と大きいです。単語を当てた後には物理現象に繋げていて、メンタルマジックの不思議さだけで終わるのではなく、視覚的なイメージも残せるところがいいと思いました。
David CopperfieldやDerren Brownのショーでもメンタルの現象だけで終わらず、物理現象や絵で思い出せるイメージを付加しているのを見たことがありますが、自分がメンタルマジックをする上でもそのあたりのバランスは考えなければいけないところだなと思いました。

3.SOCKS
会場の部屋に吊るされたいくつかの靴下と1人の観客から借りた靴下を袋に集めるところから始まる靴下の一致現象です。
日本では同様の現象を前田知洋さんがTVで演じていたので、見たことがある方も多いかもしれません。この現象を誰がやり始めたのかは分かりませんが、KreskinとPaul Danielsがクレジットされていました。
この演技は靴下が吊るされている会場の絵が思い出される点と観客の期待をいい意味で裏切る現象が起こる点が好きなところです。彼が以前行ったアンリアルというショーでも、観客の期待を裏切るため、言葉の曖昧さが上手く使われています。言葉だけで観客に起こる現象のイメージをさせた上で、その期待をいい意味で裏切るというのは考えてみたいテーマですね。

4.FATE
ここにきて初めてカードマジックです。
現象はフルデックの一致なのですが、重きが置かれているのはセリフを含めた演出だと思います。というよりも演技のほとんどが語りです。彼の両親の出会いの話をしながら、カードの一致現象を起こすことで運命を表現しています。
語りは長いのですが、彼のパーソナルな話ですし、起こる現象ともマッチしているので、実際に見るとそこまで長くは感じないのかもしれません。そして起こる現象はシンプルであるものの、お互いに混ぜたカードが一組まるまる一致するという類を見ないくらいに強力な一致現象ですので、語りの長さを忘れるくらいに驚くことと思います。
裏側の話になりますが、Pit Hartlingの未発表のアイデアが使われています。やっぱりPit Hartlingすごい。

5.EXTRA CREDIT
観客にクレジットカードを借りますが、それがショーの初めに水を注ぎ鍵をして観客に預けていた箱の中に移動します。それも氷漬けとなって。サスペンスが効いていて現象もとても強力です。ショーをやるならこんなサスペンスを作りたいなと思いました。

6.DARK
暗闇の中でコインが観客の手の中から別の観客の元へ移動します。
音によって現象が起こったことが分かるシンプルかつ美しい現象です。移動する先の密閉空間の作り方が面白いです。
実際のショーでは一つ目の演目だったようですが、映像化するにあたり順番が変わっています。体験的なマジックショーを考えるのであれば、視覚以外の感覚にどう訴えるか考えなければいけないですね。

7.T-SHIRT
個人的に好きな現象がいくつも散りばめられた素晴らしい演技です。ショーの映像ではないですが、TVで演じられたこともあるようでyoutubeでも映像が見られます。(が、是非ショーの映像を見てください。)
最近考えている不可能物体系のマジックに通じるところもあり、改めて演技が見られてよかったです。こんなに上手くまとまった演技が作れたらなと思わずにはいられませんでした。

8.FINALE
いくつかのクロースアップの演技とチョップカップの演技で締めくくられます。
ここで演じられるいくつかの現象はこれまでの演技と比べるとやや弱いと感じたのですが、観客の脳も疲れている頃かもしれないので、これくらいが丁度いいのかもしれません。
チョップカップの演技ではこれまでに使った道具が連続して出現し、これまでの演技を思い返せるようになっています。
ここでも彼の(本当かは分かりませんが)子供の頃の話を交えて演技が続き、ほっこりした気分で演技を見ることができました。

ショーの本編はこれで終わりですが、終演後に彼が小さな部屋で一人ひとりに一つずつマジックを見せます。最後に一対一でマジックを見せてもらえることで、ショーを見終わった後に特別なものを見せてもらえた感が長く残りそうでいいなと思いました。

非常に長くなってしまいましたが、ショーの感想でした。
解説も約4時間ということでしっかりとは見れていなかったので、改めて見返したいと思います。解説を見て感じることがあれば追記するかもしれません。

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