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#5 柔道家の挑戦

皆さん、こんにちは。

前回のnote#4 「SNSをやめた方がいい」と言われた話に対する皆さんの温かい反応に、心から感謝します。SNSでの皆さんからのコメント、励まし、意見、そしてシェアを通じて、多くの方々と交流できたことは、私にとって大きな喜びです。皆さんのご支援のおかげで、より多くの読者に私の思いを届けることができました。

前回のnoteは、私の思考の一端を垣間見せるものでした。文章にすることは挑戦的ですが、そのプロセスは自己理解を深める貴重な機会となります。漠然とした考えが明確な形になる過程は、私にとって非常に意義深いものでした。

noteは、私にとって思考を整理し、目的を再確認し、自己理解を深める手段となっています。以前にも述べたように、現役の柔道家としての活動を妨げない範囲で、週に一度の投稿を心がけています。今後とも、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

今回のnoteは、前回の内容の続きをお届けします。前回のエピソードをお読みいただければ、より一層楽しんでいただけるかと思います。まだの方は、ぜひ前回のnoteをご覧ください。最後までお読みいただけますと幸いです。

メリット①

動画撮影を通じて得られるメリットについては前回のnoteでも書きましたが、今回は別の角度から考えてみたいと思います。

柔道の技術において、自分の得意な技ばかりを安易に選択することで、年齢とともに技術の幅が狭まってしまうことがあります。無意識のうちに楽な方へ逃げてしまうこともありますが、それが効率的だと言えるかもしれません。しかし、常に新たな挑戦をし続けない限り、柔道の技術は進化しません。

動画撮影を通じて、私は技術の研究に圧倒的に時間を割くことができるようになりました。自分の柔道を振り返る時間は、技術の理解を深めるための貴重な機会です。撮影するにあたって、中途半端な状態では絶対に皆さんに届けたくありません(「〜に挑戦してみた」シリーズは、またコンセプトが違うため別ですが)。自分の技術を真剣に見つめ直し、再練習して確認し、深掘りして理解を深める。このプロセスを通じて、無意識に行っている技術と意識的に行っている技術の違いに気付き、自分の柔道への理解が一層深まります。

特に、受けのパートナーからのフィードバックは、自分では気づかない無意識の動きを知る貴重な機会となります。例えば、「先輩、普段の練習でこれ、めっちゃ使ってるっすよ」と言われて初めて気づく無意識のテクニックも多くあります。意識して行う技術と無意識に行う技術では、結果に大きな差が出ると感じています。

「自分の柔道を振り返り、理解を深める」ことは、動画撮影を通じて感じる大きなメリットのひとつです。

柔道の技術の幅が狭まる理由


また、柔道の技術の幅が狭まる理由を深掘りすると、以下のような要因があると考えます。

1. 失敗を恐れて得意な技ばかりを選択すること

新たな技術や戦術の習得がおざなりになり、柔道の幅が狭まる原因となります。考えてみてください。柔道を始めたばかりの頃や、自分の柔道の基盤が出来上がる前の頃、もっと多くの技に取り組んでいませんでしたか?僕自身、小学生の頃が一番いろんな技を使っていました。大内刈や払腰、大腰、逆の一本背負投、肩車、背負投、小内刈、袖釣込腰など、挙げればキリがありません。柔道や技が楽しくて仕方なかったのですが、失敗を重ねるうちに、徐々に技の選択肢が狭まりました。何度か失敗しただけで「この技は自分に合っていない」「自分の体格には向いていない」「そもそもセンスがないからできない」などと言い訳をして、逃げてきた結果が今です。

もちろん、長年続けて磨き上げてきた技もありますが、ごく僅かです。その残った技が自分の得意技となり、窮地を何度も救ってくれましたが、その話はまたの機会にします。言い訳を並べてとことん取り組まなかったのは、自分の甘さや、ただの逃げです。

私の場合、中学から高校に上がるタイミングで柔道の幅が広がった部分と狭まった部分、両方ありました。高校時代の話も、需要があれば今度お話ししますね。今、当時の自分に戻れるのであれば、もっと違った選択肢をしているかもしれません。たらればの話なので分かりませんが、運動神経が悪く、不器用でいろんな技ができなかった分、得意技に集中できた側面もあるので、メリット・デメリットは必ず出てきます。

2. 怪我や身体的な制限による技術の制限

怪我や身体的な制限によって、実行可能な技術やかけられる技が限定されることがあります。これにより、柔道のバリエーションが制限されることがあります。私自身、釣り手側の肘や肩、両膝の前十字靭帯や後十字靭帯、外側側副靭帯、そして内側側副靭帯の損傷を経験し、技術の幅が狭くなったと感じました。

大学生の頃までは、喧嘩四つで動きの中で相手の釣り手を切って入る立ち姿勢での背負投も得意としていましたが、怪我により、その技を使うことができなくなりました。痛みはもちろんですが、怪我の恐怖は技に入る瞬間の躊躇を生み出し、技のタイミングを狂わせる原因となります。一瞬の気の迷いで技のタイミングがずれ、回転が浅く不十分な技になったり、相手に防御されやすくなったりしました。この悪循環が続くと、痛みや恐怖心を抱えたまま練習を続けることで、技が打てなくなってしまいました。

先日、滋賀県長浜市の長浜伊香アリーナで行われた第74回全日本実業柔道団体対抗大会の第2部の決勝戦で、アルソックの佐々木選手が見せた喧嘩四つで組み手をさばき、相手の前に出ながら入る背負投の形が本当に好きで、私もよく使っていました。

しかし、あの遠い間合いから相手の前に出ながら入る背負投は、肘や膝に大きな負担がかかります。そのため、怪我をしてからは、EP.14のように、相手の外側のポジションから一定の近い距離で相手の意識を防御以外のことに逸らして入る形に変えました。具体的には、中間距離から相手を引き出し、自分は中に入り込むようにしています。動きの中で相手の前に出ながら完全に後ろ回りさばきで入るのではなく、足技や組み手、フェイントを使って相手の動きを止めたり、意識を逸らした状態で、半分は前回りさばき、半分は後ろ回りさばきで入るようにしています(EP.10参照)。

感覚の問題ですが、お互いの距離がある状態から一気に技に入る10→0ではなく、ある一定の近い距離から相手を引き出し、自分がその隙間に入り込む5→0と0→5の感覚です。動きの中で相手の意識を逸らして、技に入ることを意識しています。

怪我をすることで技術の幅が狭まることもありますが、同時に新たな技術を生み出す機会でもあります。よく耳にする「ピンチはチャンス」という言葉の通りです。

怪我を乗り越えて、自分の動きの範囲内で最大限の努力をして、新しい形や技を作り上げることが大切です。

例えば、体落や小外刈は肘や膝を怪我したときに覚えた技の一つです。昨年と今年の全日本シニア柔道体重別選手権大会の両大会前には、怪我で背負投が全く使えない時期が3〜6ヶ月ほど続きました。その期間はずっと背負投以外の技や動きの練習をひたすら行っていました。得意技を使えない時期は練習がつまらなく、地味で疲れるし、気分も乗らない日もありましたが、それでもできること、やるべきことを整理してやり続け、他の技の練習を積むことで、新しい技術を身につけることができました。

怪我によって技術の幅が狭まることもありますが、それは同時に新たな技術を開発する機会でもあります。柔道の技術の幅が狭まるのも、広がるのも、結局は自分自身の考え方次第ですね。

大島優磨/Yuma Oshima🥋 on Instagram: "他の投稿 → @yuma.o.25 ✅ ▶︎EP.21 体落”Tai-otoshi” 〜喧嘩四つ①〜 『 誰も教えてくれない‼︎ 体落の全て 』 今日から体落シリーズの始まりです。 7種類の入り方を紹介します! 第一弾は、小外刈から体落の連続技 ステップの使い分けがポイント☝️ 質問や詳細な解説をご希望の方は お気軽にコメントしてください🙋‍♂️ 「体落」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 投稿をシェアする際は タグ付けしていただけると嬉しいです。 他の動画は👉 @yuma.o.25 を チェックしてみてください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #柔道 #体落 #judo #taiotoshi #柔道テクニック" 1,265 likes, 13 comments - yuma.o.25 on May 4, 2024: "他の投稿 → www.instagram.com
大島優磨/Yuma Oshima🥋 on Instagram: "他の投稿 → @yuma.o.25 ✅ ▶︎EP.14 背負投”Seoi-nage” 〜喧嘩四つ⑤〜 【 本当は教えたくない!小外刈コツ3選 】 Level 1 〜刈る〜 足首を返す Level 2 〜置く〜 足の側面で引っ掛ける Level 3 〜ステップ〜 1,2の伏線で相手は足を後ろに下げる 質問や詳細な解説が知りたい方は お気軽にコメントしてください🙋‍♂️ 「小外刈」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 投稿をシェアする際は タグ付けしていただけると嬉しいです。 他の動画は👉 @yuma.o.25 を チェックしてみてください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー #柔道 #小外刈 #judo #kosotogari #柔道テクニック" 1,727 likes, 8 comments - yuma.o.25 on April 19, 2024: "他の投稿 www.instagram.com

3. 年齢とともに柔道の幅が狭まる

人間は無意識のうちに楽な方へ逃げやすく、年齢とともに自分の得意なパターンに固執することがあります。これは効率的ではあるものの、新たな挑戦や成長を阻害する要因ともなります。しかし、「攻撃は最大の防御」というように、得意なパターンを持つことは武器となりますが、それに固執しすぎると柔道が省エネに陥りがちです。

妥協せずに自分の柔道に徹底して取り組み、相手をその型にはめ込むことができれば強力な戦術となります。何度も反復練習をし、「この動きならこう」「こうされたらこう」と詰め将棋のように一つずつ相手の選択肢を潰していくことで、自分のペースに持ち込むことができます。それを実行するためには、強靭な体力、技術力、精神力が必要ですが、これらを磨くことで成長と安定した戦術を築くことができます。

一方で、この戦術の短所として、自分の想定外の状況に弱く、型にハマらない時に脆さが出てしまいます。その弱点を理解し、克服するための練習をすることが大切です。

そして、我慢強く、辛抱して、自分の形を作れるのをじっくりと待つ、これも一つの強さですが、時に自分でその殻を破り、一瞬の爆発力が柔道には不可欠です。自分の得意な形ばかりではなく、苦手な形も練習することで、自分の弱点を埋め、勝つ確率を1%、いや0.1%でも高めることができるのであれば、それは絶対にやるべきことです。

自分が拠点としている慣れた環境で、決まった相手と同じ練習を続けていては成長は望めません。敢えて新たな環境や相手との稽古を通じて、自分の得意なパターン以外の対応力を身につけ、10週間後に迫る全日本実業柔道個人選手権大会に向けて、準備を進めていきたいと思います。

常に前進を続けなければ、技術や柔道の幅は狭まります。そのことを肝に銘じて、日々の稽古やトレーニングを積み重ねていきます。

メリット②

1. 体重管理

長くなりましたが、私が感じているもう一つのメリットがあります。SNSや柔道教室での露出が増えたことで、身だしなみや体重管理に、より気を配るようになりました。前回のnoteでも触れましたが、自分のことが大好きなナルシストで、承認欲求の塊の人間なので、自分が浮腫んでいる状態で周囲から見られるのは嫌です。妻が試合を控えているため、外食や夜のおやつが控えめで、家には健康的な食材しか置かれていないことも、体重をキープする手助けとなっています。また、浮腫んで太っている状態では動きも悪くなり、キレもなくなるので、一石二鳥です。ただ、これだけ言っておいて、妻の試合が終わった途端、ちょっと太ってしまうこともあります。その時は、皆さんには『中指を立てるのではなく、人差し指を足して』笑って許していただけると嬉しいです。

2. 身だしなみ

また、身だしなみに関しては、不衛生な人から柔道教室やセミナーを受けたいとは思わないですし、そのような人のSNS映像も見る気にはなれません。一方で、そのような商法で差別化を図る人もいますが、私は動画投稿を通じて、自分の柔道へのアプローチを知ってもらい、興味を持ってもらうことを目指しています。そのため、柔道教室やセミナーを仕事として依頼されるにふさわしい、最低限の服装や身だしなみに気を配るように心掛けています。

男なので、周りによく見られたいし、見栄も張りたいし、よく思われたい。ナルシストで承認欲求の塊、そして自己顕示欲も強いかもしれません。

最低限の服装や身だしなみは、社会人として当然のことですが、以前、妻が柔道の指導のお手伝いをさせていただいていた、新宿区四谷の柔道教室『文武一道塾 志道館』の館長である坂東真夕子先生に「柔道界の当たり前は社会の当たり前ではない」と言われたことを今でも鮮明に覚えています。スリッパや短パン、髭など、柔道家にとって耳が痛い身だしなみや服装はもちろんですが、私生活全てにおいて、当てはまる言葉です。この言葉に若いうちに出会えたことが、私にとっての財産です。

上の二つのリンクは、ぜひお時間がある時に全ての柔道家に読んでいただきたいです。よろしくお願いします。

お金の話

次に、お金の話として柔道引退後の金銭的な不安について書こうと思っていましたが、予定していた4つのトピックのうち、最初のトピックで話が脱線してしまい、今回も長くなってしまいました。続きはまたの機会にお届けします。

最後に

まだまだ伝えたいことはたくさんありますが、今日はここまでとさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様、物好きなあなたへ、心からの感謝を込めて。

この記事がお役に立ったり、楽しんでいただけたなら、ぜひシェアしていただけると嬉しいです。

これまで4回にわたり、noteを通じて、私の柔道への思いや現役最後の年、SNSの使い方、そして家族に関するエピソードをお届けしてきました。皆さんがこれらの話を楽しんでいただけていることを願っています。もし、これから聞いてみたい話題があれば、コメントで教えてください。窮地を何度も救ってくれた得意技の話や、高校・学生時代の思い出など、皆さんのリクエストにお応えしたいと思います。皆さんからのフィードバックを楽しみにしています!

それでは、次回の更新でまたお会いしましょう。

P.S.

EPシリーズの解説や柔道教室、セミナーに関する多くのお問い合わせ、ありがとうございます。

引退までの時間は限られています。

残りわずかな時間を確保するのは早い者勝ちです。

皆様からのご連絡と、一緒に学べる時間を楽しみにお待ちしております。

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