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日常的においしいコーヒーとは

こんにちは、川野優馬です。

コーヒーは嗜好品であり農作物で、いろんな楽しみ方や、コーヒー屋の伝え方があって面白いのですが、僕はその中でも特に「日常的においしいコーヒー」に意味を感じて伝えています。

今日はそんな僕が思う、「日常的なおいしさ」について改めて考えてみたいと思います。


どんな味?

「おいしいコーヒーを日常に」とか、「みんなの生活においしいコーヒーを根付かせたい」といったワードは、コーヒー業界の中ではよく目や耳にすることがあると思います。それはそのはずで、コーヒーはアルコール飲料ではないしカフェイン作用を考えても基本的に日中に飲み物で、歴史を遡っても1650年ごろからのヨーロッパのコーヒーハウスから始まり、エスプレッソ系のチェーン店がこれだけ普及しているように、カジュアルで毎日楽しめる飲み物です。


おいしいコーヒーと単に言った時、みなさんはどんなコーヒーを思い浮かべるでしょうか?

僕は2つのおいしいコーヒーの体験があると思っていて、1つが、ぶわっと風味が体中を駆け巡り、どんっと心を突き動かされるような、派手なインパクトと魅力的な個性を持つおいしいコーヒー。もう1つが、毎朝飲みたくなるような、しっくりきて体に馴染むような感覚を持つ「やっぱりおいしいな」と感じさせてくれるコーヒーです。

人がコーヒーに魅力を感じ、そしてそれを継続していくためには、きっかけのコーヒーと続けるコーヒーのの2つのおいしい体験が役割を担っていて、どちらも必要なおいしさだと感じています。そしてその中でも僕は特に後者の、馴染むおいしさ、飲み続けたいと思えるバランスの中でコーヒーの個性や魅力を感じてもらえるようなコーヒー屋をやりたいなと思っています。



日常的なおいしさのコーヒーはどんな味かと言っても、日常性とおいしさ(豆の個性)のバランス感覚はやっぱりロースターやお店によって違います。僕のバランス感覚では、すーっと引っ掛かりなく口の中に入ってきて、その瞬間ふわっと果実を思わせる印象や花のような香りが鼻に抜け、そして透明感を保ったまま口の中に味わいが広がり、心地いい綺麗な酸とじんわり伝わる甘さがしっかり感じられるコーヒー。飲み込んだ後も良いんに香りと甘さがじわーっと残って、あーよかったな、また飲みたいなと思える自然な個性。バチバチに派手な風味のコーヒーを飲んだ後には物足りないかもしれないけど、肩の力を抜いて気張らずに楽しめる感覚のおいしさがいいなと思っています。豆が変わればもちろん感じられる風味や個性は変わるけど、あくまで「じわうま」な馴染む感覚の中に個性が立っているようなおいしさ。僕はそんなコーヒーを毎日飲みたいなっ思うし、そんな寄り添うおいしさに幸せを感じます。


量と質

スペシャルティコーヒーと言うと、とにかく品質が大事です。品質がいいから、つまり風味個性が素晴らしいからこそ、価値が上がります。
僕はこのおいしさや個性の追求をしながらも、質の高いコーヒーを量を伴わせて伝えたり流通させることにも、これからのコーヒー文化では意味を持つのかなと思っています。

例えば、需要と供給のバランスを考えると、素晴らしい品質のコーヒーを出そうと思うほど価格は上がるので、飲む人は自然と絞られていきます。これ自体にも意味はあって、さっき書いたような、どんっと心を突き動かすようなコーヒー体験にもなって、コーヒー好きを増やしつつも体験価値を直接的に上げていく働きなのですが、一方で多くの人が頻度高く楽しむからこそ生まれる価値も確実に求められていて、なんとなくこの「日常に根付くおいしい体験」の供給が少し置き去りというか、減ってきているような感覚を持ちます。コンビニコーヒー的な超高頻度で低価格な体験と、最高品質だけど低頻度で高価格な体験の二極化に向かっているような。

この間のところ、すごいおいしいんだけど毎日に溶け込める頻度の体験が、おいしいコーヒーの文化を根付いたものにするところなのかもと思っていて、僕は興味があります。というか、すごいおいしいものを頻度を高めることで、気軽な値段を維持したまま提供できるという、出し手の工夫です。

スペシャルティコーヒーを語ると、「量から質への転換」の意味合いが歴史的には強いのかもしれませんが、これからのフェーズは、質の中で量を伴わせて次の質にいく、なのかなと個人的には思っています。



生産者にとっての価値

僕らコーヒー屋は、おいしさはもちろん、社会的な意味も感じてコーヒーを仕事にしていたりします。例えば、農家さんごとに生産されたコーヒーを混ぜて大きなロットにせずに細かく分けたシングルオリジンとして仕入れることで、生産者ごとの努力や品質を評価して買うことができます。

生産者がコーヒーを農業として続けていくことに僕らコーヒー屋やロースターが貢献しながらコーヒーを売るには、どんな動きができるか。ひとつはシンプルにより高い価格で買って、より高い価値をつけて売るということですが、僕個人としてはせっかく生産を大切にしたシングルオリジンコーヒーをやるなら、できるだけたくさんの生産者に影響を与えられるようになりたいなとも思って、おいしいコーヒーをたくさん買ってたくさん流通させられる存在になりたいなとも思います。

そのためにも、月に一回飲むスペシャルなコーヒーよりも、毎日飲みたくなるおいしいコーヒー体験を増やしたい。寄り添ってくれるようなおいしさを毎日に届けたい。

最高の素材を仕入れていくんだけど、そんな個性あふれる風味を、できる限り日常的なおいしさに乗せて届けていきたいなと思いました。


みんなのおいしいコーヒーは、どんなコーヒーですか?



川野優馬


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