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非特異的腰痛〜総論〜

今日は腰痛についての記事を書いていこうと思います.
腰痛は,生涯のうちに約80%の人が経験するといわれる発生頻度の高い症状と報告されています.(吉本 三徳ほか:アスリートの筋・筋膜性腰痛の病態と治療.関節外科 Vol35 No5.2016より)

腰痛は,医師の診察や画像検査(X線やMRI)で腰痛の原因が特定できる特異的腰痛と,厳密な原因が特定できない非特異的腰痛に分けられ,非特異的腰痛が約75%を占めるとされています.
しかし,腰痛診療ガイドライン改定第2版では,診断不明の非特異的腰痛は約22%であり,腰痛の内訳は椎間関節性:22%,筋・筋膜性腰痛:18%,椎間板性:13%,脊柱管狭窄症:11%,椎間板ヘルニア:7%,仙腸関節性:6%であったとされています.
このことから,腰痛を診る上で,各病態についての知識を把握しておく必要があります.腰痛の病態については,4つに大別されることが多いため,今回のnoteでは以下の
4つに焦点を当てて,総論を書いていこうと思います.今後の記事では各論を述べていきます.
①筋・筋膜性 ②椎間関節性 ③仙腸関節性 ④椎間板性

◎筋・筋膜性腰痛について

【疫学】
筋・筋膜性腰痛は,腰部背筋群やその筋膜に由来し,腰痛の原因として最も多い原因であると考えられており,長時間の反復動作,左右非対称の負荷が生じることで発症しやすいとされています(※2:寺島 嘉紀:筋・筋膜性腰痛の病態と治療.MB Orthop.27(13):13-18.2014).
※腰痛診療ガイドライン改定第2版では, 椎間関節が22%,筋・筋膜性腰痛が18%の割合であると報告されています.論文によって,数値は異なるためおおまかに捉えて頂ければと思います.

【体幹筋の構造について】
体幹の筋は,グローバル筋とローカル筋に大別されます.
・グローバル筋:外壁として機能し,腰椎に直接付着をもたない筋
・ローカル筋:分節的に安定性に関与する腰椎に直接付着をもつ筋
グローバル筋とローカル筋の相互作用で体幹は安定するといわれています.

グローバル筋とローカル筋について

なかでも大切なのは,グローバル筋に分類される最長筋および腸肋筋
ローカル筋に分類される多裂筋であるといわれています.
その他にも,腰方形筋,胸腰筋膜,大殿筋やハムストリングスなども腰痛に関わる
重要な組織であると考えています.

◎椎間関節性腰痛について

【疫学】
椎間関節が腰痛の原因となることを報告したのは,1911年のGoldthwaitによる報告が最初であると言われています.(寒竹 司:椎間関節の痛み.MB Orthop.26(12):21-24,2013より)
1963年に,Hirschらが高張食塩水を椎間関節に注入することで,腰痛が再現されることが報告しました.(Hirsch C et al:The anatomical basis for low back pain.Acta Orthop Scand.33:1-17,1963より)
椎間関節性腰痛の罹患割合は,報告によって差異はありますが,15%〜52%程度であると報告されています.(Bogduk, N:Clinical anatomy of the lumbar spine and sacrum.1997より)(Kornick,C et al:Complcations of lumbar fascet radiofre- quency denervation. Spine.29:2007より)

◎仙腸関節性腰痛について

仙腸関節由来の腰痛は,おおよそ6%程度であると報告されています.(腰痛診療ガイドライン改定第2版より)
仙腸関節に起因する疼痛には,さまざまな病因があるされています.
・強直性脊椎炎などの仙骨部の炎症性疾患
・感染
・腰仙椎固定術後などの医原性
・婦人科系,泌尿器科系疾患の関連痛など
(小澤 浩司:仙腸関節痛の診断.脊椎脊髄 29(3).2016より)
国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は仙腸関節痛を仙腸関節に起因する痛みと定義し,画像検査で異常がみられる関節炎,関節症などは除外されています.

仙腸関節の変性頻度

上記の図のように,全体の65.1%に何らかの変性が認められ,高度変性は30.5%に
認められると報告されています.(矢吹 省司:仙腸関節の解剖.脊椎脊髄 vol.29 No.3.2016より)


◎椎間板性腰痛について

慢性腰痛患者へのブロック注射から得られた知見で,疼痛発生部位の可能性として,
椎間板の可能性:39%と報告されています.(高橋 弦ほか:椎間板性腰痛の基礎.日本腰痛学会雑誌.13:2007より)

正常椎間板(左)と変性椎間板(右)

正常椎間板では椎間板周囲にしか感覚神経は存在しないが,変性椎間板には椎間板内部に疼痛伝達神経が入り込み,椎間板性腰痛の原因となることが報告されています.
(Shinohara H:Lumbar disc lesion,with special reference to the histological significance of ncrve endings of the lumbar discs.1970より)

以上になります.今回は理学療法士がよく経験する腰痛についての総論記事を
書きました.次回以降は各論を記事にしていこうと思います.
最後までご覧いただきありがとうございました.

※論文を読んだ上での個人的な見解を多分に含んでいます.詳細が気になる方は是非論文を読んで理解を深めて頂ければと思います.

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