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日本人が英語ができない理由

高1の時に、フランスに短期留学をした。語学学校にはヨーロッパのあらゆる国から同世代の子供たちが集まっていた。

私は、英語しかできないドイツ人と、フランス語しかできないベラルーシ人と、日本語しかできない日本人と、なぜか行動をともにしていた。全員とコミュニケーションを取れるのが私しかおらず、必死にあらゆる方向に通訳をしていた。

プールへ遊びに行った日に、私はドイツ人の子に言った。

"She thinks that that water slide is too scary, so she wants to go on that one."

完璧な文法で、完璧な発音で言ったはずなのに、ドイツ人の子はきょとんとしていた。

私は数秒考えて、もう一回言った。

"That water slide, very scary! She want, that water slide!"

すると、ドイツ人の子は理解してくれた。

動詞は変格がややこしいので原型に。文法を崩し、単語を簡単にし、文章を単純に。こうしてやっと通じたのである。

英語は世界の共通語だと言われる。日本でも英語があらゆる場面において重視され、人々は英語教育にとことん力を入れる。しかし、その努力もむなしく、英語力ランキングでは日本は近隣の韓国や台湾、中国から大きく引き離され、53位というさえない結果をたたき出している。

私はこれは当然の結果だと思う。なぜなら、世界で話されている「英語」と、日本人が必死に勉強している英語は全然違うものだからだ。

海外の人と話していると、日本人は「英語」を話せない、という偏見をもたれていることに気づく。私の周りにも、「英語」を話せない日本人がたくさんいる。義務教育の英語を満足に習得できなかった人が話せないのは当然だとしても、偏差値の高い大学に合格するほど受験英語を勉強した人でも、「英語」が話せていない。

このような、英語を勉強したのに「英語」が話せない人々には共通の特徴があるように思う。彼らは、英語に対して身構えすぎなのである。彼らはすべての発言が完璧な文法で、完璧な発音で、発せられなくてはいけないと考えてしまっている。

えーI....過去について話したい、went....えー、けど、あれ、でもこの場合は過去完了?、have been...えーとswimだっけswimmingだっけ・・・

こんな風に考えながら話していたら、誰も待ってくれないだろう。

また、Waterの発音を我々はアメリカ流に、「ウォラ」みたいな発音で言うように学ぶ。だからヨーロッパに行っても、"please give me water.(ウォラ)"という。

これでは通じない。ヨーロッパの人々が学ぶ英語はイギリス流のアクセントだ。ウォータ。これの方が通じるのだ。

こうして、しっかりみっちり英語を学んだ日本人のはずなのに、「英語」ができない、という烙印を押されてしまうのである。

現在、私はロシア人、ラトビア人、ブルガリア人、そしてイタリア人と仕事をしている。職場の共通語はもちろん「英語」である。この「英語」には正しい文法や発音は存在しない。文章は単純に。相手に伝わるかがすべてである。日本の中学生レベルの英単語と、それぞれの国のアクセントの混じったはちゃめちゃなアクセントと、崩れた文法で会話は取り交わされ、会社は無事回っている。

日本人は身構えなければきっと世界の人々と対等に会話できるだけの「英語」力をもっているはずだ。世界の人々は、思っているほど英語はできないのだ。「英語」ができるだけなのだ。日本人よ、肩の力を抜いていこう。そう思った。




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