貧乏になるとは

大学4年の11月からの1ヶ月半は人生のなかでもとりわけみじめな生活を送っていた。マルタで自炊をしながらインターンをしていた頃と、そのインターンの終了後にヨーロッパを旅していた時の話だ。

理由は簡単。インターンは無給で、お金が無かったからである。

そんな生活を送った私はこころに固く決めていることがある。それは

「もうこんな暮らしをしなくて済むような人生を送るんや!!!!」

ということだ。

今回は私はそう決意するように至った一ヶ月半にわたる極限貧乏生活を備忘録として記す。

マルタ生活編

・近所のスーパーを4軒周り、キロあたりの価格が一番安いところで食材を買った。人参2キロ、じゃがいも3キロ、りんご2キロ、パスタ1キロを買った。パンは40切れで100円の激安激薄パンを買った。

・朝ごはんは日本から持ち込んだグラノーラ、昼は激安激薄パンを2切れとりんご1個。夜はパスタという生活を繰り返した。食費は1日200円だった。

・調味料は高くて買えなかった。家に置き忘れられていた調味料を拝借した。ハウスメイトのオリーブオイルを拝借した日もあった。

・栄養不足が心配になったので食事管理アプリをダウンロードした。足りない栄養素はサプリで補った。このサプリも家に置き忘れられた異国のものをドキドキしながら使った。洗剤とかじゃなくてよかった。

・肉は高くて買えなかった。卵を毎日食べた。貴重なタンパク質だった。

・水も買わないことにした。水道水を飲んだ。お腹をこわさなくてよかった。

・ある夜、嵐でwifiが止まった。その日から一週間近くのホテルに通い、フリーwifiに寄生した。

・毛布は収容所にありそうな薄いものだった。夜は13度くらいになる石造りのマルタの家は寒くて寒くて。ダウンを体に巻きつけ震えながら寝た。明日も生きていますように、と祈った。

・寒すぎて「夜 寝る 寒い」とググった。「暖房をつけましょう」などがヒットし、キレそうだった。暖房が無いから困っているんだ。

・シャワーカーテンが無かった。毎日浴槽にひざまづいてシャワーを浴びた。

・シャンプーとコンディショナーを節約しないといけなかった。髪を洗う頻度を3日に一回にした。ひどいときは一週間に一回だった。

・ある日家のガスが止まった。コンロが使えないので電子レンジで冷凍した野菜をあたためて夜ご飯をつくった。

・洗濯もお金がかかる。下着は毎日手洗いした。ヒートテックは同じものを1週間来た。こうすることで洗濯は1週間に一回または2週間に一回におさえることに成功した。

・トイレットペーパーもお金がかかる。トイレはなるべく外で済ました。ショッピングモールのトイレから数メートル分拝借したときもあった。

ヨーロッパ一人旅編

マルタでの生活を終えた後は1週間ほど一人で旅をしていた。冬の極寒のヨーロッパでの、孤独で惨めな旅だった。

DAY0: マルタの寮にて最後のシャワーをあびた。ここから3日間体を洗えない。念入りに洗った。この日はバルセロナで空港泊だった。24時間営業のカフェで荷物を握りしめながら仮眠をとった。

DAY1: この日の夜にアムステルダムからベルリンへ夜行バスで移動した。お風呂には当然入ることができなかった。

DAY2: 早朝にベルリンに到着した。公衆トイレの洗面台で顔を洗った。タオルは無いので自然乾燥。歯をみがき、髪をとかした。喉が乾いたので公衆トイレの水道水を飲んだ。夜はまた夜行バスでの移動。この日もお風呂には入れなかった。

DAY3: 早朝にクラクフ(ポーランド)に到着した。昨日充電する機会が無かったため、スマホの電源が死んだ。地図を必死に暗記し、ホテルまで歩いた。3日ぶりのお風呂に入った。夜は久々にたくさん食べることができた。食べすぎて気持ち悪くなった。体をひきずるようにしてホテルに戻り、部屋で3回吐いた。

DAY4: 朝・昼はツアーの時間の都合で食べることができなかった。夜行バスでプラハへ移動した。乗り場には英語表記が無く不安だった。バスのトイレは詰まっていたが、止むを得ずそこで用を足した。

DAY5: あまりに朝早くにプラハに着いたのでホステルにチェックインさせてもらえなかった。どうしてもトイレにいきたくなり、中央駅をさまよった。1つ目のトイレは見つからず、2つ目のトイレは工事中。3つ目のトイレはあったのに現金が必要だった。大変だった。

DAY6: 帰国日。日本が恋しくてしょうがなかった。

全てを終えて

①「衣」「食」「住」が安定していることの重要性

ヨーロッパで必死に生きていた一ヶ月半、生理が止まっていた。おそらくそうとうなストレスを感じていたのだろう。衣食住が不安定な生活は健康に悪い。精神に悪い。あたりまえのことを自分の身を以て経験した。

②お金と選択肢

お金があれば美味しいものを十分量食べることができ、綺麗な服を着て清潔に過ごすことができ、楽な移動手段を選択でき、心地よい睡眠をとることができる。「お金が全てじゃない」と小さい頃は学ぶが、これはある程度のお金を持っている人がはじめて言える贅沢な主張だ。この社会で満足に生きるにはお金が必要だと、深く知った。

③総括

もう二度と経験したく無いが、一度やっておいてよかった。そんな経験だった。「ゼロ」になって、優先度の高いものしか得ることができない状況に自分を追い込んだことによって、自分の人生観を確認することができたと思う。

以上。


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