第二の情報格差の予兆

私のバイト先に、ごくごく簡単な英語の文整序問題が解けない中学生がいる。

First, Then, But, Finallyが分かればそれだけでも解けそうな問題なのに、である。

私はこのような問題が解けない原因は、単語力が足りないからでは無いと思っている。今日は、試しにこの生徒に一つ質問をしてみた。First, Then, But, Finallyの意味を答えるように頼んだのだ。すると、やはり。彼女はそれぞれの正しい訳を答えたのである。

彼女に欠けていたのは、文章同士の因果関係を読み解く能力、知っている少しの単語を拾って想像を膨らませる能力、段落全体の論理構造を仮定する能力・・・一括して言えば、「国語力」だったのだと思う。

国語力とは

今日は国語力がテーマだ。国語力とはなんなのだろうか。とても参考になる記事があったので紹介する。

国語力とは、筋道を考えて相手に伝える「言語技術」のことであり、国語力が高い人は、必然的に論理的思考力も高いということになるという。

そして、論理的思考力に必要なのは「伝えたいこと」を整理する力だ。福嶋さんは、考えを整理するための手法として、「言いかえる力」「くらべる力」「たどる力」の3つの力を提唱している。

言いかえる力(抽象・具体の関係を整理する力)
くらべる力(対比関係を整理する力)
たどる力(因果関係を整理する力)

つまり国語力とは上記の3つの力を駆使して得た情報を咀嚼し、それを他者に伝える技術といえる。(さっそくの「言いかえ」だ。)

もう一つ興味深い投稿があったので紹介する。ここで説明されている3つのステップも、国語力と同じものを指していると思う。

国語力の重要性

国語力は情報を自分の中で処理する過程と密接している。だから、国語力は何を学ぶにしても必要な力になる。

国語力の欠如が他の学問の学習を阻害している具体例は、数え切れないほど思い浮かぶ。

例えば、私は塾講師のバイトをしている。英検対策に特化した塾なので、各級にあわせた単語テストを毎週行う。その毎週の単語テストで満点を取り続けているのに、英検に落ち続ける子がいた。その子は決まって、読解問題で失点しているのだった。

私はこの子に対して、日本語でも良いから、とにかく本を読みなさい。という指導を行った。本を読むことで多様な分野の背景知識を得ることはもちろんだが、それよりも大事だったのは、文章の論理構成に慣れて欲しかったからである。

次の英検で彼女が受かったときは、大変うれしかった。

また、バイト先の生徒には数学が全然できない子が大勢いる。彼らの間違い方を見ていると、数学を「考えて解く」ものではなく、「機械的に当てはめて解く」学問だと勘違いしているような印象を受ける。

すごく共感したツイートがあったので共有する。(この9月初頭のツイートを掘り返すの大変だった・・・)

私の塾の生徒だと、n角形の内角の和についての公式で、「~は何角形でしょう」という質問に対して、公式に当てはめて計算したあとに

n-2 = 10 なので10角形。と答えを書いていた。

おそらくnが、「何角形」の「言い換え」であることを理解していないのだろう。

文章から方程式を作り出せない子も多い。このような子は各数字の因果関係を「たどる」力、そして数字に「言いかえる」力が足りないのだと思う。

これからの日本

国語力が身につかない原因は「読書量が足りないから」などという簡単な理由では語れない。日本の教育制度、文化資本の格差、貧富の差など多くの要因が絡み合って生じているのだと思う。

現代は情報化社会といわれる。情報へのアクセスが社会的成功の鍵となるため、デジタル・ディバイドなんていう言葉も生まれている。

私は、情報化社会が進むことによって、一般に言われる情報格差とは別種の格差が生まれるのではないかと危惧している。これは、国語力の差による格差である。

国語力のある人はアクセスできる情報を最大限活用していく。国語力の無い人は有益な情報にアクセスできない、またはアクセスできてもその情報を活用することができない。

そのような未来になってしまっても、おかしくない気がするのだ。

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