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猫と人差し指

猫とコミュニケーションを図るのは、至難の業である。人差し指が重症・・・というのは大げさかもしれないが、傷だらけである事は確かだ。
言わずもがな犯人は、我が家の猫である。

昨年の8月に拾ったトンボ猫が最近目に見えて乱暴だ。
我を通すために実力行使に出るのだ。

よっぽどのことをしなければ、人間にも先輩猫のセミ猫にもそうそう、こっぴどくやられはしないとわかっている。だから、ある程度の一線を超えないつもりで、当のトンボ猫は行動しているつもりなのだろうが、もうすでにそれが迷惑の域になっているのだ。

例えば、セミ猫をブラッシングしているとトンボ猫が飛んでくる。やきもちを焼いているのはわかっているので、トンボー猫にもブラッシングをしてやろうとかかるとあいにくとトンボ猫はまだブラッシングに慣れていない。
10回程度ブラシで撫でるくらいならいいが、それ以上は逃げてしまう。全くブラッシングにならない。そして、逃げる前に、大好きなブラッシング待ちをして寝そべっているセミ猫に噛み付いたり叩いたりしていくのである。
セミ猫はそういう時大抵油断しているから、あまりやり返すと言う事は無い。そもそも負けてやって人間に庇ってもらった方が得だと思っている猫なのである。

セミ猫はマイペースである。
トンボ猫はわがままである。

セミ猫は人間の目につかなそうな時に、トンボ猫をやっつけたり、勝手に扉を開けて、自由気ままに家の中を散歩したり、人間の前でだけできないふりをするから、トンボ猫が怒るのだ。

そして、セミ猫が少しでも人間に甘えたそぶりを見せると、その立場を奪ってやろうと飛びかかってくるのである。今トンボ猫は、セミ猫のことが羨ましくて、仕方がない時期だ。

どうにかセミ猫と同じように、人間の注意を引きたいと思っている。

しかしながら、そのために、人間とセミ猫の間に入るたびに爪を出して引っかいたり噛み付いたりしてくるのだから、存分に可愛がってもらえるわけがない。

トンボ猫がわがままだとセミ猫もちょっとわがままになってきた。人間が怒っているのはわかっているのだが、たいした叱られ方じゃないともわかるので、自分も真似してわがままになってみる。

そして、前述のようにトンボ猫に引っかかれ、私の右手の人差し指から血が溢れた。指は結構違出るので、ずっとティッシュでおさえていると、トンボ猫に怒りが湧いてくる。
前日に、セミ猫に同じ指をひっかかれたばかりだった。その時は猫のおもちゃで一緒に遊んでいる時だったから、人間の方が油断してしまったと反省したが、猫草をあげている最中にひっかかれたのは納得いかない。食べ物を引っ掻いて奪ってとればいいと思っている。
依然としてトンボ猫は、まるで飢えた虎のように食事に関しては凶暴だ。セミ猫が窓の近くにやってきた。外の猫に怒り狂っているときは、ほとんど近づかず、おとなしくしている。
しかし、一度食べ物のことになると、今食べないと明日食べられるか分からないというような態度を見せるのだ。

トンボ猫は、セミ猫と比べて丸々としてきた。運動量も少ないからだろう。セミ猫が自分のご飯をねだるふりして、トンボ猫にご飯をあげてしまう。さらに食べている時に盗られても怒らなくなってしまった。後でまた人間からもらえばいいからである。
ご飯のためにトンボ猫と喧嘩するのは、セミ猫にとってバカバカしいことだ。しかしながら、たいていの野良猫と同じように、トンボ猫にとってはご飯が何よりも重大事なのだ。

一方で、セミ猫とトンボ猫はご飯に対して同様の態度をとるところがある。最近気づいたが、餌の袋を隠して置いている扉は勝手に開けようとするが、封を切ったままその辺に餌の袋を置いていても、勝手に食べたりしないのだ。あくまでご飯は人間にもらわなければならないらしい。人間におねだりしてご飯をもらうのが嬉しいのだ。
いつでも自由にごはんが食べられればいいというものではない。猫の食事には、人間とのコミュニケーションが必要なのだ。なんて愛健気でわがままな生き物なのだろうか。猫というのは本当に気難しいものだ。人間の機嫌をとりながら、猫に対してもご機嫌伺いを要求するのである。

別々にご飯をあげると言う事は何度も試みている。しかしながらせっかく2匹になったのに、全く別の部屋で過ごさせるのも寂しいような気がしてできない。外にいた時に喉を潰してしまったのか、かすれた、小さな声で、別の部屋でトンボ猫がずっと鳴いているかと思うとセミ猫ばかり贔屓できない。

そんな人間の同情心をトンボ猫は分かっていない。自己主張しなければ、先輩のセミ猫の方が良い思いをすると思っているのだ。むしろ、その自己主張が強すぎるために、別部屋に追いやらなければならないということがわかっていない。

ケージにはすっかり慣れた。セミ猫よりも率先して入るくらいだ。ケージに入ると遊んだりご飯をもらったりしたそうにしている。しかし、ケージの中だとご飯をあげるときに、爪を出してきたり、撫でようとすると、やっぱり爪を出してくるので、人間の方がケージに入れたくなくなってしまった。ケージの中からひょいと手を出して相手を脅かすのが好きなようだ。

セミ猫にはそんな事はなかった。子猫の頃ケージの中で退屈そうにしていたり、しょんぼりしたりしていた。イライラとおもちゃを振り回していた。人間のてをおもちゃにするようなそんな趣味の悪い遊びはしなかった。

セミ猫の爪は切れる。ただ、めったに爪を出さない上に、爪を切るとずっと爪を噛むので、ほとんど爪を切ってあげない。トンボ猫は、流血沙汰になるので、爪を切るどころじゃない。人間に甘えてくるようになったら今が1番危険だ。

大丈夫そうだなと、人間が油断して手を出すと、ガシッとやられてしまう。

そして、猫たちはなぜか私の人差し指にコミュニケーションをしかけてくる。起きたら人差し指に傷があったり、どうも起こそうとして人差し指にちょいちょいと爪を引っ掛けるようだ。屈むとこちらが顔を見て近づけない限りは足にスリスリする他には、まず右手の人差し指の匂いを嗅いでくるのだ。

傷は人差し指だけじゃない。蝉、猫の真似して、人間の膝にも乗ってくるようになったので、太もも傷だらけである。
どうやって教育したら良いのだろう?
以前ほどは鳴かないが、相変わらずキャリーに入れると破壊して出ようとする。チャックも開けてしまう。プラスチックも洗面器を破壊したことがあるからダメだ。

最近やっと、セミ猫の目薬に慣れてきた。セミ猫の方もそれほど怯えない。そもそも人間に対する信頼が高いので少しくらい怖くても暴れたりしないのだ。身体能力が高いので、逃げられると手に負えないが。

その目薬ですら羨ましそうに寄ってくる。
トンボ猫は、我が家の庭にガリガリで現れた時から、目はキラキラしていた。全く目薬の必要はなさそうである。しかし、あんまりパッチリ開いている目なので、目薬をさしてみようかなと魔がささないでもない。

果たして、トンボ猫はおとなしく目薬をささせるだろうか。後からは慣れるとしても、やはり最初はおびえて、とんでもなく暴れて、人間が傷を負う気がする。

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