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猫と私がお互いをわかりすぎている

うちの猫がもうすぐ、1歳半になります(推定)。原因はわかりませんが、やたらぜえぜえ咳をしていたのも治ってきました。体重はいま4.3キロ。これ以上大きくなったらさらに抱っこがつらくなります。人間の赤ちゃんを日々抱っこしているお母さんたちを尊敬します。

大人になったら遊びに対して興味が薄れると聞いていたのですが、うちの猫はいつまでも遊びをやめません。遊びたくなると「ニャオーン」とこちらを呼びつける術まで覚えてしまいました。少し遊んで部屋に戻ると、しばらく経ってまた鳴きます。それが、数分とか10分とかではなくて、1時間後とか数時間後なんです。「もういいでしょ?十分放置したよね?良心が痛まないか?私はこんなに遊びたがっているのに?」もうこっちが放っておけないタイミングを見計らっているかのようです。

畳の部屋の前の廊下で寒かろうが暑かろうが待っている。トイレに行く人たちが踏みつけそうになるのに、入り口ででんと寝そべっています。時折頭を起こして私が部屋から出てくるときに、目を合わせるのです。「待っているんですけど、まだですか?抱っこでも良いですよ?爪たてますけど?」怖いような執念です。

朝はご飯がほしくなくても、「ご飯の時間だよー」とパフォーマンスしてきます。それで私が起きないことは織り込み済みで、どっこいしょと枕に寝そべって時折私に撫でられながらご飯をくれるのを待っています。しかし大抵朝はお腹が空いていないので、ごはんをあげにいくとぴょんぴょんウサギのように飛び跳ねてついてきますが、一口食べたらやはりゴロンと進行方向に寝そべって「通りたければ私を十分撫でてからにしてもらおうか?」と言わんばかりの態度です。

この進行方向をふさぐ作戦はだんだん高度化しており、ボール遊びをしているときに特に顕著に表れます。大体10回投げたら引き上げようと心に決めるのですが、2倍以上は投げさせられます。それでも飽きないので、転がったボールが隣の部屋の前に行ったときに「さてこのまま引き上げよう」とするのですが、遊びをやめようという気配を感じて素早くスライディングしてきます。足をがっちりホールドされると「痛い痛い」と爪を立てられてますます遊んであげたくなくなるのですが、それを察して、部屋の扉の前のボールは特に必死に追いかけるようになりました。

「わたしはーまだー満足ーしてないーからーねー!絶対ーまだー遊ぶーんだからーみてよーこんなに元気ーいっぱいーひっしーなのーにーこれでもーまだー遊びをーやめろってーいうのおおおおおおおおおおおお!!!!!」

扉にぶつかるボールを捕まえてガンガン横向きにお腹を体当たりさせて怪我でもするんじゃという勢いで突進していきます。それでもなるべく私の足に向かって蹴り返そうとするのはさすがです。よく本棚の下や後ろにボールが入り込むのですが、最近はすぐに私にとってもらおうとせず、自分で取ろうと頑張ります。しかし、「がんばったよ?」とアピールしたら、すぐ口に咥えられる位置になったボールを置いてって、とことこと私の前を通りすぎ、「早く投げて!」と身体を低くして段ボールの陰で身構えています。けれども、私がそのまま呆れてボールを持って去ろうというときにはやはり回り込むか、ガーンとショックを受けた顔で見つめてきます。

「見つめられても疲れたがな・・・。あなたに付き合っていたら1時間あるいは2時間コースになっちゃうよ」

アイコンタクトで私がその意思を伝えると、猫は了解したように身構えるのをやめてお腹の毛づくろいを始めます。やれやれ。

最近、私の方でも猫じゃらしで遊んでやっていると、どうしてもすかしてしまいます。猫の動きが見えているので、捕まえられないタイミングが分かるのです。それは動体視力で判断するとかそういうことではなく、私の方に自然身に着いたもので、猫のその時の気持ちの向き具合とかでどういう動きをするのか読めるようになってきたのです。猫に合わせていたら、すぐに猫じゃらしはとられて、またどっかに隠されてしまいます。最近また新しい隠し場所を発明したのか、まったく玩具が見つかりません。

「遊んであげられなくてもいいのかなあ!?」

と思ってしまいますが、玩具がないと足にじゃれつくか座椅子に爪を立ててくるので困るのは人間です。それを猫も見越しているのです。

「わたしのおもちゃを探さなくていいのかなあ!?興奮すると、足にしがみついちゃうもんねえええ」

ー脅しですよ。

すれ違う際に足にタッチするのも、猫のブームになっているようです。こちらが歩いて居間やトイレや庭に出ようと歩いていると、進行方向からやってきてすっと足を出してポンと足首を撫でていきます。肉球がちょっと冷たいなと感じるくらいの優しい触り方です。しかし、それで安心するとたとえばまたそこでゴロンと横になられたり、水道に飛び乗って水をくれと催促されたり(水入れにいつも水は入っています)、やっぱり足にしがみつかれたりしてしまいます。とてもさりげなくすれ違わないと、「あら、わたしをかまう余裕がありそうね」と猫に見透かされてしまうのです。

猫は見ています。この前まで、扉を開けられることを隠していたのに、今は堂々と扉を開けて入ってきます。その上でこちらに来ずに、撫でにきなさいと呼びつけます。

「撫でられたいだけ?はあ!?」

1日のうち同じタイミングで呼びつけることはありません。また、用もないのに呼んでるなと思えば、私が行かないからです。ちょっと何事かなと思われるタイミングで呼んでみなければなりません。時には狼の遠吠えのように、時には哀れっぽく、時には赤ん坊のギャン泣きのごとく。

猫と私の攻防は続きます。

『その手にはのらないからねえ!?』

とお互いに思っていますが、毎日お互いにお互いの術中にはまってしまいます。そうです。私は猫と同レベルです。猫じゃらしをすかして喜んでいたら、自分の足を弄ばれてしまいます。全くどうしてくれましょうか。

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