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【木曜日】東と西の薬草園

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ガーデニングに関する短編小説です。Uターン者の山脈遥とIターン者の井中かわずの二人のガーデニング初心者が試行錯誤します。毎回薬草についての雑学を挟みます。
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記事一覧

「雨夏の香り 」第1話 

 梨の花が可憐だった。梨の花は4月初旬に咲く。九州の南の方は、桜が終わり梨の花が咲く頃が…

猫様とごはん
2か月前
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東と西の薬草園 10-④

 いちごが頬を染めはじめ、恋が熟すまでもう一押しだ。進級した子どもたちが、クラスメイトに…

猫様とごはん
4か月前
15

東と西の薬草園 10-③

 4月半ば。  果実町にある山の中腹の"峠道の貸庭"は今花盛りである。  駐車場から見える木…

猫様とごはん
5か月前
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東と西の薬草園 10-②

 ブームというのはどこからやってくるかわからない。  『山鳥』が発売した新商品のフルーツ…

猫様とごはん
5か月前
12

東と西の薬草園 10-①

 雪柳の白い花びらが降ってくる。3月のいい陽気である。こんな日は、すべての罪が洗われる。 …

猫様とごはん
6か月前
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フルーツフレーバーティーを贈ります⑧

*早春のイチゴ* 40歳を数年後に控えて、遥は趣味を増やした。地元に帰り庭仕事をはじめたの…

猫様とごはん
7か月前
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フルーツフレーバーティーを贈ります⑤

*フルーツ茶漬け【短編小説】 年を跨いで初雪が降った場合はなんと表現すべきだろうか。1月以降でなく、昨年の11月から雪が降っていなかった果実町は、年によってはそのまま1年間雪が降らない年もある。 山は白いけれど、山の下は霧しかない。 その霧も午後には晴れる。 遥が子どもだった二十数年前には、霧は午後2時頃まで晴れることはなかった。 山の道も午後になっても凍っていた。 しかし、悲しいことに温暖化の影響か、氷点下5℃を下回る日が少なくなった昨今、標高900メートルの『峠道の貸庭

フルーツフレーバーティーを贈ります ④

アロマティカスの花言葉:「友情」「鎮静」。「鎮静」には、アロマティカスが火傷の治療に使わ…

猫様とごはん
8か月前
28

フルーツフレーバーティーを贈ります③

【金柑の花ことば】 「感謝」。キンカンが民間薬として古くから親しまれてきたことに由来する…

猫様とごはん
8か月前
21

フルーツフレーバーティーを贈ります②

第二話「りんごのチャイと昔の恋」 ※「東と西の薬草園」から派生したおはなしです。 九州南…

猫様とごはん
9か月前
18

フルーツフレーバーティーを贈ります ①

第一話 「柚子ミントティー」 ※「東と西の薬草園」から派生したお話です。 かえる亭は果実…

猫様とごはん
9か月前
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東と西の薬草園 9-④

テーブルを挟んで、三歩の距離で対話する。 近づき過ぎないように、配慮するのが難しい。 この…

猫様とごはん
9か月前
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東と西の薬草園 9-③

晩秋に差し掛かっても、まだまだ暖かい10月下旬。バジリコやミントの生育が衰えず、種子取りと…

猫様とごはん
11か月前
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東と西の薬草園:閑話休題「貸庭の栗仕事」

今年も栗の季節がやってきた。猛暑で紅葉シーズンは12月にずれ込むというのに、栗は律儀に、例年通り実りを見せた。 遥が実家の母からもらった栗は、半分は渋皮まで剥いてあった。もう半分は皮ごと茹でたままだ。 100個は超えるだろう。 かえる亭に持っていけば、蛙が嬉々として栗料理をご馳走してくれる事は分かっていた。 しかし、皮付きのまま持っていくわけにはいかない。ただでさえ料理に庭作業にと手仕事が多いのに、これで栗の皮むきまでさせてしまっては、カエルの手が腱鞘炎になってしまう。栗の