卓球ダブルスの基礎知識

はじめに

東京オリンピックの卓球で新種目として採用された混合ダブルスで,日本の水谷隼・伊藤美誠ペアが金メダルを獲得しました.おめでとうございます!男女ダブルスは2004年のアテネ五輪までは五輪種目でしたが,男女団体が五輪種目に採用されて入れ替わってしまいました.
 混合ダブルスは,世界選手権の種目ではあり,中国選手の本気度が必ずしも高い種目ではないので「メダルを狙いやすい」種目ではあるとされていあので事前から注目はされていました.実際に,2017年世界選手権(デュッセルドルフ)では吉村真晴・石川佳純ペアが優勝しています.その実績があるペアを引っ込めてでも(各国1組だけしか出られない)出した水谷伊藤ペアも強いことは分かっていましたが,ビッグゲームでは未知数でした.実際に金メダルを取ったことで「中国に勝てる種目」として世界から認知され,混合ダブルスに掛ける本気度は上がっていくでしょう.

卓球ダブルスとは

単に2人ペアで卓球をするだけなんですが,卓球のダブルスでは,シングルスと違う重要なルールが3つあります.
①2人が交互に打つ
テニスやバドミントンのようにどちらが打ってもいいわけではありません.コートの広さはシングルスと同じです(そらそうよ).同じところにボールが連続で来た場合,利き手が同じ選手が2人でペアを組むとポジショニングが重なり,長いラリーを続けるのが難しくなります.この事実から,サービスとレシーブが上手い選手のほうが,ラリー戦に強い選手よりダブルス適性があるとされます.
ラリー戦においてポジショニングが重ならない左利きと右利きを組ませるほうが有利と言われています.
②サービスは台の右半分から右半分に打つ
ルール上こうなっています.卓球台の中央の白線は,これを判別するためだけに引いてあります(マジで).シングルスでは,右利きの選手は台のどちらかというと左側からサービスを出す選手が多く,レシーブでも台のやや左側に立つので,いつもと違うパターンになります.一方,左利きの選手はいつもの位置からサービスを出し,いつもの位置からレシーブをできる点では有利です.
③ゲームごと(最終ゲームは5点目のあと)に,コートとボールを打つ相手が代わる
具体例がないと難しいので,ABペアとXYペアの試合を仮定します.ゲーム開始時にトスorじゃんけんを行いABペアがサービスを選び,1ゲーム目はAからサービスを出すとします.レシーブ側は,XかYのどちらかがレシーブをすることを選ぶことができ,Xがレシーブをするとします.サービス権は2点ごとに入れ替わり,A→X→B→Y→A(以下繰り返し)の順でサービスを出すことになります.接戦となり,11-9でゲームが終わった場合,AとXはサービスを出した回数は6回,BとYがサービスを出した回数は4回となります.ここから,以下の戦術が成り立ちます.
・サービスが得意な選手がゲーム最初にサービスを出すほうが有利
・デュースになったときに最初にサービスを出すのはB

2ゲーム目には,コートが入れ替わって,XかYからサービスを出すことになります.この時,Xがサービスを出す場合,レシーブはAになり,Yがサービスを出す場合はレシーブはBになり,組み合わせを変更する必要があります.その結果,1ゲーム目と全く違う展開になることも多いです.特に,「パワーボールを止められない」「変化サービスをレシーブできない」と展開が逆転するケースがあります.

3ゲーム目は,またAかBからサービスを出すことになりますが,Bから出す必要はありません.1ゲーム目と同じ組み合わせにしても構いません.

重要なのは最終ゲーム(7ゲーム目)です.5点をとったタイミングでコートが入れ替わり,2,4,6ゲーム目と同じ組み合わせになります.1,3,5ゲーム目をとり,最終ゲームも前半に5-0とリードしていても,そこから苦手な2,4,6ゲーム目の組み合わせになってしまいます.その影響で逆転劇が起こるケースもあります.(混合ダブルス準々決勝の日本-ドイツの逆転劇の要因の一つもそこにありました.)


以上がルール的なところです.この辺を知っているだけである程度面白く卓球ダブルスを見れると思います.「混合ダブルス終わったあとに書くなよ」と思う人もいると思いますが,五輪の団体戦では1戦目にダブルスが行われます(5ゲームスマッチなので3ゲーム先取です).ダブルスが最初にあるので試合の勢いを左右しやすいところもあり,要注目です.







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