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【卒業制作】「step」を詳しく語る

こんにちは。
桜も咲いて新しい日々がはじまっています。

が!なんとまだ卒制の話をします。
KUA「京おどり」にあわせて、明日から大学構内で選抜展示が始まります。
A1サイズの大パネルになったイラスト、インソール、ソックス、ネイルチップ、ポストカードの実物が展示してあります。
かっこよく展示してくださっているので、ぜひご覧ください。

さて、卒業制作「step」の詳しい話をしていきますがその前に、ご指導くださった先生方、コメントくださった方々、ありがとうございました!また、ほかの方の制作過程を拝見できることは大きな学びの機会でした。
様々な卒制から感じられる熱意は、私の作品をよりソリッドで温かなものにしてくれた、と実感しています。
一人じゃない制作…なんて素敵な世界…
プレゼンでもお披露目会でも、私の作品は人生観的なテーマが根幹を握っていたので「緩やかな楽観性で一歩踏み出す」というテーマと、イラストの意味、プロダクトにした意味の説明に全振りしました。

ここではモチーフとか方法的なこととかについて詳しくお話しします。
ポートフォリオの記事にも書きましたが評価は85。
長所・改善点もまとめます。なので長くなります。ご容赦を。
なにぶん3ヵ月の思考だからね!


「step」

さて、ではまずイラストから

「step」

大枠としては、
右側:植物園=守られている(管理されている)
左上:月と船=未知
左下:未知に対する楽観的な花言葉を持つ花
ひと:座っている→立ち上がる→歩き出す足
これで「守られたところから未知へ歩き出す物語」を表しました。
悩んだのは人の演技。もともとは一人の予定でした。アイデアのもとになったのはデュシャンの『階段を下りる裸体No.2』と米山舞さんの『esc.005』で、「一画面に動作の連続を置けばいーじゃん!」となって2人+足になりました。

アルストロメリアの花の曲線を波に見立てて、花から波にスムーズに移行するようにしています。
また、アルストロメリア(波)の中のニッコウキスゲ(星)を「海の星(聖母マリアの異名、また船旅の目印)」に見立てて、道程を祝福する意味も込めています。

衣装や衣装に取り入れた素材・モチーフは、楽観の「軽やかさ」の表現と近年の流行を取り入れる目的でシースルー素材を多く用いています。ソックスのレース模様はバラと蝶で、優美と愛、軽やかな魂を象徴しています。

また、植物園側にノイズとぼかしを入れてカメラ風に、「未知」側に岡村芳樹さん(抽象画家)や鹿間麻衣さん(日本画)を参考にマチエール調のテクスチャをかけたり線と面を混在させることで、現実世界⇔想像が介在する世界の対比をしています。

制作上で気を付けたこと
とにかく伝わりやすくて見やすいこと!(モチーフが多くて細かいからね!)
そのために
 ・色(色相、明暗、彩度)
 ・情報量
のコントラストなどで調整しました。


色塗りが苦手なので、色選びは慎重にしました。
色相は、個人的に続けている再現調色の"朝焼け色リスト"からと、爽やかかつ湿度を感じる青みの緑を選びました。
明暗と彩度は、主に色の響きあいと、モチーフの前後感の整理と演出のために用いています。たとえば、座っている人物の後ろの植物を暗色にしたのは、ボッティチェリ『プリマヴェーラ』の女神が目立つよう背景が暗くなっていることからアイデアを得ました。
テーマ的に、色が濁らないよう、でもやわらかくすることに気を付けました。

卒制1、1次提出の色ラフ 反射光を意識している。
FGOのanniversaryアニメーションの色彩の影響
コメントいただいて、座っている人が少し左になった。
この時点で左下を花で埋めることは決めているが、めんどくさくて描いてない。

情報量
手前・奥の情報量の差をつける

特に背景は、全部描いていると大変なので、フォーカス合うところを決めて、あとはスポイトしながら全体の印象が崩れないように描きこみました。あとでぼかすとこも、描きこんでからぼかすのと描き込みなしでぼかすのだと仕上がりが変わるのでそれも調整してます。

全体の情報量の調整として、植物園側をカメラ調にして周囲をぼかした分、花側もぼかしをかけて調整しました。でもそうすると全体がカメラになちゃう…ということでマチエールをぼかしの手前に持ってきて、情報量下げつつ特徴を生かすようにしました。

以上…か?
おそらく以上です。
で、これをどう届けるかということを考えた時、絵を描くだけでは足りないと感じ、プロダクトまでを作品として制作しました。

インソールって作れるんだ

インソールを制作物にしていることに驚かれた方が多かったようです。
はじめに見つけたのは靴紐でした。
足に関連しててよさそうだけど、靴紐って足を縛るからテーマじゃないし、イラストから展開しづらい…
インソールは全然思いついてなかった。調べるって大事。
さらに幸いだったのはフェルト製で、素材の柔らかさがテーマにマッチしていたこと。履けば履くほど劣化しますが、それもあなたの足跡と愛していただければと思います。細かい絵柄は印刷がぼやけるのでつぶれてしまう可能性があります、と会社様には何度かこれで大丈夫ですかと連絡をいただいたんですが、きれいに印刷されていておどろきました!感謝申し上げます。

絵柄はイラストを分解して書き足してデザインしなおしています。白い斜め線が、イラストで靴が踏み越えている線とリンクします。
ご自身の靴を履くたび、未知に踏み出しているんだ、という感覚を感じていただけたら幸いです。

透け感・シースルーソックス

さらにイラストとのリンクを強めるため、ソックスも、イラストをもとに柄を追加デザインして制作しました。
イラスト上ではレース+シースルーのソックスなんですが、おそらくオリジナルレースは難しいのと、印刷だからできるグラデーション表現がいいなと思ったので今回はこのシースルーソックスにしました。レースにしたかった心の名残が、立体感を持たせるために配置された影に感じられます。
思ったより伸びます。

気分あがるネイルチップ

プロダクトにしようと思った時、テーマ抜きに一番初めに思いついていたのはネイルでした。勇気が必要な時、米山舞さんの個展で買ったネイルカラー「FREEDOM」「LIVERTY」を足指に仕込んでお守りにしていた私の経験から来ています。
鮮やかですが、グレーの部分やベージュに近いピンクが入っていたりするので意外となじみます。

ネイルチップとポストカード

触って楽しいポストカード

つやつや、ぽこぽこ、楽しいポストカードです。
細かいところ、たぶんつぶれちゃうよって何度も確認をいただきました。お手数おかけしました、、でも箔じゃなくて透明がよかったんです…!
ニス版データも作成しています。

ニス版

横幅がちょうど2Lサイズの写真と同じなので、お好きな写真フレームで飾っていただけます。

振り返り

よかったところ

正直やること多すぎて投げやりな気持ちになったり心折れそうだったんですが、皆さんの作品を見てコメントを見て心を奮い立たせていました。
満足、今の全力だったと言えるほどやりきれてよかったです。
また、今まで「こう考えてるな、感じてるな」という内的な整理が作品になることがほとんどでしたが、今回の作品は「こうしようと思ってるよ」「こういうのいいんじゃない?」という提案までできたのが大きいと思います。
成長しました!

改善点(100点取るならどうすればよかったか?)

提出物、丁寧にやろう!初めて見る人もわかるように伝えよう!
多分これが大きい要因の一つのような気がしています。
テーマ、目的、ターゲット、それらの関連、そこに自分の強みをどう生かすのか、制作に必要な情報、先行事例、参考作品…
いま思うともっとできたな…
そんなわけで卒制1-1の提出物を見直すと「何か…絵を描くんだな…」としかわからない出来です。というのも、「緩やかな楽観性で踏み出す」というテーマが言葉として明確になったのは卒制2になってから。テーマの主軸は決まっていましたが、まだ私の中では形而上のものだったのです。
哲学的なものをテーマにするときどうしたらいいですか、とお披露目会で質問をいただいたのですが、自分の中でそれが哲学的なものでなくなるくらいかみ砕いて、初めて話す人にもわかりやすく短く説明できるまで確かな言葉を探すことが前提として重要な気がします。

また、イラストについて、卒業式後にシルバー先生にアドバイスをいただきました。(お時間ない中ありがとうございました…!)
一歩踏み出す、のチカラの表現として、
・踏み込む靴のシワ
・蹴りだしたときの土埃
また、もしかしたら月のサイズがもっと大きいか小さいかしてもいいかも、とアドバイスいただきました。
シワと土埃!たしかに!!
月と植物園の関係値は悩んだところだったのでもう少し明確にできていたらよかったなと思いました。

おわりに(展示のお知らせ)

京おどり 選抜展示(KUA大学構内)

京おどり 展示風景

4/6(土)~4/21(日)
記事冒頭でもお話ししましたが、A1の大パネルに印刷されたイラストと、インソール、ソックス、ネイルチップ、ポストカードをご覧いただけます。

デザインフェスタ Vol.59

uv白版(制作中)

5月19日(日) C-289
プロダクトに加え、FLAT LABO様に印刷をお願いして、マチエール的な凹凸のある印刷で制作中です。上のモノクロ画像は白インクで盛り上げる部分の版の一部です。くじけそうです。がんばります。
渾身の作になると思います。既存作品も含めてミニ個展的に展示予定です。
ぜひご覧ください。


すごい、ここまで読んでくださってありがとうございました!4000字近い…!
なにか助けになれていたら幸いです。
今後も精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

Yulog

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