見出し画像

『攻めてる教区』高岡のキーマンに聞く

                           聞き手 松浦優教
                           話し手 菊池正見さん

松浦
本日はよろしくお願いいたします。早速ですが菊池さんは高岡教区の駐在教導になられてもう長いのですか?

菊池
駐在教導になってからは4年目です。年齢も33歳になりました。私は元々高岡教務所のアルバイトの嘱託職員を3年ほど勤めておりました。それで前任の方が辞められたときに声をかけていただいて、現職に至ったというわけです。そのタイミングで嘱託職員から正規職員になりました。

松浦
なるほど、都合7年目なのですね。菊池さんは元々高岡教区の寺族の方なのですか?昔から教区との縁は深かったのですか?

菊池
そうです。高岡出身の寺族です。とは言っても大学も宗門関係の大学ではないですし、教務所に勤めるようになって初めて教区活動に関わり出したというのが実情です。

松浦
高岡教区は非常に積極的な教化活動を展開しているように見受けられます。実は私が今回インタビューを申し込んだのも、そこが気になったからなのです。積極的な教化活動の根底ある理念は何なのですか?

菊池
そのことなのですが、高岡は2014年度に教化体制を小委員会制から教化本部制に枠組みそのものを変更しました。これは元々は北海道教区が採用し始めた体制なのですが、大きな特徴は小委員会制ですと、TOPの教化委員長が教務所長なので5年ほどで人事異動があるのに対して、教区人をTOPに据える教化本部制ですと人事異動の影響が小さくなります。その結果教化活動の継続性が維持しやすくなります。長期視点での腰を据えた活動がしやすくなるのですね。その成果が徐々に花開きつつあるのではないかと思っています。

松浦
ということは6年前から教化本部長は変わっておられないのですか?

菊池
変わっていないです。太田浩史教化本部長体制になって7年目に差し掛かろうとしています。

スクリーンショット 2020-11-16 16.50.08

  (インタビュー中の様子。このインタビューはZOOMを使って行われました)

松浦
菊池さんは6年間太田さんと活動を共にされておられるとのことですが、太田さんの活動理念はなんだと思いますか?

菊池
太田さんご自身がよく仰っているのですが「土徳」ということです。地域の持っている力を大事にするということですね。というのも北陸という土地は地域コミュニティの力が非常に強くて、門徒さんの方が教化活動の力を持っておられる、と仰っておられます。昔でいう「御講」のような集まりがその典型ですね。往年の御講では、住職が参加しようとしたら、むしろ邪魔者扱いされたことがあったくらいだそうです。それぐらい門徒さん中心の活動があったということです。ですので坊さんが前に出るのではなく、門徒さんの力を信じてみてはどうか、というのが太田さんの理念の根底にあるような気がしています。

松浦
その土徳の力はそのまま僧侶にも伝わって、教化活動のエネルギーになっているのでしょうか?

菊池
ところがそれがそうでもなくて。実は昔は高岡教区はそれほど教化活動に積極的ではありませんでした。教区の僧侶達は高岡教務所が主導している活動にお手伝いに来ている、というような感覚ですね。積極的な参加、主体性はあまりありませんでした。正直その空気が未だに抜け切れずに残っています。

松浦
とはおっしゃるのですが、私が外から見る限りは教化本部制の影響もあってか、積極的な教化活動の形は出来つつあるように見えるのですが。

菊池
確かにその影響はあると思います。それまでは事業計画を立てるにしても教務所に「これやってもいいですか?」と聞くような感じだったのが「こういうことをやりたいんだ!」という風に変わってきています。自分たちが考えたことをやっていいんだ、という風潮が出来つつあります。

松浦
6年間の歩みで潮目が変わったと感じたエピソードはありますか?

菊池
研修会を企画している研修部門という部署があるのですが、以前はチラシを発送して「はい、告知おしまい」だったのが、各人が人を誘って連れてくるようになってきました。ここ3年くらいのことですが、非常に良い方に潮目が変わってきているように思います。

松浦
ネット展開を見据えた研修が充実していますが、教化委員のネットリテラシー、ネットスキルは高いのですか?そのような人材を揃えているのですか?

菊池
全くないと言っても過言ではないです(笑)教化委員は70人近くいるのですがSNSを適切に使えたり、YouTubeなどの動画配信についてのネットスキルを持っている人は二、三人ほどのような気がします。区分上、情報部門という部署がネット関係担当なのですが、まだまだそこにも専門家といえるような人材はいない状態です。とはいえこれから益々重要性が増していく部門なのは間違いないので、力を入れているところではあります。

松浦
具体的にはどのような?

菊池
各組から2名通信員を出していただいているのですが、その方達に高岡教区のHPに教化活動の記事を執筆していただいています。さらにスキルを身につけていただくために、通信講習会として様々な研修会を実施しています。
https://takaokakyouku.net/archives/5492
(上は11月17日にUPされた協議会の活動レポート)


松浦
武田先生のYouTube講座を拝見したのですが、企画されたのは情報部門ですか?

菊池
そうです。コロナ禍による社会情勢の変動を学ぶ意味合いも含めて、YouTubeそのものの枠組みの理解と実際の活動を伺うために企画されました。

https://www.youtube.com/watch?v=pP46-wjqoxE

(上は高岡教区で開かれた、武田先生のYouTube講座)

松浦
講習会の参加者は何名ほどでしたか?

菊池
教務所の会場に5人。インターネットを通じてのWEB参加が20人ほどです。すぐに「YouTubeを始める人が大勢生まれた!」ということはないのですが、YouTubeが話題に上がることは非常に多くなりました。種は確実に撒かれた、と感じています。あとはいかに発芽させるかというところですね。

松浦
高岡教区はネット事業もさることながら、若い世代への教化活動が非常に活発です。これは太田本部長の方針なのですか?

菊池
それは教化本部制に関係なく昔からの高岡教区の伝統ですね。毎年夏に別院で「子どもの集い」という一泊お泊まり会を企画しているのですが、スタッフだけで20名ほどの参加があります。子供達は30名ほど来てるのかなぁ。このお泊まり会が若手僧侶の教区教化活動の導入になって、ここから教区活動に参加されていくような流れが出来ています。

画像2


菊池
ところで実は私、本山が主導している寺院活性化研修というものに参加しまして、それを受けてから色々と積極的に動くようになったんですよ。

松浦
と言いますと?

菊池
その研修のおかげでターゲット層を絞るとか、そこに届くアプローチを考える、等々を強く意識するようになりました。これに参加した人は大体みんな活動的になっているように思います。ああいった視点を得られる研修は大切だと思うので、今後も意識的に取り組んでいきたいと考えています。そういえば以前「お客さんに情報が届いていないということはやっていないのと一緒だ」と聞いたことがあります。令和の現代でいうとネット検索で引っかからないものはやってないのと一緒、ということになりますかね。ターゲットへの情報発信は非常に大切だと感じています。

https://jodo-shinshu.info/shienshitu/

(本山の寺院活性化研修の案内ページ)

松浦
教化事業のキーマンがその意識を持っておられるというのは大きいですよね。太田本部長もそのような認識をお持ちなのですか?

菊池
その通りです。太田さんはさらに独自の視点をお持ちで、特にアナログに気を配っておられると思います。印刷して手渡し、というような顔を合わせる距離感の近い活動にも重きを置いておられる方です。それが具現化されたのが「よんでみらーれ」の復活ですね。ネットももちろんだけどアナログな取っ掛かりもあるという。また太田さんは地域の医療関係者との連携もとっておられて、高齢者世帯へのアプローチを強化しようとされています。地域共生化社会への取り組みですね。医療関係者は患者さんが死ぬ直前になると手が出せないわけですよ。そこから先はまさに宗教の領分です。そこの連携を密にしようと取り組まれています。
https://www.hokkoku.co.jp/subpage/T20200519204.htm 

(「よんでみらーれ」の復活は地元の新聞にも取り上げられました)

松浦
いわゆるクオリティ・オブ・ライフの視点ですか?

菊池
その通りです。実は高岡教区のある富山県南砺市は高齢女性の自殺率が全国平均の3倍なのです。70代、80代の女性自殺率が群を抜いて高いのです。そういう事実もあるので積極的に取り組んでおられます。

https://www.city.nanto.toyama.jp/cms-sypher/open_imgs/info/0000067745.pdf
(上は南砺市のHPで公表されている自殺に関する資料)

松浦
1時間近くお話を伺っていて、菊池さんから教化活動に対する熱意、モチベーションをひしひしと感じるのですが、そのモチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか?

菊池
僕、そもそも面白いものが好きなんです。だから面白くないなら変えたい、って思っちゃうんです。大学の専攻が建築だったんですけど、そこでデザインもかじってまして。デザインやアートの発想って面白いものを探すってことが大きくて。元々そういう性分なんでしょうね。それが教化活動へのモチベーションに転嫁されているのかもしれないですね。

画像3

松浦
高岡教区の今後の展望があればお聞かせください

菊池
教化本部制度の理念そのものなんですけど、「高岡教区の教区人が主体的に携わっていくこと」この意識はまだまだ芽生え始めたところです。この理念を高めていけるような事業であったり、システムを作ったりしていきたいです。特に人というものはすぐには変わらないので、教化活動に取り組んでいけるシステムを構築していくことが肝要かと思っています。



聞き手松浦の編集後記
このインタビューではZOOMを利用してお話を伺ったのですが、画面から伝わってきたのは菊池さんの「元気」と「明るさ」。人と接するのが仕事の教化活動にとって、何物にも変えがたい資質をお持ちの方だなぁ、と感じました。また令和の社会情勢にもアンテナを張っておられて、その変容に応じた活動を模索される姿勢には大いに触発されました。コロナが落ち着いたら、ぜひビールを交えてお話をしたいと思った次第です。