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睡眠の子どもへの影響

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は「睡眠の子どもへの影響」というテーマでお話ししたいと思います。

あなたは子どもの頃、眠ることに困ったことはありましたか?例えば僕が小学生の頃は、授業が終わったら小学校の校庭でサッカーをして、腹ペコになりながら家に帰って、夕食を食べて、そしてお風呂から出た頃には、重たいまぶたをこするくらい眠くなっていたような気がします。そんな状態だったので、身体は疲れて、すぐに眠ってしまうような子どもだったと思います。
そんな風に身体の疲れをある程度感じることは、睡眠にとってとても大切なことですね。
それがよくわかるエピソードがあります。例えば、入院です。
病院に入院する患者さんの中には、不眠を訴える方も少なくありません。それは何でだと思いますか?それは、入院すると運動量が減って、身体が疲れないので眠気が生じないからです。
普段であれば、階段を登ったり、通勤・通学で長い距離を歩いて体力を消耗していた人も、入院するとその活動量が極端に減ります。階段を登ることもなくなり、長い距離を歩かずに、ベッドの上で横になっていればいい生活を送るので疲れにくくなるんですね。
だから、体力を使うことは、良質な睡眠をとるうえで大切なことなんですね。
小児科医をしていると、この睡眠がどれだけ子どもたちにとって大切かを痛感します。子どもたちの中には日中イライライしたり落ち着かない子どももいます。そんな子どもの中には、しっかり睡眠をとっていないためにそんな風になっている子もいるものです。
つまり、睡眠を十分にとっていないから、日中に落ち着いて行動できない状態になっているということです。
大人でも同様ですね。というよりも、大人になればなるほど、睡眠の活動への影響を感じやすくなるかもしれません。しっかり睡眠をとれていないと、翌日は身体が重く感じられて、思考力も鈍る。若い時にはあまり感じたことはなかったけれど、歳をとるにつれて、そんなことを感じるようになった人は少なくないと思います。
僕も研修医の頃は夜に当直をやっても、翌日もまだまだ働ける活力がありました。今は医師もしっかり休みましょうというルール作りがされるようになりまたけど、昔は当直明けも働くことが普通だったんですね。でも今昔のように当直をしたら、翌日はヘトヘトになってしまいます。
そんな風に、若者あるいは子どもたちは身体がピンピンしているので、睡眠が自分たちの行動にどれだけ影響を与えているのかなんて、あまり考えたこともない人が多いでしょう。でも、そんな若者や子どもたちにだって、確実に睡眠の影響が出ているものです。睡眠不足だからこそ、イライラしやすかったり、行動のエラーを起こしやすくなっていたりするものです。
もったいないと思うのは、そういう影響を知らないで、睡眠をしっかりとっていない子が「イライラしちゃう」とか「物事に集中できない」なんて自分を責めてしまうケースです。本人の性格とか能力とは違って、睡眠の質が悪いからこそ、本来のその子らしさを発揮できていない。だけれど、そのことを理解せずに自分のせいにしてしまう。そんなことが、実際には多いものです。
それは、うつ状態の時に物事をスムーズに記憶できない状況に似ているかもしれません。人は、気分が落ち込んでうつ状態の時には、暗記の勉強をしてもその物事がうまく暗記されないものです。そのカラクリを理解していないと、うつ状態の人がなかなか思うように物事を覚えられないことを、「自分は勉強ができないんだ」「この人は覚えることができない人なんだ」なんて自分や相手を責めてしまうことにも繋がります。暗記できない原因がうつ状態にあっても、その人の能力が足りていないと勘違いしてしまうということです。
睡眠に話を戻しますが、睡眠の質を高めることが、日常生活の生産性を高める。それは、子どもであろうと、大人であろうと、同じです。その睡眠の価値を理解すれば、子どもへの接し方が少し変わるかもしれません。
子どもが落ち着いて行動できない様子を見て、その子を叱るというよりも、その子の睡眠を改善させてみる。そんな工夫もできるようになると、子どもの心を理解した、質の高い子育てができるかもしれません。
今日は「睡眠の子どもへの影響」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

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