小児科医が下積み時代を振り返り思うこと
こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は「小児科医が下積み時代を振り返り思うこと」というテーマで短くお話ししたいと思います。
下積み時代と言うと、どんなイメージがありますか?僕は自分が研修医になりたての頃を振り返ると、よく頑張ったなあなんて思います。でも、その当時は「大変だなあ」というよりも、「将来人生がどんな風に発展していくかな」なんて楽しみに思っていたように思います。
つまり、自分の夢だったり目標に向かって、ワクワクしながら経験を積み重ねる日々だったんじゃないか、ということです。それは一つの大切な過程であり、人生を楽しむための土台と言えるかもしれません。
でも、おそらく好奇心を保ちながら下積み時代を経験できたのは、周りの支えがあったからこそです。それは、妻、友人や上司などの支えですね。疲れている時には、ちょっと声をかけてもらったり、差し入れをもらったり、そうやって周囲の人に関わってもらったからこそ、辛抱強く耐えられたんだろうと思います。若い頃にはわかりませんが、自分が部下を指導する立場になって、ようやく上司の気持ちがわかって、上司に感謝できるようになるわけですね。
そして、子育てを考えると、子どもの時期もある意味人生の下積み時代と言えるかもしれません。大人の時期に経験するであろう物事の練習をするわけです。コミュニケーションを重ねたり、人生を発展させるための知識を得たり、そういう練習です。
でも、そんな子どもの時期も、やっぱり誰かが支えてくれるからこそ、乗り越えらるものです。つまり、親だったり、先生だったり、そういった周囲の大人が安心・安全な環境を提供するからこそ、新しい物事にチャレンジしながら成長できる、というものです。
そんな下積み時代ですが、今医師として働くようになると、下積み時代を生きている人が持っていたら得だろうなと思う能力があります。コミュニケーション能力は当たり前なんですが、それ以外の能力です。それは、人のパーソナリティを見極める能力です。
パーソナリティというのは、人格のことですが、それは単なる個性とは違います。人と接した時に現れる個性のことをパーソナリティ(人格)と表現します。つまり、パーソナリティを見極めるとは、社会で人と接する中で現れる個性を見極められるかどうか、ということです。それは、人生で混乱しないために欠かせない能力だろうと思っています。
でも一方で、そのパーソナリティを見極める能力を、下積み時代を経験している人が持ち合わせていることはあまりないだろうとも思います。だからこそ、子どもは毒親には振り回されるでしょうし、新社会人は困った上司の言うことを信じて業績が伸びないこともあるものです。
だからこそ、下積み時代には周りの人が守ってあげる必要があります。子ども時代であれば、周りの親や先生、あらゆる大人が子どもを守ります。子どもを傷つけるパーソナリティ所有者がいれば、いざという時は児童相談所や警察の力を借りることもあるかもしれません。新社会人であれば、危ないパーソナリティを持つ顧客から守られるべきでしょう。
小児科医としてどうしているかというと、やっぱり目の前の相手のパーソナリティを意識します。相手のパーソナリティを意識するからこそ、相手の態度に左右されずに自分の心を保てます。
時々友人から、「よく小児科医なんて続けていられるね」と冗談で言われますが、それは相手のパーソナリティを判断しながら自分のマインドをコントロールする癖があるからだろうとも思います。
下積み時代は、そんな人のパーソナリティなんて気にしている余裕はないかもしれません。だからこそ、ぜひ周りの人が守ってあげてください。
今日は「小児科医が下積み時代を振り返り思うこと」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
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