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あなたらしいという言葉の力

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、あなたらしいという言葉の力についてお話ししたいと思います。

前回の放送で、自分というものが、自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分で構成されることに触れました。人はつながる生き物です。あらゆる人や物とつながりながら、外の世界から見た自分をつくりあげていきます。そして、その2つの自分のうち自分に強く影響を与えるものは、「外の世界から見た自分」ということにも触れました。

自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分、という2つの自分がいる。実はそのバランスがとても大切です。人が自分という存在に自信をもち人生を有意義に生き抜くために欠かせないのが、この2つの自分のバランスです。つまり、自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分が、同じように感じられていることがとても大切なのです。言い換えると、外の世界から見た自分に対しても、等身大の自分を感じられているということがとても大切です。

では、この2つの自分にギャップがあると、どうなるでしょう。例えば、世の中には神経性やせ症という病気があります。拒食症とも言ったりします。本来の自分の体のイメージと、他の人から見た自分の体のイメージが大きく違ってしまう。だから、どんどん痩せたいという気持ちが強くなり、極度に痩せようとしてしまう病気です。

他の例を考えてみましょう。例えば、自己肯定感が低い人です。周囲から見ると物事をうまく達成できていても、その人本人は満足がいかない。もっとできなければダメだ。こんな自分じゃダメだ。そんな風に自分を責めながら、人生の幸福度も上がっていかない。そんな人がいます。そういった人は大抵、周りが感じている以上の辛い気持ちを抱いているものです。そうすると、生活への不適応を生じるようになります。不登校になったり、会社に行けなくなったり。

いずれも、自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分、に大きなギャップがあるからこそ生じる問題です。

では、そんなギャップを埋めるには、どうしたらいいでしょうか?このギャップを埋めるために、大切な一つの言葉があります。何だと思いますか?それは、「あなたらしい」という言葉です。周りの人から「あなたらしい」と言われることで、周りの人が今の自分を感じてくれていることがわかります。しかも、今の自分をあるがままに受け入れてくれていることがわかるのです。今の自分以上に背伸びをしなくてもいい。今の自分を認めてくれている。そういったことが伝わる言葉。それが、「あなたらしい」という言葉です。

このように、自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分のギャップを埋めてあげる作業が、子どもの心を育てるうえで欠かせません。そして、このギャップを埋めてあげることが、特に大切な子どもたちがいます。それは、発達障がいや知的障がいがあるために、外の世界を認識することが少し苦手な子どもたちです。外の世界を認識するペースがゆっくりだったり、通常とは少し違う角度からその世界を捉えてしまうことがあるからです。こういった子どもたちが感じている「外の世界から見た自分」は、本来のその子とは大きく違うものであることが少なくありません。だからこそ、2つの自分のギャップが大きくなって、不安が大きくなってしまったり、自信がもてなくなることも少なくないのです。

自分の中から見た自分と、外の世界から見た自分のギャップを埋めてあげること。子どもと接するときにぜひ考えてみてください。

今回はここまでです。

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