小児科医が解説する爪噛み
こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は「小児科医が解説する爪噛み」というテーマで短くお話ししたいと思います。
あなたの周りには爪を噛んでいる人はいますか?あるいは、あなたは自分の爪を噛んだりしたことはありますか?爪って、別に美味しくはないですよね。でも、爪を噛む子どもって多いんです。どうしてなんでしょう?子どものその行動にはどんな意味があるんでしょうか?
爪噛みは、5〜6歳の学校に入る前の子どもでよく見ることがあります。その時期には、およそ3割くらいの子どもに爪噛みが見られるとされています。5〜6歳の頃をピークに、その後成長とともに爪噛みは減っていくのです。
そんな爪噛みを解説する中で、あなたに理解していただきたいことがあります。それは、子どもの行動の裏には意味がある、ということです。爪噛みの裏にも、その子なりの何か意味がある。そんな風に思ってください。ただやめさせればいいというものでもない、ということです。
ですから、目の前の子どもの行動を見て、「この行動の裏には、どんな心が隠れているんだろう」、そんな風に捉える癖をつけていただきながら、その心に寄り添うことで、子どもの行動は解決していきます。そのことを理解していただければ、小児科医として嬉しいです。
子どもの行動の一つひとつには意味がある。何気ない行動の裏には、子どもの心が隠されている。もちろん子どもは、爪を噛んだって、指をしゃぶったって、別に何の意識もしていないと思います。でも、その行動を起こす心があるものです。
それは、大人も同じです。初対面の人に挨拶をする前に、やたらと自分の服を触る人もいれば、自分の髪を何度も何度も触る方もいます。その背景には、その人の心があります。緊張という心が、その人の行動を生み出します。
その人自身は意識していないでしょうが、僕はそういった仕草を見て、その人の心を察します。そうすることで、目の前のその人の姿に加えて、見えないその人の心の世界が見えるようになります。そういうものです。
そんなことを理解していただいた上で、まず知っていただきたいのは、「目の前の子どもの行動は一過性である」ということです。
あたかも子どもの爪噛みがずっと続くかのように思われるかもしれませんが、たいてい一過性に終わります。もちろん、出たり引っ込んだりを繰り返すかもしれません。1〜2年はかかるかもしれません。でも、少しずつ消えていくことが多いものです。
あるいは、子どものその行動に対して、親であるあなたは「今」は気になるかもしれませんが、その子が成長するにつれて、どうでもいい事柄として捉えられるようになるかもしれません。子どもが幼い頃には大問題かのように捉えられる物事も、子どもの成長に伴って親として色々な経験を重ねると、いつの間にかちっぽけな事柄に変わっていきます。そういうものです。
そして、二つ目です。子どもの爪噛みは、指摘して治すものではなく、その子の心に寄り添いながら見守るものです。「爪かんじゃダメ!」なんて注意すると、爪噛みの行動がエスカレートすることがあります。ですから、爪噛みを注意するよりも、その裏にある子どもの心に寄り添います。
新しい幼稚園の環境で不安があるのかもしれない。お遊戯会の練習で緊張することがあるのかもしれない。そんな子どもの心を想像しながら、寄り添います。子どもがお家に帰ってきたら、ギュッと抱きしめてあげる。お家に帰るときには、手を繋いで、トトロの歌でも歌って、楽しく帰ってあげる。そんな風に、爪噛みの裏にある子どもの心に寄り添う。そのことの方が、より爪噛みの対処としては大切です。
爪噛みは、大人の都合で改善させるものではなく、子どもの都合を考えて対応するものなのです。
今日は「小児科医が解説する爪噛み」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太
小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて:https://yukurite.jp/)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
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