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中学生のときに通っていた塾の先生からの手紙

中学生のときに通っていた塾でお世話になった、数学の先生をネットで見つけた。

先生のフルネームに、移住先として記憶していた県名を追加してググったところ、地域新聞の記事がヒットしたのである。公立高校の校長先生としてインタビューに答えられていた。写真つきの記事で、髪の毛がさっぱりしている以外、記憶の中の先生の笑顔そのままだった。グッときた。

グッときた勢いでハガキを書いた。高校の住所と名前、私の住所と名前を出来る限り小さく書きつけ、30年前に塾でお世話になっていたこと、家族と穏やかに暮らしていること、どうやって先生を見つけたかというと、まで書いてスペースがなくなったので、つづく!とシメて投函した。

つづく!と書いたものの、突然のお手紙で…覚えていらっしゃいますでしょうか…といった大人の文章からは程遠い手紙であったが失礼だったか?と心配したり、つづきのつづきも必至であろうがキモいか?と心配したりで、二通目は躊躇していた。まあ、ググったことやら、ちょっとした思い出やら、書いたけどね。

二通目を投函したその日の夕方、先生からの返信が届いた。

美しい文字だった。すっかり忘れていたが、先生は字の美しい人だった。中学卒業後も何度か手紙をやり取りしたことを思い出した。文章も美しかった。言葉に含みや裏表がないのだ。びっくりしました、よくここが分かりましたね、こちらは元気にやっています…それだけの文章に、グッとくる。続きは、また…という落ち着いたシメにもグッとくるわ。

裏には、高校の屋上からの眺めがプリントされていた。空は青のグラデーション、濃いところと同じ色の海、少しの家。なにこれ完璧。その完璧なハガキを、台所の壁に貼り付けた。すぐ裏返して読めるように、上の部分だけマステで。

三通目は、まだ書いていない。私には素敵な手紙を書く才能はなさそうだが、素敵な手紙をもらう才能がある。台所に何通か手紙が貼ってあるのが、その証拠だ。

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