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子供のスイミングの先生から頂いたお手紙

まず書き損じがないんですよね、一文字も。便箋2枚に及ぶ長文のお手紙なのに。私ならすぐにくちゃくちゃと間違いを黒で塗りつぶして、目と触覚を足して毛虫にしちゃう。下書きして下さったのかしら…

子供2人が3年ほどお世話になったスイミングのコーチが、大学卒業と就職を期に辞められる際に下さったお手紙。頂いてすぐ車の中で開封したものの、涙で前が見えなくなってしまう可能性の高い危険物だったので、心も手紙も閉じてすぐに仕舞った。

3年前、下の子がずっと習いたがっていたスイミングに、高学年になっても蹴伸びが出来ない上の子をくっつけて通わせた。始めて3ヶ月、コーチが苦手、お友達が苦手、などの理由で、下の子は行けなくなってしまった。上の子も「なんか、分かる。自分は平気だけど」と擁護。

下の子はその頃、学校にも苦手なお友達がおり、これまた度々休んでいた。クラスでもずっと一緒で、学校の行き帰りも付いてくるので、だいぶ参っていた。私も送り迎えしたり、上の子もそれとなく一緒になるように帰ったりして出した結論は「あれは、キツいわ」だった。笑。

そんなこんな事情を話してスイミングを辞めようとしたところ、下の子が抵抗ないコーチとのプライベートレッスンはどうかと社員の方に提案して頂いた。そこで下の子がすぐにご指名したのが冒頭のお手紙を下さったNコーチだったのだ。

当時、まだコーチになってから日が浅かったため、プライベートレッスンの枠は持っていなかったそうだ。特別の特別に、通常のスイミングもお休みさせてもらい、Nコーチによる、生徒2人だけの、のびのびしたレッスンが始まった。

Nコーチのどんなところが好きなのかは、何度か聞いて知っていた。絶対に大きな声で叱らないところ。こらー!ではなく、おーい、なのだそう。それから、子供たちの前でも、大人の前でも、話し方が変わらないところ。

レッスンが終わると嬉しそうに「楽しかった!」と戻ってくる子供らを見ると、泳ぎ方を習う以上のものを頂いているようで有難いなと思ったものでした。

そのうち、苦手なコーチがいなくなったり、進級したりで、2人は通常のレッスンに戻った。他のお母さんや子供たちの「Nコーチのプライベートレッスン取れた!」「Nコーチ優しいから大好きだもんねー」なんて会話もよく聞こえた。そうなんです、うちの子がご指名したくらいですから、とイミフな同意をこっそりかましたこともあった。

安全運転で帰宅してから台所でゆっくり手紙を読んだ。「レッスンにも、子供達との接し方にも自信がつくようになったきっかけは、2人のプライベートレッスンであり」と書いて下さっていた。

そういえばレッスンのあとに「2人に会えるのが癒しなんです」と仰っていたことがあったな。あれ、本当だったんだ。

大勢の子供たちが帰ったあとの、静かなプライベートレッスンでは、他のコーチとも算数の問題を出し合ったり、楽しそうに過ごしていた。「2人が楽しそうに笑っている姿や、とてもきれいに泳いでいる姿を見て、プールを続けてくれてよかったなと感じます」って、ほんと、Nコーチ始め、皆さんのおかげでしたのよ。

この手紙、台所に貼って、1日に何度も読み返しています。場所は、炊飯器の上なので、湯気が当たらないように、少し気を遣う。

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