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「第30話」自称・世界を股にかけるジャズピアニストの一日

エピソード4(ニューヨーク・短期大学時代)第30話

実は著者がゆうこりん波乱万丈留学日記を書くようになったのは2013年にニューヨークに留学した時からである。フェイスブックで時折近況を報告していたのだが、これはとても反響があった。しかし、留学生活は過酷なもので精神的にも病んでいたので(特にニューヨーク短期大学時代)数カ月に一回書く程度だった。今日は短期大学に通っていた時の著者のルーティーンを紹介したいと思う。なんとフェイスブックで当時の日記を見つけた。読み返したが、なかなか上手に書けていると我ながら感心した。今回は二学期目の私の動向で(ESL98を取っていた時の話)多少時系列が狂うが、一学期目も基本的に同じ事をしていたと思って読んでほしい。以下は2014年3月2日のフェイスブックの投稿である。

~~フェイスブックのみんなが待ちわびた波乱万丈ゆうこちゃん留学日記again!!!~

【序章】
彼が19歳の時にしていたコンビニのバイト先に、毎朝決まって8時少し前に来店し、オロナミンCとアンドーナツとツナマヨおにぎりと東スポを買っていくおじさんがいた。「なんで、いつも同じものしか買わないんだろう・・・気持ち悪い!!変態!痴漢!近寄らないで(; ・`д・´)」と思っていた彼は、まさか彼自身が7年後そのような日々のルーティーンを持つ人間になるとは思っていもいなかったのである。そう彼の名前は二見勇気。今ニューヨークのジャズ界の第三線位で活躍しているといわれる期待の新星だ!!これはピアニスト二見勇気の激動の一日にフェイスブック取材班が密着したリアルドキュメンタリーである。

【【【【【【【【【【【情熱大陸】】】】】】】】】】】】】】】
タタ、タ~ラッター、タタタッタラタラ~
(この番組はご覧のスポンサーの提供で・・・・)

【6:30am】
国際的なピアニストの朝は早い。彼は毎朝、目覚めと共にパソコンのスイッチを入れる。アダルトサイトの見過ぎか、起動してからの立ち上がりが遅い。謎のウイルスバスターソフトがデスクトップ上にいくつもチラつく。そんな事はお構いなしに天気予報をチェックする。いつものようにニューヨークタイムズに目を通すが、一行目で挫折する彼。
「分からない単語が今日は多すぎます・・・・多分15年後には読めるようになっているでしょう・・・・」
英語は苦手のようだ。

【7:00am】
家の近くのチャイニーズベイカリーでライスヌードル(1.5ドル)とメロンパン(1ドル)を買う。最近彼は生活に慣れて来たのか、安くて腹持ちの良い物を売っている店を次々と発掘している。
「やはりプロフェッショナルは常にコストパフォーマンスを意識しないといけません。私は毎日食費を5ドル以内に収めるようにしていますからね。これなら今日はあと2.5ドルで昼と夜を持たせられますよ。」

【7:30am】
学校につく。学校のメインビルディングの2階の広いトイレで糞をしながらトフルの必修英単語ブックを読む。とにかくスキマ時間を利用して貪欲に勉強しているその姿は流石は国際派ピアニストだ。

【8:00 am】
今学期、彼のライティングの教授はかなりアクセントの強いイギリス英語を話すスーザン先生。50歳くらいで、いつもフルーツを授業の前に食べている健康志向の強い細身の女性だ。スカーフを巻いて、すらりとして格好良い。江角マキコのように女性受けするタイプだ。しかし良く見ると元阪神の岡田監督のような捨てられた犬のような顔をしているのも否めない。
授業が始まると彼は中央の前から二番目の席に座った。いつも決まってここに座るようだ。
「ここがベストポイントなんです。もうすぐエルビアちゃんが来ますよ。ほらね。」
彼がそういうと、南米の細身で小柄の可愛い女の子が教室に入ってきた。2,3分の遅刻癖があるようだ。彼は他人の行動時間も正確に把握している。これがプロと言われる所以か・・・
彼女が座る席はいつも決まって彼の斜め左。彼にとって美しい体とバストのラインを眺めるにはふさわし位置のようだ。
「目の保養です。やはり、タイトなスケジュールを熟すプロフェッショナルだからこそ、毎日の生活に適度な弛緩が必要ですね。」
日々の退屈な授業の中にも、楽しみを生み出すプロフェッショナル。
ここに我々が見習うべきプロの流儀があった。

【12:45pm】
「エルビアちゃんを眺めていれば4時間の授業なんてあっという間です。さあ、昼食にしましょう。」
彼はそう言うと、キャンパスの外にあるセブンイレブンへと向かった。一体2.5ドルでどう乗り切るのだろうか?
「2.5ドルもあれば今日は贅沢できますよ。」
彼はそう言うと1ドルのホットドックにトッピングの玉ねぎとトマトを山盛りにかけて、そしてデザートに1ドル40セントのコーヒーロールを購入。お腹を満たした後に向かう先は、Bビルディングの廊下にあるベンチだ。大学の施設の隅々を熟知している彼だからこそ成し得る技だ。
「ここは比較的静かで、暗いし、寝心地が良いんです。昔は寝ないで勉強しているのが格好良いと思っていました。若かったんですね。今は効率を重視しているのでね。睡眠は大事ですよ。食べてすぐ寝たらメタボになる?いいですか、何かを得るには何かを犠牲にしなければいけません!!私は確かに今ここで寝ることによって、多くの脂肪を手にするかもしれませんが、今日この後の充実した一日も手にするのです。」
彼の言葉には重みがある。彼はそういうと廊下のベンチに30分ほど横になった。

【1:45pm】
彼が次に向かったのは、Eビルディングの音楽棟だ。ここで彼は毎日夕方まで、3時間程ピアノを練習する。

【5:00pm】
練習を終えた彼が次に向かうのはマンハッタンにある謎の英語学校だ。学校に向かう電車の中での勉強もかかせない。
「スペイン人は毎日その日が人生最後の日だと思って過ごすそうです。私もその考えで生きているものでね。悔いは残したくないんですよ。」
彼がスペイン人から学んだ哲学は、彼の生活に大きな影響を及ぼしているようだ。多くの哲学を日々の生活に生かすその姿勢こそが、彼をここまでのプロに伸し上げたのかもしれない。

【6:30pm】
英語学校の謎の授業が始まる。この日はめずらしく文法中心の授業だ。内容は中学1年生で習う一般動詞の時制・・・隣の席の生徒(カルロスという名の凄い自己中なエクアドル出身のおじさん)と配られたプリントの答え合わせをする。grow(成長する)の過去形をgrowedと書いている。
「見て下さい。これがスパグリッシュ(主に南米の移民が話すデタラメの英語。スパニッシュとイングリッシュとを掛けている)です。こんなのも分からないで、世界の私に話しかけるなんて笑ってしまいますね。」
この日彼のプライドは傷ついたようだった。

【9:30pm】
帰宅後も何やら勉学に励んでいる彼。
「今アメリカの女子高生に日本語を教えているんですよ。これがかなり好評でね。来学期は大学で日本語クラスの講師補助をやるつもりです。」
そう言って、彼が見せてくれたのは日本のコメディー番組「ごっつええ感じ」のコントのセリフを英文に訳したものだった。 

【11:30pm】
時刻は11:30pmを指していた。
「は!!いけないもうこんな時間だ!!すっきりしないと!!」
彼はそう言うとパソコンを起動させた。

【11:50pm】
恋愛はしないのかという我々の質問に、彼はこう言ってこの日の取材を締めくくった。
「恋愛??ははは、冗談を言わないでください。いいですか、これからはカリビアンの時代です!!」
彼のパソコンの画面には何人もの彼女とおぼしき女性の動画がチラついていた。

完(ここまで読んでくれて本当にありがとう)


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いかがであったであろうか?学期によって授業のスケジュールが違うが、基本的には授業に毎日4,5時間出席し、宿題を4,5時間、ピアノの練習を2,3時間やっていたように思う。(マンハッタンの無料英語学校は3,4回通ったが、あまりにもレベルが低いのでやめた。行かなくなってからは、学校や市立図書館で勉強していた。)
若い頃は頑張っている自分が格好良いと思っていたのか、あまりにも無茶をしすぎた。今は少ない時間で、適度に休憩をはさみながら、効率よく作業をするのが最も生産性が高いという結論が出た。若気の至りだったと思う。しかし、それに気づいたのもこういった経験があったとポジティブに捉えたい。

【完】

写真:真ん中の中国人のショーンという女の子と図書館の前のカフェテリアで良く勉強していた。(何も色恋沙汰はなかった 笑)ある日、彼女が受講していた数学のクラスの教授とレストランで食事をするというので、彼女についてマンハッタンまで行った。教授は学期末だったので、クラスの生徒にアフリカ料理(どこの国か忘れた 笑)をごちそうした。なんとも太っ腹の人情味のある教授だ。勿論部外者の私もあやかった。笑 (他の生徒は誰という感じだったが、ちゃっかり写真まで一緒に撮った)

ジャズピアニスト 二見勇気

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