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「第八話」ニューヨークのジャズ、文化と音楽の結びつきを考える ①

エピソード4(ニューヨーク・短期大学時代)第八話

ニューヨークに渡ってから短期大学の新学期が始まるまで2週間あった。この間に必要な事をなるだけ済ませようとした。銀行口座の開設、携帯電話の契約、予防接種、キッチン器具や生活用品も揃えないといけない・・・新天地での生活、ましてやそれが海外となると大変だ。やらなければいけないことは沢山あるのは分かっていたが、せっかくニューヨークに来てライブを見ないなんて勿体ないと思い、この2週間の間に有名なジャズクラブをチェックしに出かけた。そう言えば二週間後には学校のクラス分けテストを控えていたが、そんな事はお構いなしだった。このクラス分けテストが今後私の人生を大きく左右するものだとは知らずに。我ながら呑気だっと思う・・

東京といえば浅草、ソウルと言えばサンギョプサ、ニューヨークと言えばジャズだ。ニューヨークに来てジャズを聞かないなんて、お前はアホかと言いたい。女の子をラブホに連れ込んで、ベッドの上でカルタ取りだけしてバイバイするようなレベルだ。諸君がこれからニューヨークに行く予定があるのであれば、是非有名なジャズクラブは数件チェックしてほしい。今までジャズを聞いた事がない君も雰囲気だけでも味わってほしい。ニューヨークという街が音楽・アートと密接に関わりあっているのが良く分かると思う。

今日は小生が学校が始まる数日前にSmallsというニューヨークの老舗ジャズクラブに見に行った時の事について書こうと思う。

夕方の5時頃にSmallsの最寄り駅、1番線の地下鉄 Christopher St Stationから地上に出ると大きな通りに出る。辺り一帯は暗いが、人通りも多いし若者も多いので怪しい雰囲気ではない。むしろ少し薄暗い雰囲気からは、これからニューヨークがエネルギー溢れた夜の街へと変わっていく様子が伝わってきて、ワクワクとさえする。

Smallsの前に着く。格式張らない、地域に根ざしたアットホームな外観。でもレンガ調のお洒落な外壁にアーチ状の青いドアがついている。観光客も多いのだろうか?ドアの前には次のショーをお目当てにお客さんが沢山並んでいる。ちなみにチケットの精算はここでするのだが、クレジットカードも受け付けている。日本はクレジットカードが使用できない店があまりに多い。こういうところは是非見習ってほしい。

狭い階段を降りていくと、そこには別世界の空間が広がるのだ。決して大きいベニューではないが、天井が高いのか開放感がある。おしゃれな木のカウンターに、額に入った写真や絵画が何枚も飾られ、絨毯が店中に敷いてある。少しアンティーク調で古めかしいが、温かみがある。何と言っても陽気なニューヨーカーがその空間をよりアットホームにしている。

ニューヨークのジャズクラブに入った瞬間に得られる安堵感は特別なものだと思う。地下鉄は機能していないし(MTAについては後日詳しく書きたいと思う。)冬は寒い、道は汚い。私が神経質なだけかもしれないが、お店につくまでに色々なイライラがあったのも起因するが、ジャズクラブに着き、同じ音楽を愛する人々を見た時の一体感や安心感は大きいものがある。
それにしてもSmallsの内装を一つ見てもとてもお洒落だ。ニューヨークはアートの街だと思う。

ベンチのような長椅子に座わり、知らないニューヨーカーと肩を寄せ合いながら、ショーが始まるのを見る。丁度前のバンドが終わり、次のバンドがステージ上で準備をしている。前のバンドのベーシストは次のバンドのベーシストと知り合いなのだろうか。抱擁をし、さっと別れを告げる。次のギグがあるのだろう。慌ただしくも熱い挨拶を交わすミュージシャン達もNYCならではだと思う。

特に下調べもせずにお店まで来たのだが、店の外で清算をしていたスキンヘッドのおっちゃんが「今日のピアニストはBruce Barthだよ。俺の好きなピアニストだ。ボーカリストの○○は嫌いだけどね。」と言っていたので、Bruceがどんなピアニストなのか余計気になってきた。笑 それにしてもお店関係者が、自分の店に出るミュージシャンを好きではないと言ったのには驚いた。笑 この辺りは凄く正直だと思う。ショーが始まる前にBruceはピアノの感触をつかみたいのか、大きな音を出さずにポロポロと鍵盤を触っていた。後ろの席では若い衆が酒を片手にワイワイしているのが聞こえるが、そんな事はお構いなしにバンドは演奏を始める。特にリハーサルもしていない様子だ。一曲一曲ボーカリストがコールをしながら、ステージを作っていく。

ライブは後半からバンドの演奏の素晴らしい瞬間に何度も聴衆は魅了させられヒートアップしていく。ボロいベンチの上で陽気な外国人と隣り合わせに音楽を聴く。私達は人間だ。所詮人間が美しいと思うもの、心地よいもの、楽しいものは共有できるのだ。パフォーマンスの序盤で騒々しかった後方からは何も聞こえてこなくなり、聞こえてくるのは次のセットに出演するであろうミュージシャン達の声援である。

この一連の流れが新鮮だった。ミュージシャンが現場に入る様子、同業者をサポートする様子、ステージ上でミュージシャンがオーディエンスと音楽を作っていくプロセスが日本のジャズシーンとは全く違う。このニューヨークジャズの最前線の環境と彼らの生み出す音楽は必ず密接な関係があると思う。

環境が音楽を作り、音楽が環境を作っているのだ。ジャズの歴史を少し学んだ方はご存じかもしれない。ビッグバンドの全盛期時代はビッグバンドはダンス音楽としてハーレムのコットンクラブなどで連日連夜演奏されていた。客が踊れないといけない。なのでこの頃のバラードもウォーキングバラードでテンポも速い。この時代のレスターヤングのバラードを聴いてもベースがウォーキングをしてドラムのスネアが跳ねているのもそういう事だ。

単純に我々日本人が、ジャズジャイアンツのトランスクリプションを買ってきて、指使いや音使いを真似しても、それは音楽の表面的な事しか学んでいないのである。ジャズ、そこには歴史と文化が密接にかかわっている。

Smallsのボロい長椅子に座りながら、ここニューヨークで繰り広げられる熱いライブとミュージシャンの人間模様を観察しながら、当時の私に色々な哲学が芽生えたのだ。

【完】

P.S いつもは午前中に投稿を済ませるのだが、昨夜は遅くまで動画の編集をしていたため投稿が遅くなってしまったことをお詫びしたい。加えて真面目なトピックを自ら選んでしまい、後悔。いつもおっぱいおっぱいと言っていた方が自分としては書きやすいことに気が付く。明日から下世話なネタに戻るから読者諸君は是非楽しみしていてほしい。(●^o^●)


今朝私のYoutube チャンネルに新たな動画を載せたので是非チェックしてほしい。同じ大学に通っていた19歳のボーカリストKieranに提案され、Tea for twoをリモートセッションする事になった。リモートセッションは撮り直しが何度も出来るものの、メトロノームを頼りに演奏するので、テンポキープが難しい。テンポキープをしようとするとグルーブやニュアンスがおろそかになってしまい、ぎこちない演奏になってしまう。改善していこうと思う。

その他SNSも積極的に行っているので、以下のリンクからチェックしてみてくれると嬉しい(*^▽^*)

ピアニスト 二見勇気 
Youtube - Yuki Senpai
Instagram - YukiSenpai
Twitter - 天才ピアニストゆうこりん

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