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「第九話」ニューヨークの短大でクラス分けテストを受けるの巻 ①

エピソード4(ニューヨーク・短期大学時代)第九話

出国する前に英語のパトリシア先生から、プレイスメントテスト(クラス分け試験)は大事だから、しっかり予習しておくように念を押された。ニューヨークに移り住んでから試験までの2週間の間、少しは英語の勉強をしていたのだが、その頃はプレイスメントテストがどのくらい重要かよく分かっていなかったし、とりあえず入学を許可されたから良いんじゃね?位の余裕ぶりだった。そもそもプレイスメントテストの意味をよく理解していなかった。(我ながら、自分で自分の顔を引っ叩いてやりたい。もしあの時の自分に忠告できるのであれば、カンチョーで脅して必至に対策を練らせていただろう。

そもそも慌てて勉強しただけで、飛躍的に英語の能力が伸びるわけがない。ここはドンと構えるべきだ。と自分を正当化し半ば諦めモードに入っていた私。パトリシアに先生に作成してもらった英語のプリント類を少し予習はしたと思うが、銀行口座や携帯電話等の手続きに四苦八苦し、ジャズクラブの見学に明け暮れているうちに、2週間はあっという間に過ぎ去った。遂に試験その日を迎えた。

その日は朝早くに自分が数日後に通うであろう学校へと向かった。7番線の33番ストリートで下車する。まだ九月中旬なのに肌寒い。ニューヨーク独特の秋に移り変わる季節。どことなく寂しい風が吹く。新天地での孤独な自分はそんな風に包み込まれながら、33番ストリート駅からキャンパスへと歩いて行った。

ここでプレイスメントテストについて説明しよう。ニューヨーク州の大学だけなのか、アメリカ全土の大学で採用しているシステムなのか良くわからない。だがニューヨーク州立の大学ではEnglish Composition 101、すなわち英作文のクラスを必修としている。これは例えば自分が写真や美術のように、一般教養以外の分野を専攻しても取らなければいけないクラスなのだ。まあ、どの専攻にせよ卒業をするには論文を書かなければいけないので、最低限の英作文のスキルはつけておかなければいけないのだろう。理にかなっていると言えば理にかなっている。English Literatureや哲学を専攻するのであれば、更に高度な英作文のクラス ENG102でもENG103が必修になるようだ。いずれにせよENG101のクラスを取ることが、大学に通う証になるのだと思う。これは英語を母国語とするアメリカ人もそうでない人も受けなければいけないテストなのだ。

この頃の自分はその事を自覚していたのだろうか。埼玉県春日部市生まれ、26年間ほぼ日本で育った私が今更あがいても無駄だよな。もうどうにでも慣れというやっつけ感はあったと思う。

大学から来たメールには9:00にC棟の◯階 ◯号室の前に来るように書いてあったので、時間通りに着いた。寝坊した私だが、遅れないように、朝ごはんを抜いて慌てて到着。コンビニで入手したバナナを片手にしていた。未だに直らない時差ボケで睡眠も十分に取れない日々が続き、相当イライラしていた。あと前述したカナコさんとのうんこ騒動もあり、うんこもしていなかったと思う。腹は空く、頭は痛い、うんこがしたい。体調は最悪だ。でも何とか間に合った。

ところがだ・・・誰もいない。辺りを見渡しても誰もいない。いや、数人廊下の壁際の地ベタに座り込む学生を見かけるが、彼らも試験を受けに来たのだろうか?試験会場のドアも開かない。あれ、場所を間違えたか。時間を間違えたか。日にちを間違えたかも。おっちょこちょいの私はよくこの手のミスを犯すので、もの凄く焦った。

しかし15分位すると、ゾロゾロと学生も集まりだし、人数も増えてきたので、ここが会場で自分は間違っていなかったと安心する。学生達は、みんな疲れているのか、不貞腐れたような顔をして皆下を向いている。まるで都立の底辺高校の荒廃ぶりだ。一言で言えば覇気がない

大学生にもなろうかという学生達が、こんなにも人生に絶望しているのだろうか?いくら早朝とはいえ、あまりにも不機嫌すぎないだろうか?アメリカでは学のない人間は、俺は疲れているんだ、不貞腐れているんだという負の感情を正直に出すのだと知った。

ビバリーヒルズ青春白書で見るような「ハーイ、私ケティー、今日試験を受けに来たの?あなたも?」「やあケティー、僕の名前はトム、よろしく。それは奇遇だね。私もだよ。ハッハッハ( ^ω^ ) 話は変わるけど、今夜バーベキューでもどうだい?」

という笑顔や会話は一切ない。これは私のステレオタイプだったのだろうか?ニューヨークの学校に来て初めて、何か間違ったところに来てしまったと感じた。

さらに15分ほど沈黙が続く。

この間私は誰にも話しかけなかった。いや、話しかけられなかった。英語が話せないので、試験はいつになったら始まるんだ?ここは試験会場であっているのか?という事を聞くのさえ怖かった。もし通じなかったらどうしよう。「ファ?」と返されたらひとたまりもない。それだけならまだしも、英語の話せない変な東洋人が相手に通じず、多くの学生の前で注目を集めてしまったらどうしよう。ここは周りに合わせて静かにしておいたほうが利口だと思った。

しかし一向に学生だけで、試験監督やスタッフは見当たらない。いや、待てよ。彼らは次の授業をまっているだけなのかもしれない。まさかの不安がまたしても心を過る。携帯で学校からきたメールをチェックする。ビルも、階も、部屋番号もあっている。やはりここであっているはずだ。

そこに突如とスタイリッシュでメガネを掛けた細身の白人女性が現れた。彼女が偉い立場にある人だという事はそのオーラですぐに分かった。白いワイシャツとピンクのメガネ、黒板を指す細い棒を持てば、漫画の世界に出てきそう。一体全体これから何が始まろうとしているのか・・・・


【続く】

写真:大学といっても4つの巨大なビルに教室が入っている。2万人以上が通うマンモス校だ。プレイスメントテストは写真の一番奥にある白い建物の中で行われた。他のビルディングで授業がある場合の移動が面倒だった。ビルの中も広いので、15分のインターバルでもギリギリだった事もしばしばあった。また冬にこの通りを歩くと、ビルの隙間風がもろに当たって瞬間冷凍されるのかと思うくらいる寒かったのを覚えている。

P.S 本来一話で完結するはずのプレイスメントテストでの出来事が、書けば書くほど、昔を思い出し長くなってしまったので2回に分けたいと思う。大体一話1500字〜2000字だと思ってくれれば良い。

拙い小学生みたいな日記を書いているが、本業はジャズピアニストである。SNSも積極的に行っているので、以下のリンクからチェックしてフォローしてくれるとゆうこは嬉しくて泣いちゃう(*^▽^*)ではまた明日♪

ジャズピアニスト 二見勇気
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