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「第24話」NYC短期大学の統計の授業で学んだアメリカの素晴らしいところ

エピソード4(ニューヨーク・短期大学時代)第24話

統計学の授業で新学期早々、教授が2回続けて来なかったのには流石に驚いた。3日めの授業には来たけど・・・3回めの授業でようやくクラスに現れた教授は、数学のデパートメントからは違う教室に行くように伝えられていた、学期の始まりにはよくある事だと言った。いや、よくあっちゃ困るんですけど( •̀ㅁ•́;) というより2回も授業が無くなったんですけど、遅れを取り戻せるの?( •̀ㅁ•́;)

私は数学の授業を他のアメリカ人の学生と一緒に受ける事に初めは不安だったが、これは心配に及ばなかった。英語のレベルが低い私にも、数学の授業はなんとなく理解できた。教授が言っていること全てが分からなくても、数字を追っていれば何となく理解できるというような感じだ。しかも教授は英語が第一言語ではなく、簡単な単語を強調してゆっくり話すから聞き取りやすい。

教授はどこの出身か分からなかったが、Rの発音が、凄い癖がある。おそらく中東のどこかだろうと思った。「アッサラァァームアライクムン」と言わせれば絶対にハマるに違いないと思った。目がエメラルド色をしていて、ディズニー映画のアラジンに出てくる悪役が優しくなった顔つきをしている。
ヒジャブを被った女の子の質問に教授は良く顔を赤くしていたのを覚えている。この学生に好意を寄せていたのだろうか?同じ中東出身の二人だから何か惹かれるものがあるのかもしれないと私は思った。

この教授は非常にだらしない教授だった。ある日20分、授業に遅刻し、その理由を自分のクレジットカードが不正に使われたから、電話をしていたと言っていた。朝8時から始まるクラスで皆早くから起きてきているのに、遅刻されたらたまったものじゃない。みんな苛立っていたが、まあクレジットカードが不正に使われたら仕方ないよねという感じだった。私だったら授業にとりあえず出て、皆に自習をしてもらう間にカード会社に電話をかけると思うけど(・_・;)人間不信の私は教授は絶対に嘘をついていると思った 笑  そして、なんと翌日も20分も遅刻した。20分である。大学で教壇に立つ大の大人が2回続けて20分遅刻である。流石にこの時の教授は言い訳何一つせずに、教室に入ると時に物凄い申し訳なさそうに「ソーリー」と言っていた。周りの学生はあからさまにため息をついていた。おとといの20分の遅刻もただの寝坊だと確信した私だった。笑  

それにしても外国人の先生がアメリカで教鞭を執るというのには驚いた。いつしか、私はアメリカの大学で教鞭を執る事を目標にもつようになったが、この時の経験がきっかけになっているかもしれない。日本の大学で外国人が教鞭をとるというのはあまり聞かないが、アメリカの大学では良くあることである。NECのクラシック科になると、半分はヨーロッパやアジアからの先生だったと思う。英語を第一言語としていない外国人が大学でアメリカ人に英作文を教えていたりすることも良くある。確かに東京大学のロバート・キャンベル氏が日本文学を教えている事を考えると納得するが、アメリカではキャリアを求めて多くの外国人が並大抵ではない努力をしていると感じた。

アッサラァァームアライクムン教授(以下アッサラーム教授と略す)の授業はかなり熱気にあふれていた「いいか、この公式は絶対に覚えておけよ!テストに出るぞ!」赤ペン先生の漫画を思い出すような、熱血ぶりだった。
アメリカ人の学生たちも、朝早くの講義には眠そうにしていたが、アッサラーム教授が黒板を叩く度に、目が覚めるのか、教室にはいつもピリッとした程よい緊張感があった。何も反応がないと「Yes!?」と問う教授に「Yes」という声で返していた。

この時に私は、アメリカはなんて寛容な国だと思った。生徒の態度を見ていても、中東出身の教授を特別扱いするわけでもなく、そして辺に外国人とみなして優しくするわけでもない。クラスルームは終始リスペクトとリラックスが程よく合わさった雰囲気を醸し出していた。

私はアメリカに住んでいた時に、アメリカ人に自分の出身地やバックグラウンドについて聞かれたことが多々あったが、私が嬉しかったのは、彼らが私のバックグラウンドを尊重しながらも、極端に私をよそ者扱いせずに普通に接してくれたことである。例えば日本人は欧米人が、「こんにちは」と「ありがとう」を言うだけで極端なリアクションをとるような気がする。「わー日本語お上手ですね!」そう言った時、彼らはどのように感じるかいつも疑問に思う。少なくとも私が彼らだったら簡単な挨拶を日本語で言えただけで、上手ですねと褒めては欲しくない。

多くの外国人がアメリカで働いている事実、生徒の外国人への接し方を見て、アメリカの他民族・多文化への寛容さに気付いた。勿論人種のるつぼニューヨークでさえ人種差別というのは起きるが、多くのニューヨーカーは多様性を尊重し、多様性が彼らの街をより活気づけている事を知っている。

【完】

写真:ESLデパートメントで良く自分の作文を添削してくれた先生。
元気にしているかな(・_・;)

ジャズピアニスト 二見勇気
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