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「第14話」 悪夢の新学期手続きの日

エピソード4(ニューヨーク・短期大学時代)第14話

異国の地で、特に私のように英語をろくに勉強せずにアメリカに行ったものとしては、学校の新学期に向けての各種手続きは恐怖そのものである。個人差はあるが、留学生は苦労すると思う。それに加えニューヨーク州立の大学の事務対応は悪名高い。頭の悪い学生がバイトをしているので、ミスも頻繁に起こる。そもそもこういうところで働く人はワークエシックが欠如している人が多いので、適切に対応してくれなかったりする。言葉の壁にぶち当たり、そして杜撰な事務対応にカルチャーショックを受ける。今思うと良く生きて帰ってこられた(←大げさ)自分で自分を褒めてあげたい( ^ω^ )ニコニコ

ちなみに学校によって事務対応は大きく異る。私が二校目に通ったボストンのNECは対応がしっかりしていたし、3校目のインディアナ大学は神対応だ。民度の低いニューヨーク州立の大学、特にコミュニティーカレッジは要注意だ。これは大学の予算や、労働者の民度にも起因する。

手続きは色々あるのだが、覚えているだけでも、クラス登録・授業料支払い・予防接種の証明書の提出・その他留学生の住所・電話番号登録のようなものがあったと思う。大したことないと思うかもしれないが、例えばクラス登録をするにも、テストの結果表をもらって、アドバイザーにどのクラスを取れば良いか相談して、そしてクラス登録をするという風に、多くのステップを踏まなければいけない。そしてその途中に色々な事務所を行き来しなければいけず、また事務員の不手際等あるとスムーズに進まない。それに加え自分の英語能力だ。自分がどういう目的でこの短期大学に来ていて、将来どういう進路を考えているかアドバイザーに説明し、登録するクラスを選ばないといけない。大学のシステムもちゃんと理解していないので、言われるままにするのが無難だが、もし自分の望まないクラスをとらされたらどうしよう。色々な不安が過ぎった。こういった手続きに2日かかった。

まず、先日受けたプレイスメントテストの結果をもらいにどこかの事務室に行く。数字とアルファベットだけが書いてあって良くわからない。そもそも何点満点なのかも分からない。まあ結果が悪くてもそれも実力のうち。ありのままの自分を受け入れよう。その心構えは変わらなかった。

まずは、その結果表を持って学生達が長蛇の列を作るところに、金魚のフンのようについて行く。手続きの流れがよく分からなかった。とりあえず周りの人間が並んでいるから並ぶ (笑)長年日本に住んで培った和の精神を活かす時がやってきた。この間、何十分待ったであろうか。何十人と学生たちが並んでいるのに、先頭の先に見えるのはパソコンに座ってカチャカチャタイピングしているおっさん一人のみである。疲れているのか、それとも地元の学生ですらこのお些末な対応に飽き飽きしているのか、学生誰一人とも周りと話そうとせずに下を向いてイライラした様子を隠せずにいる。この覇気のない学生を見てまたしても私も気持ちが沈んだものだ。自分の番が近づくに連れ、この表の少し下の空欄に自分が取れるクラスをおっさんが書き込み、それを持ってアドバイザーのところに行くというのが分かってきた。

自分の番がようやく回ってきた。自分の名前と学生番号を告げて表をおっさんに渡す。おっさんはパソコンに私の個人情報を打ち込み
「おーけー、ふふふ〜ん♪ 君はプレイスメントテストの結果がこれだから、このクラスね。ESL、 ESLっと♪」

かかった時間は僅か数秒。私はおっさんが殴りがけした自分の表にESLのクラス名が書いてあったのを見て驚愕した!

ESL!

ESL(English as a second language)(´;ω;`)ノ〜〜〜〜!!!


おみくじで大凶の二文字を見るように、反射的に何かまずいことが起きたのが分かった様子の私

説明しよう。ESLとは留学生向け、または英語をネイティブとしない学生向けの英語のクラスだ。大学一般教養の授業を取る前に英語のレベルが低いとみなされた学生は、このクラスをとって英語力をアップしないといけない。出国前に英語の先生パトリシアに、ESLは単位が取れないからなるだけ避けるように、もし取るのであれば一学期感だけが望ましいと言われたのを覚えていた。

先日のプレイスメントテストがこんなところに反映されているなんて
(TOT)(←馬鹿も休み休み言え)

私は必死にこのクラスを取りたくないアピールをした。

「No no no no 〜(´;ω;`)」
「Me no ESL!I don't ライク ESL トリタクナイ! NO No No!」

おっさんは、取り乱した私にも冷静に対応していたと思う。

「Okay、僕は君のデータを元に表に書いたまでだ。アドバイザーに相談しなさい」

しかし私はアメリカでは自己主張が大事だと聞いていたので、引き下がらない。

「No No No Me no Money ESL トルオカネ ない Nothing!」

というような感じだったと思う。周りの学生の間に緊張が走る。「なんだこの東洋人は・・・こいつはアメリカに来て間もないのか?」と思っていたに違いない。これは日本人が日本語が満足に話せない外国人が泣きついて何かを訴えようとしているのを街で見る光景と同じだったのではないかと思う。いくら人種の坩堝ニューヨークでさえ、英語を満足に話せない東洋人が、部屋の一室で喚いてみるのを見て驚ろかないわけにはいかない。

そうこうしていると「それはここで言ってもしょうがないのよ!!アドバイザーに相談しなさいよ!」と私の少し後に並んでいた日本人の女の子が私に向かって叫んできた。驚いたのは2つ。彼女が興奮して私を叱りつけた事と、まさかこの部屋で日本人、いや、日本語を聞くとは思わなかったからだ。日本から遠く離れたニューヨークの短期大学で、日本人を見て不思議な感じがしたものだ。

しかし、なんともムカつくものだ。彼女はアメリカナイズされた化粧に、ノースリーブのイケイケファッション。昔のカラテキッドに出てくるタムリン・トミタの様な外人受けするアジア人の風貌をしている。(別に彼女がどのような格好をしようが勝手だが、その時の私にはアメリカナイズされた日本人を何故か反射的に嫌ったのだろう)少しアメリカに住んで英語が少し出来るかもしれないが、今に見てろ、お前よりピアノ上手いんだからな。こんな底辺短期大学に来てお前は何をやっているんだ。バーカ(←お前もな)私はバツが悪くなり、彼女に建前上の(教えてくれてありがとう)の会釈をしその場を後にした。今思うと勇気を出して教えてくれた彼女にありがとうと言いたかった。

【続く】

写真:大学の正門前。このE Buildingでは良く英語の授業や英作文の授業をとっていた。それから図書館とカフェテリア、あとプールも利用していた。ピアノの練習もここでしていた。底辺校だが懐かしい。

ジャズピアニスト 二見勇気
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P.S 昨夜母親と喧嘩をし色々と考え事をしていたので、今朝は遅くに起きた。朝に更新する頻度が減ったのを許してほしい。最近文章力があがったのか3000文字近くの文章を短時間で書けるようになってきた。それではまた明日( ^ω^ )ニコニコ 

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