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過疎の災害

田舎で田畑や山や家を持ってる、それもそこそこ広かったり大きかったりする人って、みんな、どうしているのかな。それも、先祖代々、守り抜いてきた、みたいなシチュエーションの人。

と、いうのは実は、自分のことです。上京以前の。
周囲からは羨ましがられるのだけれどまったくうれしくなかった。
まったく、困ったものだ、何とかしなくてはまずいぞこれは、と、かなり幼い頃から思っていました。

大農場のやり手農家ってのはどのくらいあるんでしょうか。
うちはぜんぜんそうでなかった。なので、祖父と親の代で蚕を牛をやめニワトリをやめ、それでもあまりに収入少ないため、おそらくは子(私だ)育てのため、父も母も勤め仕事をやって、どうにかキープ。

しかし父と母がやってるだけの農作業および山の手入れ家屋の手入れを、とても自分にはやれる気がしない。田植え稲刈り手伝うだけでくたびれ果てて、小学生の頃から、家出や自殺を考えた。いじめ自殺がよく報道されるけど、家しごとの手伝いがつらすぎて自殺って見ないですね。誰にも共感されないだろうと思ってたので、悩みを打ち明ける人っていなかったな。

交通の便も悪すぎ。田舎の中でも辺鄙なとこで。絶対に将来こんなところに住みたくない、と、ずっと思ってました。

こういう田舎ほど、親戚のつきあいが濃密だったりする。気のいい伯父さん人のいい伯母さん楽しいおじいさん優しいお婆さんませたイトコ意地悪なイトコなどなど集まる盆正月の会話から、先祖代々どうやってあなたの家を守ってきたかわかる? あなたも当然守ってくれるよねというプレッシャーを感じないではいられない。

周囲は、あなたには広い土地があって山があって家があって幸せね、羨ましい的なことを言われる。あなたは恵まれてるって前提から入る。
すると世間知らずの田舎の子供。そうか私は幸せで羨ましいのか、じゃあその状態をキープしなくてはなと思うわけで。

しかし私にはとうてい無理だという気持ちは年を追って増すばかり。


どうしたらいいんだこれ。結婚して、配偶者に任せる?
いやいや、そんな人を騙して利用するような結婚なんてしてたまるか。
そもそもこんな辺鄙な土地に来てくれるような相手いるわけない。

逃げよう。逃げないと、抜けられなくなってしまう。

で、大学進学という体のいい言い訳をこさえるわけです。この子はすごく頭がいい、だから大学に行かせなくちゃかわいそう。そう、周囲から思ってもらう程度の学力身に着けられたのは、そうならなきゃという気持ちのせいか。

しかし「金ない、ない」と父が繰り返す。上京引き留め作戦だというのは火を見るより明らか。

ちょっと変だと思った。うちは、そこそこ土地がある、山がある、家もある。と、周囲に知られていたため、機会あらばおだてられる。父も母も勤めている。というので、自分ちはわりと裕福なんではないかと思っていたのです。

そんなにないというのなら、奨学金もらえばいいんではないか。と思って、収支証明書とかいうのだったかな。提出したいんだけどといって、見せてもらうことになったのですが、信じられないくらい、儲けって少ない! というのがわかって、もうこれはとても親なんて頼れないと激しくショックを受けました。普通の大学生のように学費生活費を親の世話になったら、両親には使う金がない! 奨学金ってのも、あとで返さなきゃいけないなんて怖すぎる!

と、うちの貧乏さ加減を示す数字に圧倒され、バイト掛け持ちまくってどうにか生活費学費を賄って卒業し、今日まで田舎の土地も山も家も、のみならず、家族親戚ごと棄てて、稼ぐモチベーションも失った。

私が捨てられたのは薄情だったからだ。もう少し体のいいことを言うなら大学に行ける能力と学費生活費を自分でどうにかするバイタリティーがあったから、というのもあるでしょう。


しかし能力高くても、白状になれず、逃れられなかった優しい人達って、たくさんいたと思う。

今まもたくさんいると思う。

私はたまたま抜けられた。ラッキーだった。しかしやっぱり、気持は捨てきれないのですね。

そして豪雨。ひさびさに電話で安否を確認。まあ、今のところは、死ぬようなことはなさそうだ。

しかし時間労力気力お金費やし育てたものはむちゃくちゃになるだろうなと。あと、湖のまわりの人たちは、かなり危ないことになるかもと。

家族親戚を裏切らないで、代々守り続けて来たものを、今も守り続けて来たのに、自然災害にやられてガックリ、ぼろぼろになってる人(親だ)って、いっぱいいるだろう。

幼い頃は、どうして自分はこんな目に、と思ってきたのは確かです。だからといって今、私、そういう人たちのこと、ざまあみろなんてまったく思ってません。

本当は力になりたい。

でも手を出すのが怖い。現地入りして、みたいなのは、喜ばれないし、無理だと思う。裏切ってきたし、棄ててきたし、コロナあるし、いろんな意味で。

それで考えるけど、やっぱりこうなるとお金のことを思います、切実に。お金じゃないとか、ほかにも手はあるだろうとか、いろんなアイデアもそりゃ、あるだろう。あるだろうけど、率直に思うのは、もっと稼いでればどんなによかっただろうということ。前澤さんみたいにお金配れるようになりたいよ。今からでは間に合わないのか自分。

次同じことが起きたら、せめてもう少しなんとかできるよう、稼ごう。

人のためになりたいときになれるだけの力を持ちたい。

ロックフェス 東京五輪 大騒ぎ 知らないふりで 過疎大嵐

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