山ペンギン 再掲
山に出かけたらペンギンが落ちていた。
理由は全く分からないがペンギンだった。
干からびそうで哀れだったので、持って帰ってきたが、帰り道オレの水は大半こいつが飲んでしまい、オレの方が死にそうになった。
家に帰って魚を何匹か食わせてやったら、懐いて居ついてしまった。
野生には違いないので、とりあえず近所の動物園に相談したところ、
「ペンギンによく似たイタチだと思います。」
と実物を見せているにも関わらず意味の分からないことを言われたのでそのまま持って帰ってきた。
やはり寒いところから来たようで、冬のさなかには勝手に冷蔵庫を開けてさらに涼んでいたりしたが、オレは危うく凍死するところだった。
夏になったらなぜかオレのベッドに入りたがり、ひっつこうとする。
多分、オレにひっついた方が涼しいのだろう。
腹が立つのでケツをけとばしたら、転んで行った先でそのまま寝ていた。
ある日、外出をせがむので仕方なしに外に出した。
どうせ対して歩けないだろうとたかをくくっていたら、腹ばいになり、ホバークラフトのようにすごい速度で飛びだして行き、そのまま500m先の電柱に激突していた。
ちょうどいいからそのまま放って帰ろうとしたのだが、そいつがうつぶせに倒れている所で
「シャチの子供が死にかけている!!」
と理解できない叫びが聞こえてきたので、
「いいえ、違います。ペンギンです。」と
持って帰ってきた。
「なーんだ。ペンギンかあ。」と安堵する声が聞こえてきたが、
なぜペンギンなら受け入れられるのかは全く理解不能だった。
魚は何でも食べるので、そっとフグを混ぜたのだが、知らない間にオレの皿に載せ替えていたので、危うくオレが口にするところだった。
つまらない知恵だけは持っている。
最近は魚の好みがうるさくなり、渓流の魚が食いたいようなのだが、そんな魚は売っていないので、釣るしかない。
なので、腹の毛をむしって、毛バリにするのだが、むしられたときは少し恨めしそうに見ている。
しかし、釣った魚は全部こいつが食うのだった。
頭に来るのでイマージェンシーフード(非常食)を略して、「イマド」と名前を付けて今日も飼っているが、
こいつをさばいて食う日が来ることはないような気がして、
なんだか毎日損をして暮らしている。
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