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山ペンギン  47 弘法大師

四国の話題になった。

「お遍路さんって言って、弘法大師ゆかりのお寺をお参りして回る人がいるんですよ。」

「ラッピングペーパーみたいな名前ですわね・」
女神がすごいことを言う・・・。
信仰の世界にいるんじゃないのかよ。
梱包台紙を連想しているようだ。

「弘法大師ってどんな人?」
イマドがたずねる。ペンギンなら知らなくても大きな問題はない。
「昔のえらい坊さんだ。」
劉さんに殴られる。
「なんでなんすか!」
「阿呆 この世にどれくらい「えらい坊さん」とやらがいると思うんだ?!三蔵法師だけでも何人もいるんだよ。」

いや、その説明お願いします。
「三蔵法師っていうのは、人の名前じゃない。経蔵・律蔵・論蔵の三蔵に精通した僧侶(法師)のことだ。」

経蔵、律蔵、論蔵から説明お願いします。
「ありがたく聞けよ。」劉さんの講義が始まる。

経とは仏教の思想や戒めの言葉などが説かれたものでいわゆる「お経」のことだ。

律とは戒律のこと。規則のことだ。
戒律そのものも多いが、その戒律を犯したときの償いのことも細かいから、規則といえど膨大な量になる。

論とは経や律についての注釈書。または経や論について独自の理論を収めた思想書だ。

(参考にさせていただきました。ありがとうございます)

これらの書物を収める蔵という意味で、三蔵。この3つの内容に精通している僧侶が三蔵法師だ。

「西遊記で有名なのが玄奘三蔵だな。」
妖怪にいつも狙われているのは三蔵を冠する稀有な存在だからなんだな・・・なんで食えば妖力が上がるのか分かった気がする。

「いつも妖怪に狙われているって、なんてことでしょう!だから現状惨状と・・・」
聞き違いです。主任。

「西遊記の三蔵法師って本当にいるの?」イマドの質問。
「実在の人物だ。」劉さんが答える。「なんであんな化け物の話になったのか誰もわからんが、西遊記は経典をインドに取りに行ったときのいわゆる日記だ。」

どんどん弘法大師から話がそれた。
「まあ、その三蔵法師と同列のようなえらいお坊さんってことね。」
主任が適当にまとめる。

それ以上かも知れん。通常20年留学する遣唐使になって、2年で経典の勉強終えて帰ってきてるからな。

「その後は」ーマリ博士登場
「真言宗開闢」ーユリ博士登場

「治水や水脈の探索にも長けているのですわ」ー女神が受ける。
…知ってるじゃねえか…
「磨崖仏を知ってるか?」「…偽物の仏さま?」
「紛い仏じゃねえ!」劉さんに殴られる。
イマドがバカじゃないの・・・?という目で見ている。

「崖を削って作る巨大な仏様の像のことだ。船の難所、流れの早い曲がりくねったところに作られることが多い。」
「この仏様を作るにあたって、当たり前だが、国王なりに許可をもらい、周辺の農民なども集めて人足とする。ありがたい仏様の像を刻んで難所を無事に通過するようにとな。」
ふむふむ。
「信仰心が強い人は集まってきて、摩崖仏を掘ったときに出てくる石を運搬する。指示通りに掘るのもその人たちかもしれない。」
「そして、その砕石は、流れの強い瀬を埋める。場合によっては、川幅を広げて、あえてそこに石をまく。」

なるほどな・・・。

「信仰の対象として彫られた仏さんは、難所を埋める砕石を供給するわけだ。
国王なりは、その目的を理解している。そのために仏を崖に掘るなどという、ある意味採算性のない工事に許可が出るのはそのためだ。
そして、人民は「仏様のおかげで事故が無くなった」と信仰も深まっていく。
ある意味だれも損をしない合理性がある。
なんでこんな話をしたかというと、えらい坊さんは土木技術の知識を持つことがあるという、一例だ。弘法大師はその最たる例だろう。」

いろいろ勉強になります。
ただ日本の磨崖仏は該当しないみたいですが。

「弘法大師は遍照金剛の別名がある。」

「あーし、それ知ってる。 The diamond lightning everywhere 」だよね。とマリ。

「くまなく照らす、元々大日如来さまのことだよね。」とユリ。
「遍照だけだと、毘盧遮那、ヴァイローチャナ、すなわち阿修羅も相当するからな。」
「マハーヴァイローチャナと言えば大日如来になる。」

…そういえば…。

明けの明星、天上の光と呼ばれたあの天使は…。

「ルシフェルのことを連想してるかな。」

まるがりたさんがオレを見上げてそっとつぶやいた。

元々はゾロアスター教の最高神のことでもあったとか、誰かが言ってたけどな。

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