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本物に触れる〜現代アートの100年

ちょっと前ですが、広島県立美術館の企画展《国立国際美術館コレクション 現代アートの100年》に行って来ました。

現代アートを語るうえで欠かせない作家の作品が、セザンヌをスタートとして時系列で展示されています。
私にとっては、ネットや本などで見たことはあっても本物は初めて見るという作品ばかりでした。
作品のできた時代背景などを知らないと、良さとかすごさとかわからないので、ぜひキャプションを読みながら、会場を回ることをお薦めします。そうすると、なんとなく理解出来たり(出来なかったり)して展示を楽しめます。

L.H.O.O.Q.

たとえば、男性用便器で美術界に革命を起こしたマルセル・デュシャンの作品もありましたが、それは、モナ・リザの絵葉書に髭を描いた作品でした。やってることは、教科書の偉人の写真に髭やメガネを描き加える中学生と同じです。うーん、アートとは何かと、考えさせられました。
が、デュシャンは、ジェンダーについて問うてるらしいです。わかるようなわからんような…

版画集『マリリン』

また、何度もネットや紙媒体で見たことがある、アンディ・ウォーホルのマリリン・モンローのシルクスクリーンの作品もありました。10枚のモンローの肖像が碁盤の目状に並んでいます。実際の大きさで見ると、1枚1枚の違いがよくわかります。
版は同じでも色の載せ方が全て違うし、かなり大きな色ずれがあるものもあります。でも全てモンローだと認識してしまいます。
私たちはイメージだけで人を見てるんだなと、実感できる作品でした。

冷却塔

写真作品では、ベッヒャー夫妻のタイポロジー作品《冷却塔》がありました。写真史において、ベッヒャー夫妻のタイポロジーは欠かせません。まさかここで見ることができるとは思わず、驚きとともにうれしかったです。
やはり実物を見ると、図録の写真を見ても今までと見方が変わります。今までは、様々な場所にある冷却塔を同じ条件下で、同じように見えるように写真に収めることの難しさはわかっていても、作品としてはどうなんだろうという疑問もあったのですが、いや、申し訳ありませんでした。そびえ立つ建造物の存在感は圧巻でした。

ドロテア

もうひとつ、写真作品で不思議な魅力を感じたのは、ロレッタ・ラックスの子供の肖像写真です。デジタル加工されているようですが、絵のような写真のような、人間のような人形のような不思議な魅力をたたえていて惹きつけられました。どこかを見つめているようで、何も見つめていない。子供でもない、大人でもない不自然さが、見る者を捉えて離さないと思います。

フライシュヴィマー(自由な泳ぎ手)24

写真関連で、ティルマンスの作品も紹介します。
血管のような赤い細い線が、川の流れのような作品は、暗室で印画紙に光を焼き付けたもので、カメラを使ってないそうです。私にはその手法は理解出来ないのですが、作品は繊細で美しいものでした。

最後に、実物を見られてうれしかった作品をあげます。

肖像(ゴッホ)、長い長い長い夜

森村泰昌のゴッホに扮した自画像の写真と、奈良美智の《長い長い夜》です。
どちらも大好きな作家ですが、本物を見たことはありませんでした。
本で見るのと実物は、何故こんなに違って見えるのでしょうか。本物の力ってすごいと思います。

トラウマ/日常


他にも塩田千春の作品など見応えのある作品があり、時間を忘れて楽しめました。
この日本人3点の作品の根底には不安が見えました…

以上は、私の素朴な感想ですが、ぜひ多くの方に観てほしいと思いました。

国際国際美術館所蔵作品72点で構成されているこの展示会は、広島県立美術館で2022年5月29日(日)まで、その後、大分県立美術館で6月11日(土)から8月21日(日)まで開催されます。