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テリ・ワイフェンバックの写真集を眺める

私は写真が好きです。
私の好きな写真家のひとりに、ニューヨーク出身の写真家 Terri Weifenbach(テリ・ワイフェンバック)がいます。
この度、彼女の新しい写真集『CLOUD PHYSICS』を手に入れました。

この写真集についての解説は、写真展を開催中のブリッツ・ギャラリーのプレスリリースに詳しく載っています。テリ・ワイフェンバックに興味を持たれた方は、ぜひご一読を。
http://www.artphoto-site.com/inf_press_92.pdf


以下は私の個人的、感覚的な感想です。

気候変動をテーマにしている今回の写真集には、ワニなど熱帯の動物も写っていて、世界は繋がっていることを感じさせます。
自然物の写真の中に、不意に気象データのグラフ、次のページに、そのグラフを記録したであろう気象観測機器の写真があるのが、不思議な違和感を醸し出しています。
巻末には、撮影場所、日付け、天気と雨量、最高気温、湿度、風速、気圧のデータ表があるのがおもしろいと思います。
気候変動への問題提起だと思われますが、私は、温度や気圧などのデータにはあまり興味がありません。小難しいことは抜きにして、私はテリ・ワイフェンバックの写真を楽しみたいと思います。

彼女の写真は、淡く儚く、瑞々しく、幻想的です。ピントが一点に合っただけのボケが美しい写真、あるいは全くピントの合ったところがないぼんやりとした印象派の絵のような写真、鮮やかな色だけが目に焼き付く写真、それは私にとって、懐かしい心象風景のようです。子どもの頃に、グリム童話やアンデルセンのお話を読み聴いて、思い描いていた遠い異国の情景は、こんな風だったような気がするのです。美しくて神秘的で魅力的で、そして怖い。

被写体は、ほとんどが屋外の自然です。鳥や花や草や雲など、その多くは存在が当たり前過ぎて、見逃してしまいそうな物たちです。でもそれらは動いて、変化して、生きています。建物だって刻々と表情を変えます。彼女の写真からは不思議とそれを感じられます。だから彼女の写真には、儚さと同時に力強さもあります。被写体の意思をも感じるように見えるのは、私だけでしょうか。

この写真集を見ていると、物事の全てが繋がっている、美しい地球を守りたい、自然とそう思えてきます。

しかし私は、テーマに沿って写真集を読み解くことはやめます。私は批評家ではないので、ただ純粋に、好きな写真を眺めていたいのです。
懐かしい気持ち、穏やかな気分に浸るために。