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お手伝いさんが嬉しそうに家族の動画を見せてくれた時インドの闇を感じてブルーになった件。

アパートに引っ越してきてから毎日自炊をしている。
和食、中華、タイ料理に使う調味料は日本から持参したが、チェンナイで購入できるものも多い。
思っていたよりなんでも作れる。

しかし日本と比べ、食材の調達に時間を要する。
徒歩圏内にローカルスーパーがあり、生活必需品や野菜類は安く買えるのだが、肉類は車で買いに出かけないと手に入らない。
ベジタリアンが多いので肉はどこでも売っているわけじゃないのだ。

要領を覚えたらネットで買ってデリバリーにする予定だが、
今は味と品質と相場を覚えるためになるべく出かけて色々な店で買うようにしている。

そんな感じで日々過ごしていると、
気づいたらアパートがすごく汚くなっていた。


日本では1ヶ月掃除しなくても全く気にならなかったが、
ここは床が全部、白い。
おそらく大理石のフローリングなので汚れが大変目立つ。小さい虫の死骸や、ほこり・砂・土が溜まって室内が暗く見える。

さすがにそろそろ限界だったので、お手伝いさんを雇うことにした。




管理人さんに紹介を依頼したところ翌日に L さんを連れてきてくれて、週に3 回掃除だけお願いすることになった。

L さんは小さめの女性で、ぽっちゃりしていて、ニコニコとよくしゃべる。
英語は喋れないので、コミュニケーションはタミル語でとるのである。

この L さん、見た目は 50 歳くらいに見えたが、なんと 37 歳だった。

我々も 30 代だが、L さんには 17 歳に見えると言われた。大抵若く見られるが、17 歳は記録更新だ。


ちなみに私はタミル語を習得するつもりでチェンナイにきたので、俄然やる気が出た。なにせ週に 3 回もタミル話者とマンツーマンで喋る必要がある。
これはメキメキ上達するに違いない。


日本から持ってきたこの2冊で勉強中。特に左の指差しシリーズの本は、まさにこういう時に使うんだなってくらい、超お役立ち中だ。 発音は全部直されるけども。


掃除道具に関して。
お手伝いさんを雇う時、道具は買ってきてもらうと良いと思う。こちらでこだわりがなければ、使い慣れてる道具を買ってきてもらう方がお互いにいい。
例えば日本からダイソンのコードレス掃除機を持ってきたのだが、L さんは使用経験がないので、使い方を教える必要がある。
タミル語で、ここ押す、ここ開く、ここに捨てる、とか言いながら、なんとか伝える。
my ダイソンはインドの広いお家では充電がもたないので、「スイッチをオンオフしないで押しっ放しにした方が広い範囲使えるよ」とか言いたい。けど高度過ぎて言えない。。


近所で買ってきてもらった掃除道具。
先が硬いプラスチックの箒みたいなのは日本ではあまり見かけない。
洗剤。左から、ガラス用、バスルームの床用、トイレ用。
室内はだいたいこのセットを使っているらしい。これは近くに売ってないので Amazonで購入。


初日に掃除に必要な物を揃えてきてもらい、当日の予定をたてたあと、フワっとする時間があって、L さんが携帯で家族の写真と動画を見せてくれた。
夫と娘と息子と4人暮らし出そうだ。

特に息子の動画が多い。ほとんどがインドっぽいダンスを踊っており、いまどきの都会の若者に見える。
動画を見ながらきゃっきゃと家族の話をしてくれた。息子はダンサーらしく、テレビに出たことがあるというようなことを言っていた。半分もわからなかったけど、少しだけタミル語でコミュニケーションが取れている気がして楽しい時間だった。
だが息子の歳を聞いた瞬間、わたしの心はザワっとした。

娘は18歳
息子は、23歳。

23歳ということは、14歳で産んだ子である。





児童婚という言葉を聞いたことがあるだろうか。

今はインドの法律で、結婚できる年齢が定められているが、
貧困家庭では、食いぶちを減らすため、婚姻によるお金をもらうため、親が結婚相手を決め10代の女の子を嫁がせるという風習があった。

教育は中断され、その後すぐに子供を産み、満足な仕事にはつけず、だいたいが貧困に苦しみ、その子供がまた同じような結婚をする。
同じ家庭環境が循環していく。

田舎の貧しい地域では未だに続いているという記事を読んだ。


本当のところはわからないが、一旦その考えがよぎると、50 歳にも見える目の前の女性の壮絶な人生に思いを馳せてしまい、全く彼女の言葉が頭に入ってこなくなった。
顔や手の皺も、今までの過酷な労働の証。。

しかし、幸いなのは L さんが今とても明るく、楽しそうに家族の話をすることだ。
おそらく息子も娘もまだ結婚してなさそうだし、動画の中のキッチンも割とちゃんとしたお家のキッチンに見えた。
嫁いだ旦那さんがそれなりに経済力があったのかもしれない。


インドでこの瞬間だけ異文化に触れたことで、私の中の何かが劇的に変わるわけではない。
何か出来ることがあるとも思わない。
ただ私は彼女にとって、生涯でひとりの関わった日本人になるかもしれない。
せめて日本人にいい印象を持ってくれるように、この家で働いたことがちょっとでも良い思い出になるように、一挙一動に気をつけようと改めて思ったのだった。

ところで L さん、どんなに暑くても汗水流して働いても、熱いミルクを飲みたがる。
砂糖を大量に入れ、さらに超甘いビスケットを一緒に食べる。
糖尿病大国インド。
炭水化物の摂取量が半端じゃないし、中年以上はみんなお腹が出ている。

インド人甘いものばっかり飲んでるよね、心配、と言うと、
L さんはキッチンでケラケラ笑っていた。

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