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障害者福祉事業の倒産が増加、A型事業所の経営力、事業遂行力が課題に

2019年の「障害者福祉事業」倒産は
30件(前年比30.4%増)で、
過去20年で最多を記録しました。
調査を開始した2000年以降、過去最多だった2017年と2018年の
各23件を大幅に(30.4%増)上回り、最多記録を更新しています。

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この結果は、東京商工リサーチが、
障害者を支援する生活介護やグループホームなど、
障害福祉サービスを手掛ける企業の倒産を集計し、
分析したことから明らかになりました。

倒産としては、小規模事業者の「販売不振」、
「放漫経営」が目立ち、「人手不足」関連倒産も5件発生しています。

倒産原因の背景とは

「障害者福祉」事業者の倒産の背景には、
障害者福祉の事業に関する規制緩和が影響しています。

2000年から2006年まで、「障害者福祉」事業者の
倒産はありませんでした。
しかし、2006年4月の「障害者自立支援法」の施行で、
これまで障害関連事業の認可は社会福祉法人だけだったものが、
規制が緩和され、民間企業が参入できるようになりました。

さらに2013年4月、「障害者総合支援法」が施行され、
民間企業の参入への敷居が低くなり、
給付金や補助金を頼りにした企業が大幅に増加しました。

ここ最近、A型事業所の倒産が相次ぎ、
メディア等でA型事業所の事業運営について報道されることも増え、
当事者や行政、事業者からも、
事業運営の適正化や制度の見直しの声が上がっていました。


就労継続支援事業A型は、障害福祉サービスであるものの、
利用者と事業主が雇用契約を締結し、
福祉と労働の中間にあたる福祉的就労を提供しています。
一般就労が難しい障害者にとって、福祉的就労で実績をつけ、
一般就労のステップとされることも多く、
労働の可能性を高めていくのに貢献するものとなっています。

しかし、近年、一部の事業者による課題が指摘されており、
厚生労働省は、生産活動による収益だけでは
障害者の賃金を支払うことが困難なA型事業所を指導するなど、
適正化を進めていました。

適切な事業運営をせず、経営改善が見込まれない場合は、
「勧告」や「命令」などの措置が講じられており、
補助金ビジネスとしてはじめた事業所の淘汰が進んできていました。


倒産の原因は


倒産原因としては、販売不振の16件(構成比53.3%)が
全体の5割を占めています。
そして、事業上の失敗(放漫経営)が6件(同20.0%)で、
安易に参入した企業が事業の継続につまずいていることが伺えます。

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厚生労働省によると、民間企業の就労継続支援A型のうち、
生産活動による収入が最低賃金を下回り、
経営改善計画の提出を求められた事業所が
7割近く(66.2%、2019年3月)に達するとしています。

A型事業所は、福祉的な役割を担っているものの、
事業を継続して運営していくためには、
安心して働ける職場と環境づくりだけでなく、
経営や事業運営に関する知識や取り組みが求められています。
また、企業独自の経営基盤強化も必要となっていると言えるでしょう。

障害者の働く場が増えていく中で、
中小企業の障害者雇用を評価する指標としても
組織づくりや事業創出についての評価が含まれることになりました。

例えば、事業創出の評価項目としては、
経常利益や売上高対経常利益、障害者雇用による
新事業の創出などを評価要素として入れています。

また、組織面では、 社長自ら、障害者雇用の方針や
理解促進のメッセージを職員に発信しているか、
部署を横断し、障害者雇用を推進するチーム・会議体等を設置しているか、
当事者参画の組織がつくられているかなどの点が含まれています。

中小事業主を認定する制度の詳細については、こちらから
【2020年障害者雇用促進法改正】障害者雇用の取組が優良な中小事業主を認定する制度とは

従来の障害者雇用についての評価は、
障害への配慮や人材面の育成などの
環境づくりに注目することが多くありましたが、
障害者雇用においても持続的経営についての意識が高くなっています。
この傾向は、障害者福祉においても求められてくるでしょう。

参考:2019年「障害者福祉事業」の倒産状況(東京商工リサーチ)


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