PPコンフリクトとモニタリングコスト(Young et al. 2008)

導入

前回に引き続きYoung et al. (2008) を検討します。

今回はPrincipal-Principal Conflicts (PP Conflicts) とモニタリングコストに注目します。

Jensen and Meckling (1976) によればエージェンシーコストを構成するのはは以下の3つです。

①モニタリングコスト:エージェントの行動を測定・観察するためにプリンシパルが負担するコスト

②ボンディングコスト:エージェントがプリンシパルに損害を与えるような行動をとらないことを保証するためにエージェントが負担するコスト

③残余コスト:上記2つ以外のコスト

すなわち、モニタリングコストはエージェンシーコストの1つです。ここからPP ConflictsについてYoung et al. (2008) は検討しています。

PP Conflictsとモニタリングコスト

とくにPP Conflictsを抱える新興国企業においてモニタリングコストが高くなる要因を以下の3点から記述しています (p. 208)

①制度構造の曖昧さ:契約条件を特定して測定することが難しくモニタリングコストが高くなる (Hill, 1995; Williamson, 1985)。

②エージェントが支配株主である:取締役会などの伝統的なモニタリング・メカニズムの多くを回避することができる (Dharwadkar et al., 2000)

③株式市場の流動性の低下:所有権の集中が株式市場の流動性を低下させる結果として株価に含まれる情報量が少なくなり資本市場の監視能力が低下する (Holmstrom and Tirole, 1993; Morck et al., 2005)。

とくに興味深く感じるのは②です。現在日本企業の大株主の詳細を逐次データベース化しているのですが、支配株主が経営者や創業者一族である企業は少なからず存在しています。

日本企業でも支配株主に所有権が集中している場合に少数株主との利害対立は深刻化しているのでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?