見出し画像

逆行列について

対角行列、および単位行列については過去の記事で少し記載しました。特に、単位行列は非常に特殊な行列で、任意の行列ないしベクトルに対して、積が定義可能であれば、右からかけても左からかけてもどのような影響も残さないというものでした。さて、ある正方行列Aに固有の別の行列をかけたときに、演算結果が単位行列になるような行列が定義できるとき、その行列は行列Aの逆行列と呼ばれ、よくA^(-1)として記述されます。逆行列は、行列Aに対してただ一つ存在します。また、逆行列はもとの行列にたいして右からかけても左からかけても単位行列になります(一般には右からかけた積と左からかけた積は結果が一致しません)。ちょうど、0を除く実数ないし複素数でいうところの、逆数にあたるものですね。また、逆行列が存在する正方行列のことを、正則な行列と呼びます(逆行列が存在しない、正則ではない正方行列も存在するということです。これを特異行列と呼ぶこともあります)。

逆行列は一般には、掃き出し法や余因子行列を使って求めることができます。掃き出し法では、元の行列の右側に単位行列をつなぎ合わせたような行列に対して、元の行列を単位行列にするように行基本変形を複数回実行したときの右側行列として得ます。

さて、連立1次方程式は、行列Aと列ベクトルxdでAx = dという形で表現できるのでした。ここで、Aが正則行列である場合、左から逆行列A^(-1)をかけると、上記式は

Ix = A^(-1)d

という形に変形することが出来ます(ただし、Iは単位行列)。したがって、方程式の解は、列ベクトルxと、dに対して左からA^(-1)をかけた列ベクトルの対応を見ることで得ることが出来ます。これは、同時に列ベクトルxがただ一つの解を持つことを意味します。

さて、ある正方行列が正則であるか否かは、行列式を計算することで検証することが出来ます。すなわち、ある行列の行列式の値が0である⇔ある正方行列は非正則であることが成立します。さらに、これはAを構成する列ベクトルが互いに線型独立であることと一致します(各列ベクトルが張るn次元立体の体積が0ではない、ということ)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?