2023年の3冊目『占領と改革』

2023年の3冊目(1/23)

雨宮昭一『シリーズ日本近現代史⑦ 占領と改革』岩波新書(2008年)★★☆

 本書は、第二次世界大戦後の占領と改革の時代、55年体制成立までの10年間の通史である。日本の戦前・戦時と戦後の連続性に焦点を当て、日本の戦後改革につながるものが総力戦体制の中に存在していたという。敗戦や占領がなくても戦後改革が行われたかどうかはよくわからないが、戦後の政治勢力や社会保障の原型、労働者や女性の地位向上といった社会関係の平等化、近代化、現代化は総力戦体制で進行したことはよくわかった。
 総力戦体制を担った政治潮流を「国防国家派」「社会国民主義派」「自由主義派」「反動派」の四つに分け、それらが戦後すぐとその後の政党にどのように繋がっていったのかがわかりやすく説明されている。占領期の政治の動きは大変理解しにくいと思っていたが、見通しがよくなった。
 本書の最後に1950年代の日本社会に触れられる箇所があり、農漁村、都市労働者、子どものコミュニティについて、基本的人権が保障され、民主主義の制度があり、国家や資本から自立した多様な空間が存在していたという。
 戦後日本社会を考える上で、この時代をどのように理解するかが重要と認識した。