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経費を使いまくると税金はいくら安くなるのか?実際の税額を基に試算してみた。

法人は利益が出て当たり前


わたしは1年間で約25社の法人の確定申告を担当しています。
顧問先にはいろんなお客様がいます。
決算書を作成して、税金の計算をして、結果の報告をします。
ご報告の際に当期の税額をお伝えすることになるんですが、納めなければならない税金を聞いた時の反応も様々です。
びた一文税金なんか払いたくねぇ!なんとか赤字にしてくれよおおお。
っていうお客様もいれば、
なんとか会社を黒字にしたいんだが・・・というお客様もいます。


節税対策のためにやっている会社を除くと、ちゃんとした事業をやっている会社であれば利益は出て当たり前です。会社はボランティアじゃないんですからね。

節税対策のための法人というのは、
個人のままだと「所得税がかかりすぎる」ケースなどが想定されます。
所得税は累進課税といって、稼ぐ人ほど税率が上がっていくシステムです。
対して法人税は一律の税率なので、法人と個人で計算の仕方がまったく異なります。

そんな場合には法人を作ってもともと個人で計上していた売上、経費を法人に移すということをします。
個人にかかっている所得税を法人に負担してもらうのです。
その結果、法人税が増える代わりに、それ以上に所得税が減ることになります。
そのためにどうするか
法人と個人という2つの人格を駆使して、トータルの税金が安くなるように絵を描くのが税理士の仕事です。


税金は安いに越したことはありません。20万円の家電を買えばものが手に入りますが、20万円税金を納めても何も対価はありませんからね。

経費を使い込んだら税金は安くなるのか?

ところで、経費をいくら使うと、税金はどれだけ安くなるのでしょうか?

そこで、税金払いたくないから交際費という名目で、経費を使うためにちゃんねーのお店でシャンパンたくさんおろしちゃったケースを考えてみましょう。

俺は税金払うくらいだったら、お気にの嬢に貢いだほうが幸せだぜ!
・・・っていう社長さんがいたとしましょう。
(あ、ぼ、ぼぼ、ぼくのことではないですからね。)

前提条件

経費を使う前の利益は100万円だとします
手持ちの現金は100万円だとします
①から④まで4つのケースを考えてみます

①何も対策しなかった場合
②50万円飲み代に使った場合
③100万円飲み代に使った場合
④無理やり赤字にしようと120万円飲み代に使った場合

では順番に見ていきましょう。

①何も対策しなかった場合は?

税金は?
293,800円になりました。

手持ちの現金は?
手持ちの100万円から支払い、残りは706,200円になりました。

②50万円の経費を使った場合は?

税金は?
181,800円になりました。

手持ちの現金は?
手持ちの100万円から50万円の経費と税金を払いました。
残りは318,200円になりました。

③100万円の経費を使った場合は?

さて、100万円全部使っちゃった場合はどうなるでしょうか?
俺は宵越しの金は持たねぇぜ!
男気溢れて格好いいですが、さてどうなることやら・・・。

税金は?
70,000円になりました。

手持ちの現金は?
手持ちの現金から100万円の経費を支払い0になりました。
税金を支払えないので借金をしなくては税金が払えません。
残りはマイナス70,000円になりました。

④赤字にしようと120万円の経費を使った場合は?

酔っぱらって調子に乗りすぎてしまい、手持ちの現金以上に借金をしてちゃんねーにシャンパンをふるまってしまいました。
(け、けして自分の経験談を語っているわけではないですからね。汗)

税金は?
70,000円になりました。

手持ちの現金は?
手持ちの現金は100万円しか持っていなかったので、借金をしなければ飲み代を払えません。さらに税金も支払わなくてはいけません。
残りはマイナス270,000円になりました。

税金はどれだけ安くなった?

さて、税金はどれだけ安くなったのか比べていきましょう。
①と②  112,000円税金が安くなりました。
①と③④ 223,800円税金が安くなりました。

50万円、120万円使ってたったこれだけ・・・?
と思った方。鋭いです。
そうです、使った金額の20~30%しか税金に効果はないんです。

経費を使うと税金はどれだけ安くなるの?

使った経費の額×税率(約30%)分の税金が安くなると思っていいでしょう。

50万円経費を使えば約15万円税金が安くなります。
100万円経費を使えば約30万円税金が安くなります。

赤字でも税金は払わなきゃいけないの・・・?

赤字だったら税金払わなくていいんじゃないの・・・?
赤字なのに70,000円も払わなくちゃいけないの・・・?
と思われる方もいるかもしれません。
ですが、税金の種類によって意味合いが異なってくるのが難しい所です。

法人が支払う税金には以下のようなものがあります。
・法人税
・地方法人税
・法人都道府県民税(県民税と略します)
・法人市町村民税(市民税と略します)
・法人事業税
・消費税

法人税は利益に対してかかってくる税金です。利益が0なら税金もゼロです。もちろん赤字であれば支払う必要はありません。
じゃあどこに税金がかかっているのでしょうか?
答えは県民税と市民税の住民税です。

住民税は赤字でも支払い義務が生じる税金です

県民税と市民税は
利益に対してかかってくる所得割
どの法人に対しても一律に対してかかってくる均等割
(厳密にいうと均等割は法人の規模によって変わるので一律とは言い切れません。)

という2種類の税金があります。
所得割というのは法人税などと一緒で利益に対してかかる税金です。
赤字なら0になります。
均等割というのは法人で事業を行っている地区のインフラ設備など、行政のサービスを使っていますんですべての法人が均等に負担してくださいね~という意味合いの税金です。赤字だとしても事務所のある県、市で事業行っていますから、負担義務があります。

均等割は事務所のある地区によって変わってきます。東京とか大阪は最低が70,000円なので今回は70,000円で計算をしました。
この均等割という税金を負担しなくてはいけない為に、利益の額によって、税率が変わってきてしまうのです。均等割はどんだけ赤字にしようが免れることはできません。

あれ、お金どこ行った?

まずは現金の増減を比較してみましょう

①と② の流れを順番に追いかけていきましょう。

ちゃんねーの飲み代500,000円使いました。
→マイナス500,000円
飲み代に経費を使った結果、利益が50万円減ったので税金の支払いが112,000円安くなりました。
→プラス112,000円

これらの取引の結果、388,000円現金が減ったことになります。

①と④の流れを順番に追いかけていきましょう。

ちゃんねーの飲み代1,200,000円使いました。
→マイナス1,200,000円
飲み代に経費を使った結果、20万円の損失になったので税金の支払いが、70,000円になりました。
→プラス223,800円

これらの取引の結果、976,200円現金が減ったことになります。

まとめ いらないものまで買って節税するな

ここまで実際の数値を追いかけてみてきましたが、経費を使いまくったとしても、思った以上に税金が安くなるわけではないということがおわかりいただけたでしょうか。

会社は現金がなければ存続していくことができません。
支払える現金がない、貸してくれるところもない。となっては黒字でも倒産してしまう・・・。それが会社なのです。

使った分だけ税金が安くなるわけではありません。
ここで言いたいのはただひとつ。
いらないもの買ってまで節税する必要はないということです。
何も無駄遣いをしなければ、税金を払っても70万円は会社に残ります。
税金減らすために経費を無駄遣いした結果、会社がつぶれてしまっては元も子もありませんからね。

もちろんいるものを買う分には何も問題ありません。
税務相談をしていたお客様にもお伝えしましたが、なんでも経費にぶち込んで、税金が安くなればそれでいいのかっていうと、そういう問題でもないんです。

節税、ほどほどに。

😊