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その声を追う理由

初めて記事を書かせていただきます。

私は、東京成徳大学教授でございます青柳隆志さんが、2018年秋頃まで演じ続けていたミッキーマウスの日本語吹替の演技がとても好きで、思い入れがとても強くあります。
声優さんのご交代があり、演技の形が大きく変わった今、私はその声を出し、その演技ができる器となり、もしそれを必要とする人がいるならば提供したい(また、もしもディズニー社がそれを必要とするならば是非ともご提供したい)と考え、声真似活動をしております。

もちろんながら現在のミッキーマウスの日本語吹替の声優さんの演技を否定する意図は一切なく、青柳先生とはまた違うミッキーマウスの演技だと感じ、楽しませていただいております。

さて、私がここまで青柳先生の演じてきた「お馴染みの」ミッキーの日本語吹替に強く思い入れを持つのには、こんな理由があったりします。よかったら、お付き合いください。

ひょんなことから東京ディズニーランド、シーに生まれて初めて遊びに行き、ディズニーが何より大好きになった小学校高学年の頃。ディズニーについてウォルトの伝記や様々な文献から学ぶ中で、ウォルト・ディズニーの分身であるミッキーマウスの魅力にどっぷりハマり、ウォルトに、ミッキーにより近づきたい一心で、いろんな事に興味を持ちました。ダンスや船舶、世界史…そして、ウォルト自身が吹き込んだミッキーマウスの声。その声にとても近い吹替である、青柳先生の声…それに近づこうと、何度も何度も練習しました。当時は合唱部でボーイソプラノを担当しており、その声を話し声に変えれば真似ができたので、中学に入った頃はそれが友達作りに一役買うこととなりました。

しかし、私は中学1年の冬、声のみならず大きなものを失いました。

ある日突然体調が一気に崩れ、最初は百日咳と診断されたものの咳は一向に収まらず、咳というより嗚咽というか吐き戻しに近いような状態が1日に何百回と続くようになり、喉は潰れ声は出なくなりました。体力は奪われ、通学は徐々に苦痛になり、中学最後の夏には家から出られない程の状態となりました。精神的にも不安定となり、私の青春も、夢も、希望も何もかも奪われていきました。
医者からは、煙草を吸った50代の喉の状態と同じと言われました。今後、声が出るようになっても、あの大好きな声はもう出せないかもしれないと。全てが奪われ、気力を失いました。

中高一貫校を離脱せざるを得なくなり、希望を全て失い空っぽになった私でしたが、幸いにもインターネットを使ったり、映像を見ることはできました。パークでミッキーが活躍する姿や、親にレンタルしてきてもらったディズニー作品のDVDから力をもらい、パークに行くことを目標に日々療養と通信制高校での勉強を続けていきました。

咳が治ったのは高校卒業間近になってからでした。受験期も体調をギリギリで調整しながらの挑戦で、合格不合格以前に体調との勝負でした。正直私自身も親も医師も教員も、現役で大学進学できるとは思いませんでした。

大学に入り、咳が、喉が治れば、またあの声が出せるのかなと思っていた中で児童劇サークルの勧誘を受け、演技表現の基礎を学ぶ機会を得ました。
そしてその年のクリスマス公演、奇跡が起きました。

たまたまその時の役が変声期の少年役だったのですが、私は177cmの高身長であったため、少年という役柄を表現するにあたり、声で印象付けるしかないと考え、ミックスボイスを作ることにしました。すると、その過程であの大好きな声に近いものが出せるようになり、舞台づくりの中でそれがキープできるようになっていきました。

遂にこの時が来た…!
大好きなあの声を、この身体から出せるようになった!その喜びで胸が一杯でした。

大学に入ってからもストーカー被害やデートDV、当て逃げをされ、社会人になってからも様々な苦痛を経験し、精神的に磨耗しましたが、そんな私をいつも支えてくれたミッキーの声。突然変わってしまった衝撃は、心の一部が失われたような思いでした。しかし同時に、私がそれを出せる器とならなければという、強い決意にもなりました。

煙草を吸った50代の喉と医者に言われ一度は諦めかけた声。もう一度、きっと出せると心のどこかで信じ続け、その結果、今こうして出せるようになったこの声の演技を、もしそれによって誰かが喜んでくれるならば、誰かの力になれるならば、是非とも提供したい。そんな思いで、今こうして活動をしています。

ここまでの長文、読んでくださった方がいたら本当にありがとうございます。
結局は自己満足じゃねぇかよ!!って感はあるのですが、より似せるためにチューニングや発声はもちろんながら、青柳先生が演じられた様々な作品を収集し、イントネーションや息遣いまで、似せられるように努力しているつもりです。

全ては、あの大好きなお馴染みの声を出せる器となるために。

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