【小説】ラプス
また夢を見ている。銀河鉄道の夢だ。
小高い丘の上に立ち、私はそれが来るのを待ち侘びている。
夢の中では、音という音が聞こえない。聴覚が意味を為さなくなった世界で、私は星のない北の空をじっと睨む。すると、ひどく鈍まな流星のような一条の光が、時間をかけてゆっくりとこちらに近づいてくる。夜に溶ける煙を吐き、車輪を空転させながら、無機質な龍のように夜空を南下する銀河鉄道。私は知らず知らず止めていた息をそっと吐き出す。
私はそれに乗ってみたいと思う。けれど、丘を照らすものはなにもない。銀河鉄道は、速度を緩めることなく上空を通り過ぎていく。四角い窓から漏れ出る金色の明かりを虚無的な気持ちで見送りながら、私はその場にいつまでも立ちつくしている。
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