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詩 ひと、人、ひとり。

人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は

後鳥羽院|続後撰集 雑中 1202


 最初にここへ踏み入ったのは、大した心持ではなかっただろう、顔を想像することさえせずに誰かへ見せたかった。ほら、見て。すごいでしょ。ただそのために。

 
ひと、人、ひとり。

私は私をつなぎとめる。
どこかへ行かないようにでも、誰かを傷つけないようにでもない。
私は私を見ていたい。飼い殺しにして、見ていたい。

不自由な自由をひとりで可哀そうと愛でてる。
指の合間から滑る私を、可能性の水滴を、全身で怒り許さない。
許さない。私を越える貝殻を、耳を押し当てて居留守を強いる。

波の音、竹の音、山の声。私は私を縛り付ける。
勝手に帰らないように。ストレスなどと簡単に言ってくれるな。
これは碇だ。流されないように、自分で自分を形作ってる。

肯定も否定も、どうでもいい。
私は私もどうでもいい。首に縄をかけられて、四六時中付きまとわれても。
心が生きてさえいれば、命の意味さえ、憶えていれば。

私の私が暴れるその火を、今の私は待っている。
ほくそ笑んで待っている。馬鹿な面して待っている。
期待外れて怒りを正当化するそのために、縄をかけて待っている。

自分さえも恨むしかないこの生き方で、不器用にも。
全ての人を平等に愛しているから、無関心なままだから。
世界平和を本気で祈る。

強い言葉を否定もせずに撃ち放ち、ガキみたいに怯える。
二面性なんて知るか、人の性。すべて受け入れるのが、書き手。
結局ここだ。

満足も碌にできないだらしのない体で、ぶれない様に生きてるの。
好きなものを好きと言う。
その為だけに、生きたいなあ。

ひと、人、ひとり。 雪屋双喜
以前書いた詩の題を借りて。これも借景か。
2023.10.1

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