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詩 正気

熱に浮かされて
懐かしい夢を見た

顔も名前も忘れた
小さい頃の友人たち

まだもう少し
ノスタルジアで
終わりにはしたくない

名前を呼びたくて
思い出すけれど

生まれ変わった
後みたいだ

なんとなしにまた
帰ってくる



言ってしまえば
空飛ぶ船に乗るときの
緊張感をずっと

抱えて

生きて

いくようなものだった

大きな何かに飲み
込まれて宙に舞う

その
感覚だけを持ち合わせて
いた

ブランコのようにうまくは
進めないけれど前に進んでいると
好いな、と思う

そんなことはもう
誰にもわからない

そう言われたくなくて
前だけ向いてる



正直に生きるより
正直に書くほうが向いていた

真っ当な嘘をつくより
綺麗な嘘をつくほうが得意だった

それだけだ



私は誤解されるために
詩を書いている。


私は誤解されるために
詩を書いている。


私は誤解されるために
詩を書いている。


私は誤解されるために
詩を書いている。


今の
私は誤解されるために
詩を書いている。



喉の渇きで目を覚ます
カーテンを恨めしく思う


 2022.11.9 正気 雪屋双喜
カフカの「審判」、パウロの「ベロニカは死ぬことにした」。あるいは単に、漱石の「明暗」。そして小熊秀雄の「悲しみの袋」。

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